1話 邂逅
pixiv版(未完結)に加筆修正を加えたものになります
人間は弱い。愚かで醜くとても脆い...痴情のもつれで殺傷沙汰、人が人を騙し金を奪い取るなど滑稽にも程がある!
なんてことを考えながら死神の少女が冥界を進んでいると目的の場所に辿り着いた。扉をコンコンとノックした後、声をかける。
「閻魔様、シオリです」
すると程なくして
「入っていいよ」という穏やかな声が聞こえた。
中に入るといつも通り閻魔様とその秘書が居た。
閻魔様はツノが2本額から生えている和服の男性で、秘書のサオリさんは黒いスーツに身を包んだ長髪の女性。ちなみに彼女も勿論死神である。
「やあシオリ、体調はどうだい?」
いつもこの質問をされるが体調を崩したことはないのでいつも通り「問題ありません」と返した。
「はい、これいつもの」
無言で書類を受け取り内容を確認する。
相手は榊原 幸輝、顔写真では幼く見えるが高校2年生。4人家族、死亡場所は五芒星学園。住所は北海道○○市───────
「今日の担当は若いんですね」
「まあ…そういうこともあるさ」
と閻魔様が悲しげに言った。
書類を4つ折りにしてスカートのポケットに入れた。
「では、行ってまいります」
「うん。行ってらっしゃい」
私は一度閻魔様にお辞儀をすると、人間界へ向かって飛んで行った
私の使命は死んだ人間の魂を回収し閻魔様のもとへと届けること。私はいつも通り自分の使命を全うする。だけど…この時の私は思いもしなかった。この人間が私の運命を狂わせるなんて───────
「ふんふふんふふーん♪」
鼻歌を歌いながら通学路を歩く少年が1人。
今日の星座占い1位だったし何かいいことあるかな~と少年、榊原幸輝は浮かれていた。
あれ?なんか空気が変わったような───────
「榊原幸輝さんですね?」
「えっ!?」
突然、名前を呼ばれた幸輝は驚き振り向くと、そこには見知らぬ少女が立っていた。
『どうして僕の名前を?』という疑問は少女を見た途端に吹っ飛んだ。
雪のような白い髪に空色と紅色のオッドアイ、黒い衣装に身を包んだ少女に見惚れたからだ。
こんな美少女が僕に何の用だろうと思い見ていると「榊原幸輝さんでお間違いないでしょうか?」と聞かれた。
「あっ…合ってます」
すると彼女は微笑み、こう言った。
「ではさっそく本題に入りますね」
彼女の笑顔を見た途端に僕は驚いた。
「本日あなたは死にます」
どうしてそんな顔をするのだろうか…それに何故だかわからないけどその笑顔に既視感を感じる。幸輝が考え込んでいると少女は「聞いていました?」と言った。
「あっ…ごめん!………聞いてなかった」
「ではもう一度。本日あなたは死にます」
僕は絶望しつつ呟いた。
「う…嘘だ」
「嘘じゃありませんよ」
「ええええええええええええ!!!」
幸輝は頭を抱え叫んだ。スクールバッグが腕から落ちドサッと音を立てた。
「申し遅れました。私は死神のシオリと申します」
「…死神ってもっとこう…骸骨の姿とかしてるんじゃないの?」
シオリはどう見ても人間にしか見えない。
「それは人間の勝手な想像でしかありませんよ」
「…証拠とかないの?」
「………蒼よ、私の手に戻りなさい」と彼女がリボンに手を当てるとなんと大きな鎌が首元のリボンの中から出てシオリの手に握られた!鎌には大きな青い薔薇が付いている。一体どうなっているんだ!?
「これで信じていただけたでしょうか?」
「うん」
幸輝は青ざめその場に崩れ落ちた。
「しかし…この鎌は貴方を殺す物ではないのです」
「えっ?」
「死神が直接手を下すことは禁止されているので」
「え…じゃあ殺しに来たわけじゃないの?」
「では残りの人生をお楽しみくださいね。貴方がお亡くなりになるときにまた会いましょう」
「えっ!ちょっと待っ……………消えちゃった」
実際は幸輝の目に見えなくなっただけで近くにいるのだが…本人は知る由もない。
シオリは笑顔を浮かべていたけど、僕はその笑顔に違和感を感じた。まるで仮面をつけているみたいだった。笑っているのに瞳は暗く翳っていて何かに絶望しているように見えた。
僕はシオリの本当の…心からの笑顔が見たい。
「…一目惚れって本当にあるんだな」
恋愛モノの本も読むが自分は恋愛などしたことなかったので少し驚いた。
「あっ…時間!?」
腕時計を見ると1限目の授業が始まる時刻だ…遅刻確定。うう…学校行くの嫌になってきたな。しかも頭痛もしてきた。
『1日ぐらい休んでも大丈夫だよ』
うん…そうだな、勉強なら家でもできるし帰ろう。頭痛もするし念の為家で安静にしよう。
家に帰ると母さんに心配されたが、幸い頭痛は1時間くらいで治まった。
**************
「生きてる」
いつまで経ってもシオリが来ないので寝てる間に死ぬのかと思っていたけどこうして生きている。
シオリに会えなかったのは悲しいけど…生きていて良かった。死ぬのは怖いし。
「お兄ちゃん!朝ご飯冷めるよ」
「あ、うん」
僕は朝食を食べ身支度を整えると家を出た。
「おはよう」
「おはよう榊原くん、体調は大丈夫?」
教室に入ると同じ図書委員の田代さんに話しかけられた。
「うん、大丈夫だよ」
「そっか…あっそれより聞いて欲しいことがあるの」
「えっ何?」
「昨日榊原くんお休みだったから図書当番代わったんだけど…本棚の老朽化で本がバサーって落ちて本の山ができたの」
「あ、図書当番代わってくれてありがとう」
「ううん、いいの。B組当番の長谷川さんも休みだから1人で本の片付け大変だったよ」
「お疲れ様。怪我人は出なかったの?」
「うん図書室には私しかいなかったし、私はカウンターにいたから大丈夫だったわ」
「そっか、良かった」
それから自分の席に座り、幼なじみで親友の涼沢誠と雑談しているとホームルームの時間になった。
誠は「じゃ、またな」と言い自分の席に戻った。
担任の先生が教室に入ってきた
「今日はホームルームの前に転入生を紹介します」
「入っていいわよ」と先生が言うと転入生が入ってき、僕は目を疑った。
「神代詩織 です。よろしくお願い致します」
「ええええ!!!!なんでシオリが!?」
驚きのあまり叫んでしまった。
1文加筆しました/2月18日