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まだ鳴らない音の中で  作者: 小鹿さきお
第一章 過去
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~第四話~ 新生活

翌日の朝。

トントンとまな板で何かを切る音で目が覚めた。

今日も白石さんが朝ごはんを作ってくれるらしい。


「おはよう。白石さん。」


「あ、起きた?おはよう。」


他愛のない会話が心地よく感じる。


そして僕は、緊張していた。


昨日、おじさんから聞いた話では、

転校生として白石さんと同じ学年(高校一年生)として編入するらしい。

それは現実的にできることなのか分からないが、そこはあまり気にしないようにしよう。


それから、白石さんと朝ごはんを食べて、


「よし、それじゃあ行こっか。」


学校までは白石さんに連れて行ってもらう。

町中の風景を見ながら、この町に訪れてからのことを思い出す。

やっぱり不思議である。

しかし、これ以上考えても意味がないと思うので、やめるとする。


「おっ。白石じゃーん。そして隣にいるのは…えっ。金曜日の迷子?!」


後ろから元気よく声をかけてきたのは、森下とかいうやつだ。


「あ、森下。おはよう。」


「お、おはようございます。」


すこし固くなりながらも、森下に挨拶をする。


「え、君、やっぱり迷子じゃん。この学校の生徒だったの?」


「今日から編入するんだって。それで、この町で迷子になったらしいの。」


「あ、えーっと。よろしく…ね。」


不愛想ながらも、森下に言ってみる。


「ほーん。なるほどなるほど。俺は森下紘一(こういち)。君は?」


「白石奏。」


自分が決めた名前を口に出す。

白石という苗字でいいのかはいまだに分からない。


「えーっ!奏も白石なの?偶然だね。」


あまり深堀しては来なさそうである。

ありがたい。

と、そんな感じで森下君と白石さんと一緒に丘の上にある学校に向かう。


「はい、今日は転校生がやってくる。仲良くしてやってくれ。」


低い声で話すのは教師である古川海翔(かいと)

なかなか近代チックな名前をしている。


「えーっと。白石奏と言います。よろしくお願いします。」


大勢の人(40人ほど)の前で話すのは慣れていないときつい。

それでも、白石さんと森下君と同じクラスで助かった。

僕は転校生として、この学校で生活していくから知り合いがいると助かる。


それからというもの、転校生だからなのかは分からないが、授業で当てられることはなかった。

何人かに話しかけられたが、僕はあまり話したくなかったので、軽く自己紹介をしてから離れた。


キャラ、内向的すぎるかな…。


そんなことは置いておき、放課後の時間がやってきた。


「奏~。学校の部活、どこに入るか決めたか?」


森下とは話していて楽しい。

どこか面影のある口調は僕にしっくりくる。


「奏君、決まってなかったら見学しに行く?」


白石さんも話に入ってくる。

そういえばこの二人はどこの部活に入っているのだろうか。


「決まってないから、見学行きたい。二人はどこの部活に入ってるの?」


そう尋ねると、二人は顔を見合わせ、にやけた。


教室から別の校舎に行き、

コンクリートの階段を上り、

連れてこられること数分。


「ここは…。」


部屋の中にはギターやアンプなどが転がっている。

つまり、


「軽音部だぜ。」


「私はボーカル。森下はドラムで軽音部の部長。そしてベースが…。まだ来てないか。」


「二人とも軽音部だったんだ。」


森下はこのキャラで軽音部なのか。

そして、白石さんもこことは…。

僕はかなり驚いた。


森下がスティックを回しながらこちらを見た。


「どう?かっこいいでしょう。」


「うん。めっちゃかっこいいと思う。」


「そうだ、奏君、ギター弾ける?」


ギター、か。

弾けるかどうかは分からない。

だってそんなもの弾いていたのか、思い出せないから。


しかし自覚の中では覚えていないだけかもしれない。

そんな僅かな希望を抱いて差し出されたギターを受け取る。


左手で弦を抑えて、

右手で鳴らす。


綺麗な音色が部室の中で鳴り響く。

弾けた。

つい嬉しくなっていろんなコードを弾いてみる。

楽しい。

自分でも分かるくらい顔が明るくなった。


「すごいじゃん。奏ギター弾けるんだ。」


自分でも驚いている。

こんなにまともに弾けるとは。

体は覚えていた。


「奏君、うち、今ギターがいなくて…。この部活でどうかな?ほかの部活見てないから何とも言えないけど。」


僕は迷いなく、深く、頷いた。

僕の居場所はここにある。

手に持った焦げ茶色のギターを見つめながらそう思う。


「この部活、入らせてください!」


二人が目を合わせて笑顔になる。

僕も自然と笑顔になる。

よく分からないけど、嬉しい。


こうやって誰かと笑いあえる瞬間が僕は一番好きだ。


そう感じていると、部室のドアが開く。


「え、あの、え、誰ですか…。」


おどおどしながらこちらを観察するように見つめる。

低い身長、薄くピンク色が入った髪の毛、そして白石さんと同じセーラー服。


「おっ、ようやく来たか。」


森下が大きな声で喋る。


また一人、この町で関わる人が増えるようだ。

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