第1話「ひつぜん」
「なんでなんだろう…」
間違って登校初日を間違えるという失態をしてしまったあけみ。でも、なぜ幼馴染の美菜子がいたのかがすごく気になって仕方がないようだ。
「そういや、美菜子は高校はどこに進学したのか聞くの忘れた」
「あれっ?もしかして、星野あけみさんじゃない?」
(あ、面倒なことになる前に行かないと)
中学時代に柔道をやっていて、県大会で個人で準優勝したことがあり、新聞に載ったことがあるので、知られている人には知られている。
「ちょっと、待ってください写真いいですか?」
(なんでカメラ持ってるの?用意周到すぎるってば)
「会えて光栄です、是非この時を楽しみましょう」
(ちょっとこの人やだなあ…)
「僕と…いでででで、何するんですか!?」
「ちょっと急いでるんで、ごめんなさいね」
「少しでいいですから、うぐっ」
あまりにしつこそうなので、軽く手刀を背中に入れた。
(もう、考え事したことがどうでもよくなってしまったわ)
「待ってくださいよお」
「懲りないようね、それじゃあ…」
「すんませんでした!」
顔の近くまで寸止めした後、それを見て男は逃げるように消えていった。
「はあ…行こう…」
早めに学校に着いた後、美菜子を探しに行こうと行こうとした時、人だかりができていた。
(こんな時間帯に何があったのかしら?あ…あれは!?)
あけみの目の前に現れた光景は、数十分前にしつこくされた男を押さえつけている美菜子の姿であった。
「あけみー、久しぶり元気してた?」
「ええ、まあ」
「急に写真を撮らせてくれって、しつこいしつこい」
「その男は知ってるよ、しつこかったもん」
「そうなんだ。まあ、あれぐらいしときゃ懲りるでしょ」
今のうちだと思い勇を気持って言おうとした時、目の前の制服を見て理解した。
「美菜子、同じ高校通っているんだね」
「そうだけど、何か悪い事した?」
「いや、早く言ってくれないと…すごく…うれしい!」
「ごめん、忙しくて言う暇なかったよ」
「ううん」
涙が出るくらい嬉しかった。正直、寂しかった。友達がいないという気持ちではない何かが、あけみの中にはあった。
「あけみ、鼻水出てるよ」
「え?」
「その姿も美しい、最高傑作だ!」
倒されたはずだった男は、性懲りもなくカメラを構えていた。
「……てめえええ!!許さん!!」
その後の事は、伝説となるぐらいの事であった。
「はい、あけみさん遅刻ね」
(え…なんで…)
結局、時間を忘れすぎていたあけみであった。