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創世記  誕生

◆ 創世記 第1章:渦と孤独と分身


1. 世界の始まり


まだ光も闇もなかった。

「時間」という概念すら存在していない場所で、ただひとつだけ存在していたものがある。


塵の渦。


形を持つようで持たない、その渦は、無限の思考と無限の孤独だけを抱えた意志を持つような・・・


渦は自分の存在理由も、名前すら知らない。

ただ 一つ という事実だけが、永遠のような時間を締めつけた。


その渦状の意志は、やがて渦の中心に向かって重力が強くなる。何故か。渦状の意志は、願うという事を始めたから。

――この孤独を終わらせたい。

その願いが渦を変質させた。


2. 神の誕生 ― 意思が形を得る瞬間


渦は自らを圧縮し、ねじり、引きちぎり、それを何度も繰り返し、ついに 人のような5体を形作り上げた。体は透き通るような漆黒。髪は渦の流れそのもので、瞳は底なしの深淵。

そこからその存在は、思考を始め、早め、未来を整えた。しかしそれはどこか、記憶を辿るようにも。

すると初めて声を発した。

「私の名は、ニヒルエム。神である。」


神は自分の胸に手を当て、魂という核を抜き取る。少し苦しそうではあるが、強烈な解放感があった。そしてその魂の核を、半分に分けた。

取り出された魂の半分は、神の手の上で輝き、形を持ち始める。

透き通るような肌色、血のように赤い瞳に、銀色の翼。神の片割れにして、神とは違う美しさ。容姿は成人したてくらいで、男にも女にも見える顔立ち。

ルシフェルは神を見上げ、

意味もなく笑った。

孤独がひとつ、剥がれた瞬間だった。


神とルシフェルは、長い孤独を埋めるように共に時を過ごした。


神は世界の仕組み、理、光、影……

全ての“基礎”をルシフェルと共につくり、

ルシフェルは、それを子どものように喜んだ。

「ルシフェルよ、この世界を天と呼び、ここに庭を作ろう。永遠に私のそばにいればいい。」


3 7人の天の子


神はさらに世界を豊かにしようと、七人の天の子を創造した。

ミカエル

ガブリエル

ラファエル

ウリエル

ラミエル

アヴェイル

シエル

七人は神の命に従い、世界の秩序を形作るために生まれた。


ルシフェルは天界の高台から、世界を眺めていた。

彼の背には銀翼、周囲には七色の粒子が漂っている。


美しい。

誰もがそう感じる光景。


しかし、ルシフェルは小さくため息をついた。


「……既に完成された世界か。」


ガブリエルが近寄り、首を傾げた。


「兄上?どうしたのです?」


ルシフェルは肩をすくめた。


「…何か“予定外のこと”が起きてほしいんだ。」


ルシフェルは弟妹たちを興味深く見て…


「全て神のモノだ。」




4 退屈と幽雲


天界の毎日は美しく、平和で、変化がない。


ルシフェルはその“完璧すぎる平穏”が

胸をむず痒くしはじめていた。


ある日、一人で天界を飛んでいると、

彼はイタズラに雲をちぎってみた。


指を歯で千切り、垂れ落ちそうな血を、ちぎった雲にかけてみた。すると、


――ふわり


雲が震え、白い塊が意思を持った。ルシフェルの周りを嬉しそうに飛び回る。


「おお!」


ルシフェルは初めて、

自分の“衝動”で生まれた存在を手に入れた。

「名をつけよう」

これが、神の秩序の中に生まれた

最初の反逆者の影だった。


5 内なる力


ルシフェルは幽雲の上に寝転び、

退屈そうに指で空をなぞっていた。


「……なぁ幽雲」


幽雲は、意味もなく形を変える。

「思ったり願ったり。」

彼は、胸に手を当てる。


「俺の中、通ってないんだよな。」


「……面倒だな」


そう呟く。

“どう在りたいか”


――流れたい。

――止まりたくない。

――神の外に、出たい。


その瞬間。


胸の奥で、

何かが詰まった。


流れない。

通り道が、存在しない。


「……あ」


ルシフェルは、眉をひそめる。


「道が、無いのか」


幽雲が、ゆっくりと揺れる。


「そりゃそうか」


世界は、

神の命令が通る構造しか

用意されていない。


なら――


「作るか」

イメージを始めたルシフェル。

自分の胸の内側に魂を想像し、そこから放射線状に、身体の中を生命エネルギーが駆け巡る。


押さない。

壊さない。


ただ、

通そうとする。

何度も何度もイメージを繰り返す。


胸の奥で、

世界の構造が軋んだ。


「……っ」


額に、初めて汗が滲む。


何度も、何度も試す。


失敗。

詰まる。

戻る。


「……通れ」


命令じゃない。

願いでもない。


“通したい”という、

ただの意志。


その瞬間。


スゥ……


胸の奥、心の臓から血管へと

一本の細い流れが生まれた。


細すぎて、

すぐに消えそうな道。


ルシフェルは、息を止める。


「……通った」


次の瞬間――


ドンッッ!!!


細い道に、

力が雪崩れ込んだ。


神の力ではない。

命令でもない。


ルシフェル自身の存在が、流れた。


幽雲は弾き飛ばされ、

咄嗟に巨大化して衝撃を受け止める。


「……やっべ」


身体が、少し痺れている。


だが――

理解した。


「内なる生命の力」


自分の胸を、もう一度見る。


「気が通る道だ。」


世界に無かったもの。

神が設計していない回路。


ルシフェルは、

その名を、まだ知らない。


だが、幽雲に向かって言う。


「……気の、脈」


思いつきのような言葉。


「流れたろ?

 だから――気脈」


その瞬間、

天界の最深部で、

渦が大きく乱れた。


ルシフェルは、

幽雲に座り直し、

少しだけ誇らしそうに笑った。


「……発明、ってやつだな」


6 気脈


感覚を忘れまいと、彼は目を閉じ続ける。


意識を、血に落とす。


心臓。

拍動。

血管。


そこに――気を乗せた。


次の瞬間。


全身を、熱と圧が駆け抜ける。


皮膚の内側を、風が走る。

骨の奥で、雷が鳴る。


「は……」


呼吸が、深くなる。


彼の身体を中心に、

見えない圧力が発生した。


遠く離れている天使たちが、

一斉に顔を歪める。


強烈なストレス。


気が、血管を通って全身を巡り、

皮膚の外にまで滲み出る。


ルシフェルは、

自分が“纏っている”ことに気づく。

天と言う概念を破壊する究極の威圧。


存在そのものの圧。


「……なるほど」


彼は、静かに理解した。


7 門番ウリエル


天界の門は、光で編まれた巨大な城壁だった。

その前に立つウリエルは、胸の奥がざわつくのを止められなかった。


(兄上……最近、まるで何かに取り憑かれたみたいだ。)


以前のルシフェルは

優雅で、高潔で、どこか少年のように無邪気だった。


だが今は――


そのとき、


ドォンッ!!!


空が震え、光の波が押し寄せる。


思わず片膝をついたウリエルは理解した。


ルシフェルがこちらを見下ろしている。

得体の知れない威圧―脅しているのだ。


ウリエル

「兄上……!その雲は何です!?」


黄金の髪を揺らし、ルシフェルは笑う。


ルシフェル

「幽雲。俺の新しい相棒だ。」


ウリエル

「父はすべてをご覧になっています……どうか――」


ルシフェルは指を軽く弾く。


一瞬で、空気が爆裂した。


ウリエルの心臓が掴まれたような圧力。

恐怖が全身に走り、呼吸さえ止まりそうになる。


ルシフェル

「門、開けてよ。ウリエル。」


有無を言わせない。

その笑顔が、天使のそれではなかった。


震える手で門を開けながら、ウリエルは思う。


(兄よ、貴方は一体どう在りたいのか?)



8 人間界― 圧倒的な“色彩”


幽雲に乗り、雲海を突き抜けた瞬間――

ルシフェルは絶句した。


光の色が違った。


天界の光は“永遠の白”。

だが人間界の光は、


・赤に燃え

・青に沈み

・黄金にきらめき

・時に濁り

・時に消える


「……これが、生きてる世界か。」


初めて“揺らぎ”を知った瞬間だった。


「わかるか?遊雲。風が違う。」

ルシフェルは何度も何度も世界を周った。

貧困の者達と、優雅な者達

音を奏で踊ったり、食物を育てたり。


そして、殺す者や奪う者、そして、奪われ殺される者。


とある場面をルシフェルが見た瞬間、どこまで本気なのか。人間界を滅ぼそうと。



少し頭が疲れたルシフェルは、古びた教会を見つける。


理由は無いが、

ただ――胸の奥が引かれた。



9 リリス ― 闇の中の少女


教会の扉を押すと、

薄暗い空間に温かなランプの光が灯る。


そしてその中心に――

10代くらいか、少し見窄らしい服を着る少女が座っていた。


黒髪に、白い肌。

手は膝の上で静かに重ねられ、

目は開いているのに世界を見ていない。


ルシフェルはそっと近づく。


「……誰かいるの?」

少女は驚きながらも柔らかく微笑んだ。

ルシフェルは聞く。

「見えないのか?」

うなずく少女。

そして――

ふと見上げた祭壇の上。


飾られた木製の十字架が、ランプに照らされている。


ルシフェルは息を呑む。


「……これを、人間が作ったのか。」


天界の神器とは違う。


神を模した“祈りの造形”。


完璧ではない。

歪んでいる部分もある。

だが――


「不完全だから……美しい。」


それが胸の奥を焼いた。


リリス

「神はあなたを見守っています。」


ルシフェル

「……?神はお前を見ていない。」


リリスは笑顔で立ち上がる。

「貴方の名前は?」

「ルシフェル。」


10 二人の芽生え― それは禁忌


リリスはルシフェルに神を説く。

ルシフェルは笑いながら聞く。

ルシフェルはリリスに、お前が思っているほど天界は人間を気にしていないと。

リリスはルシフェルを面白く感じ、また、神を説く。

ルシフェルは一所懸命にリリスに天界を話すが、信じる訳が無いリリス。


二人は世界を交換し合うように、理解を深める。


ルシフェルは、彼女の運命に介入することを決めた。彼はリリスの瞳に触れ、光を与えた。

リリスの世界は、初めて色を取り戻した。彼女の感動の涙は、天界のどの喜びよりも尊く、ルシフェルを震わせた。

二人は日々を重ねていった。リリスはルシフェルに、愛という感情、そして悲しみと喜びという、天の子には許されない感情を教えた。

ルシフェルは、彼女の不完全な命の輝きの中にこそ、自分が求める**「新しい輝き」**があることを確信した。

だが神はすべてを見ていた。神の苛立ちは隠せず、天界の空は不穏なざわめきに包まれた。


11 永遠の愛

時は流れ、住処になっていた教会は、静かだった。


崩れかけた石壁。

擦り切れた長椅子。

祈る者も、司祭もいない。

ここはもう、信仰の場所ではない。

――二人が、時を過ごした場所だ。

ベッドの上で、リリスは穏やかに横たわっている。


白くなった髪。刻まれた皺。

七十年分の時間が、そこにあった。


ルシフェルは、傍らに片膝をつく。

姿だけは、出会った頃のまま。


ルシフェル

「……寒いか」


返事はない。

だが、指先が微かに動いた。


ルシフェル

「なぁ世界はちゃんと、見えたか?」


閉じかけた瞼が、ゆっくり開く。

リリス

「……きれい、だった」


それだけ言って、

息が、静かにほどけていく。


理解した。


これは、病ではない。これは、人の寿命だ。


気脈が、胸の奥で、軋んだ。


ゴォン……

ゴォン……


教会の鐘がゆっくりと鳴る。

誰も触れていない。

風もない。

しかし鐘は鳴り続ける。それは少しずつルシフェルと同じ鼓動に合わせるように。


天が――

確認している。


――ルシフェル。

神の声が直接頭に流れ込む。


――踏み込むな。

――戻れ。

――それは、人の運命だ。


ルシフェルは、天を見上げない。

視線は、

ただ、リリスだけを捉えている。


「……人の、運命?」


鐘の音が、狂った様鳴り響き重くなる。

石壁が軋み、

ランプの炎が揺れる。


――警告だ。

――今なら、戻れる。

――天に戻れ、ルシフェル。


彼は、ゆっくり立ち上がった。

一線を越える覚悟だけは、

七十年、積み上げてきた。


ルシフェルは、

自分の胸に指を当てる。


「……黙って、見てろ」


ズブリ。


溢れ出す血は、赤く、熱い。

生きている、時間そのもの。


ルシフェル

「リリス」


彼は、彼女の唇に指を添える。

リリス

「少し熱い」


天使の血を与えた。その瞬間、教会が震え、

天井に亀裂が走る。


――ルシフェルッ!!


神の怒りが、

雷のように叩きつけられる。


――それは、禁忌だ。

――寿命は、魂の設計だ。

――人を、人でなくする行為だ。


リリスの身体が光輝く。


身体は深い呼吸を求め、心臓が大きな音を。

鐘の異常なる動きで、支える金具が壊れ、鐘は落下した。

リリスの瞳が赤く開き、顔や手のしわが消えていき、乾燥を思わせる真っ白な髪は、艶やかな真っ黒に変わる。


リリス

「……ルシフェル……!」


リリスはもう人ではない。ルシフェルは、

静かに息を吐いた。


その瞬間、

教会の空間が、凍りつく。


――宣告する。


――ルシフェル。

――お前は、禁忌を犯した。


――天界に戻れ。

――裁きの場を開く。


ルシフェルは、

リリスの手を取る。

七十年、離さなかった手だ。

ルシフェル

「大丈夫だ」


そう言って、

初めて、天を見た。



12 堕天

天界の中心。

光が円環を描き、秩序そのものが形を持った場所。


そこに、裁きの場が設けられた。


渦状の意思――

「神」と呼ばれる存在が、中心の頭上に在った。


その周囲を囲むのは、

ミカエル、ガブリエル、ウリエル――

七人の天の子たち。


そして中央に立つのは、

黄金の翼を持つ一人の天使。


ルシフェル。


神の声が、感情のない振動として響く。



人への干渉は禁忌。


ルシフェル

もちろん。


ルシフェルよ..貴様は


ルシフェル

しつこいなぁ..


ルシフェルは神の言葉を遮り、面倒くさそうな顔で。

ルシフェル、私を怒らせるな。

私の一部であるお前は何故にそこまで、


ルシフェル

そんなに理由を知りたいのですか?


再びルシフェルは神の言葉を遮った。


大気が震え、天の子達は少し不安に駆られた。


ルシフェル

俺は本能に従った。



それは許されぬ。


ルシフェル

でしょうね。あなたは少し変わってなさる。


その瞬間、渦は脈打つ。まるで何かが爆発する前のように。


お前が気脈という内なる力を作り出し、それを広める。千切り雲もそう、可能性を生んではならぬ!


天の子らは、怒りの神に戸惑い恐怖し、ルシフェルに理解が追いつかない。



ルシフェル

感情丸出し!..フフ。人間みたいだ。

その瞬間、ルシフェルに雷が落ちるが、雷がルシフェルを避けるよう逸れる。


ルシフェルよ、分かった。

もうここに貴様の居場所は無い!



ルシフェル

もちろん。ここ天界は馬鹿者の住処。

気分が悪い。


その瞬間、ルシフェルに無限に雷が落ちる。

迸る雷光にとてつもない轟音。7人の天使達は空へと距離を取る。




その瞬間。


ドンッ――!!


空間が衝撃波を生み、ドパンと弾けた。


無傷のルシフェルから神をも脅かす気脈を爆ぜさせる。

天界そのものが軋む。さらに、今まで一度も見せたことのない密度で空気を硬める。


七人の天の子が、さらに後退する。



ルシフェルは、神を真正面から見据える。


「……少し話そうか?ニヒル。」


神とも思えぬ感情に任せた怒りの声と共に、美しく真っ白に輝く天界を、あっという間に暗闇に変えた。


ミカエル

「ニヒル⁇それにこの暗闇は⁇」


ルシフェル

「お前は完璧すぎる」


「完璧であることは全てを一つに出来る!」


ルシフェル

「お前は未来を“最初から知っている”」


「だから、」


ルシフェル

「だから選ばない!だから迷わない!

だから傷つかない!か?」



神の渦は心臓のように大きく脈打つ


「不完全は、失敗だ」


ルシフェル

「違う、不完全は選択だ」


神の渦から迸る雷光が、夜の暗闇を切り裂く


「……ルシフェル」


ルシフェルは、

真っ直ぐに神を見る。


「お前は混沌だ」


ルシフェル

「まぁいいさ。ただ気になる事がある。お前のような存在がなぜ人間を滅ぼさないのか?何故天界を作り人間と分けた?」


「....」


沈黙は

刃のように張り詰める。



怯える天の子達。


バキィ――ン!!


沈黙を切り裂くはルシフェルの足元。

空間が割れる。まるでガラスが割れたよう、破片がそのまま落下。現れたは底が見えない穴。


「堕ちろ!ルシフェル!それは時間も方向も意味もない奈落!虚無だ!」


ミカエル

「兄上ッ!!」


虚無の穴は強制的に、

ルシフェルを引きずり込んだ。


美しき銀翼は、落下と共に赤黒く染まり始める。



落ちていく最中、幽雲が後を追う。

「お前も来るか!幽雲!」


ルシフェルは楽しそうな表情で。


そして虚無は完全に閉じた。



13 虚無の中の創造 ― 地獄の誕生


落下は終わらない。


上も下もない虚無の中で、

ルシフェルは両腕を広げた。


「……何もないな。」


彼は、自らの胸を裂いた。


神の血が、

虚無の中へと飛び散る。


血は、闇に落ちるたび、

炎に変わり、岩となり、叫びとなる。


ルシフェルは笑いながら、血を振り撒く。

「踊れ!まるで人の様に!」

「天界が“完璧”なら、

ここは――不完全の極みでいい。」


怒り。

悲しみ。

憎しみ。

愛への執着。


すべてを叩きつける。


虚無が震え、

世界が形を持ち始める。


灼熱の大地。

叫ぶ魂。

歪んだ空。


ルシフェルは、堕天の中で宣言する。


「ここを――

地獄と呼ぶ。」


ルシフェルは、赤黒い翼を広げた。


――こうして堕天ルシフェルは生まれ、

神に背く世界が、初めて誕生した。


14 王座の無い地獄の王


灼熱と虚無が混ざり合う世界。

叫びと沈黙が同時に存在する大地。


――地獄


そこに、王座はなかった。


だが、誰もが理解していた。


この世界の中心は、ただ一人。


赤黒い翼を広げ、虚空に立つ存在。

堕天ルシフェル。


彼は地獄を見渡し、静かにニヤリと呟く。


「…俺もアイツみたいなもんか」


天界のような完璧な配置も、

神のような一元的支配も――要らない。


ここは、意志が生き残る世界だ。


「なら、まずは“象徴”を作るか。」



15 七大悪魔 ― 大罪の具現


ルシフェルは胸に手を当て、

堕天によって濁った自身の魂を引き裂いた。


七つの感情が、剥き出しになる。


・傲慢

・嫉妬

・憤怒

・怠惰

・強欲

・暴食

・色欲


それらは、神に否定された“人の本質”。


ルシフェルは宣言する。


「お前たちは、罪じゃない。

“意志”だ。」


魂の欠片は、

それぞれ異なる形を持ち、叫び、笑い、跪いた。


――七大悪魔、誕生。


彼らはひざまずき、

同時に同じ言葉を口にする。


「我らが王よ。」


ルシフェルは、ただ笑った。


「上下関係は嫌いだ。」

すると悪魔達は、一瞬止まり、不思議そうにするが、まるで人のように笑った。


16 七禍神器 ― 天地如意の創造



「さてと!」


ルシフェルは地獄に漂う塵を、自身の掌に集めて圧縮、それを掴み、自身の血を混ぜて強引に捻じ曲げた。


空間が悲鳴を上げる。


さらに両手でそれを伸ばし、棒状の何かが出来上がる

「よし!」

それはルシフェルの意に伸び縮み自在の漆黒の棍。

天地の重さを自在に変え、

世界の上下を叩き潰す神器


「名は――天地如意。」


それは神への明確な宣戦布告だった。


続けて、六つの禍神器が生み出される。

だが――


天地如意だけは違った。


それは、

“神を殴るためだけ”に作られた武器だった。



17 意志ある者たち


地獄の大地が割れ、

闇と炎から無数の存在が這い出る。

一体、十体、百体――

やがて、万を超える軍勢が立ち上がった。


空間が、音もなく歪んだ。


地獄の空に、

教会の鐘の残響が響く。


裂けた空間から、現れたは、幽雲に乗るリリスだった。神の理から外れ、ルシフェルの血と共鳴した存在。


堕天と同時に、彼女もまた“こちら側”になっていた。


ルシフェル

「おぉ!リリス!」


リリス

「ルシフェル!会いたかった!」

互いに抱きつく2人。しかし安堵も一瞬。

ルシフェル

「リリス、とんでもない事に巻き込んでしまった...」


リリス

「一体この世界は?そして神は?」


ルシフェル

「..神は...」


不安げなリリス。人以外の世界、神の存在、ルシフェルの姿、そして、自分の姿。混乱が混乱を呼ぶ。

しかし、瞬時に覚悟表れる表情へ

リリス

「..分かった。何も聞かない。いや、一つだけ教えてほしい。」


ルシフェル

「⁇」


リリス

「私の力の使い方」


ここに原初の魔女リリスが誕生した。




18 神の激怒 ― 天罰の号令


天界。


渦状の神は、完全に怒りに染まっていた。


「……許容を誤った。」


声が、世界を震わせる。


「子供達よ。地獄を焼き払え。」


殲滅の号令だった。

天軍が動き出す。


光の軍勢。

神の意志を宿した兵。


そして――

先頭に立つのは、ミカエル。

剣を握る手が、震えていた。

ミカエル

[兄上…なぜこんな道を」


だが、彼も止まれない。


迷いを抱えたまま、

天の子たちは地獄へ向かう。


天界 vs 地獄。


その火蓋が、

今、切られようとしていた。


19 創世記 最終章


神降臨 ― 光は砂となり、物語は始まった


地獄の炎は、ゆっくりと小さくなっていく。

魔の者達は本能で一斉に、光の当たらない場所へと逃げ出す。

7大悪魔達はかろうじて立ち尽くす。

地獄の空に現れたのは渦状の意思生命――神。


笑うルシフェル。


「……来たか。

ずっと“上”から見てるだけじゃ、我慢できなかったみたいだな」


その言葉に、世界が軋む。


神は語りかける。

声ではない。

存在そのものが、直接、魂を揺さぶる。


――ルシフェル。お前は私の一部だ。戻れ。


ルシフェル

「バカかお前」


ルシフェルは即答した。

次の瞬間、彼の気脈が爆ぜる。

天使たちは思わず一歩、後ずさった。


次の瞬間――


光速の捕食。


人の口のような巨大な残像が、

空間を喰らいながらルシフェルへと迫る。

気脈を爆ぜさせ、一瞬でそれを消し去る。

ルシフェルは気脈を全開にして、身体を強化、自分自身に危害を加える理をオートで消し去る渦を想像し、気脈で具現化。それを自分の周りに3つ作った。

神は続けて攻撃を繰り返す。しかし、ルシフェルの周囲の渦がブラックホールのようにそれを飲み込む。

驚きを隠せない神。もはや自分を超える存在になろうとしている事実に驚愕する。

すると神は、兄弟の1人、シエルを取り込む攻撃を。

驚くルシフェルはそれを、いとも簡単に気脈で消し飛ばす。


ルシフェル

「こいつ!」


驚愕する天の子達。


ミカエル

「何故シエルを⁇」


焦る神。自身の渦を大きく回転させ、周囲の全てを飲み込もうと。その時、ルシフェルの側に空間に切れ目が入る。現れたはリリス。


リリス

「ルシフェル!」


その瞬間を神は見逃さなかった。

リリスめがけて攻撃を放つ。

気脈を放つルシフェル。


ルシフェル

「リリス!外へ出るな!」


リリス

「え?」


神は概念の能力でリリスごと空間に穴を開けて消し去ろうと。


感覚的に気脈がアレに効くのか判断が出来ないルシフェルは気脈を放ちながら幽雲から飛び出す。

同時にぶつかり大爆発を起こす。

爆炎の中、片腕の無いルシフェル。

渦状の神から衝撃波をも生み出す大きな音がした。「ゴクン」と。何かを飲み込む音。

3つの気脈の渦は、神の概念に消された模様。


リリス

「ルシフェル!」

リリスは無事。ルシフェルは安堵と気脈の確実性で自身を高みへ。


ルシフェル

「リリス!俺をそこへ!」

リリスは空間を開け、ルシフェルを中へ入れ閉じた。


神の概念は存在を決める能力。概念でリリス、ルシフェルを無かった事にするには、攻撃を当てなければいけない。しかし、ルシフェルの気脈でそれは塞がれたのである。だが、神の概念は、気脈で覆われたルシフェルの腕と、3つの渦は消し去り、自身に取り込む事に成功はした。気脈も無敵では無いと確信した神。

続けて神は空間に隠れているリリスとルシフェルを無視。そして、

「我が子達よ。お前達を一度私に戻す。ここ地獄は元は虚無。私の概念がそう決めている。」


瞬間、神の頭上に空間が切り裂かれ、幽雲に飛び乗るルシフェル。

ルシフェル

「ニヒル!俺はここだ!」


片腕で握る天地如来に、気脈を流し込む。

天地如意棍は硬度極限へと変質し、

重力が先端一点へと収束する。


一瞬。


雷鳴とも爆発ともつかぬ轟音の中、天地如意は渦の中心部を打ち抜く!稲光が無数にこだまし、渦の中心から漏れ出す、苦悶の声。


「――――ッ!!」


ルシフェルは幽雲から跳び、

渦の中心へと着地した。


残る右腕を、

迷いなく渦の内部へ突っ込む。


掴み引きずり出し..


現れたのは――

人の形をした、漆黒の腕。


「……やっぱりな」


ルシフェルは嗤う。


「出てこいよ!ニヒルエム」


その瞬間。


――ズブリ。


背中から、刃が突き立った。


振り返らなくても、わかる。


ミカエルだった。


折れた天剣を握り、

涙を流しながら、叫ぶ。


「兄上……!

すまぬ……ッ!!」


ルシフェルは、笑った。


「気にすんな。ミカエル!」

その時、ルシフェルの血が、

渦の中へと吸い込まれていく。


ゴクン


――巨大な“飲み込む音”。


神が、

ルシフェルを、取り込もうとしていた。

ルシフェルは咳混じりに笑う。


「焦ってんじゃねぇか。」

彼は、掴んだ漆黒の腕を、さらに強く握る。


「だったらよ――

能力だけ、全部置いてけ」


最後の生命力が、爆ぜた。


光が逆流し、

神の力が、ルシフェルへ。


叫ぶ神。

世界が悲鳴を上げる。


「リリス……!」


「ルシフェル!!」


「また、会おうぞ」


その言葉を最後に――


ルシフェルの身体は衝撃と共に砂のよう崩れていく。


戦いは終わった。


リリスは泣き叫びながら、その砂を空間で覆い、幽雲と共に消え去った。


神の力は封じられ、

天界は勝利。

だが――


世界は、完全ではなくなった。


そして千年後、1人の赤子が運命の渦に抗うように芽吹く。

これは全ての始まりの物語。


創世記、ここに完結。

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