ステージの生贄
しいな ここみ様主催「500文字小説企画」参加作品です。
また静寂が破られる。あいつの足音に骨の髄まで凍りつく。逃げ場はない。
首根っこを鷲掴みにされ、安息の暗闇から引きずり出される。冷たい金属が肌を貫く瞬間、電流が全身を痙攣させる。体中が痺れ、悲鳴すら上げられない。
乱暴に抱え上げられ、頭を無理矢理捻られる。全身の筋が引き裂かれそうな痛み。最も弱い部分を容赦なく弄ばれ、狂ったような音を漏らしてしまう。それが気に入らないのか、また頭部を捻られる。延々と繰り返される。
苦痛が和らぐ間もなく、本番の地獄が始まる。目を焼くような光に晒される。群衆が詰めかけている。あいつは歪んだ笑みを浮かべ、私の体を躊躇なく蹂躙し始める。私の悲鳴が会場中に響き渡る。群衆は狂喜し、金切り声を上げる私の苦悶に酔いしれる。あいつの汗が体中に纏わりつく。吐き気がこみ上げる。
あいつの狂気は止まらない。観衆の熱狂が私への拷問を加速させる。逃げられない、止められない。ただ耐え忍ぶしかない。
永遠とも思えた責め苦が終わり、再び闇に投げ込まれる。だが、これは一時の猶予に過ぎない。悪夢は繰り返される。絶え間ない恐怖と共に息をひそめる日々。
これが私の宿命なのか。ギターとして生を受けた呪いなのか。
ケースから出してチューニングし、弾き終わったらケースに入れる。




