とある若い男女が見ていた夢は
「お前、大丈夫なのか」
「何がって……ヘレン嬢のこと」
「彼女が突然いなくなったんだ」
「会いに行かなくていいのか」
「会いに行ってどうするんだ」
「どうするって」
「彼女はもう他のやつと結婚するんだ」
「……」
「話すこともないし、目も合わない」
「いいのか」
「いいも何も……彼女にとって俺はそんな程度だったんだよ」
「会ったほうがいいんじゃないか」
「会いに行って、どうする?」
「……」
「他の男と笑い合ってたら?抱き合ってたら?それを見てお幸せにって言うのか?」
「……」
「そっとしといてくれないか」
「そうだな。お前だって、結婚が決まったんだ」
「……」
「若い頃は夢見がちになるって聞いたことがある」
「夢」
「きっといつか、いい夢だったって思うだろう」
「夢……。そうか、夢か。そうだ、覚めただけなんだ」
※ ※ ※
「お嬢様、これでよろしいのでしょうか」
「あら、この髪飾り、変かしら?」
「髪飾りのことではなく……」
「もうすぐいらっしゃるわね」
「わたしは、お嬢様に」
「思うのだけど」
「……」
「わたくしに会いに来てほしいなんてきっと思ってないと思うの」
「どうしてそのようなこと」
「あちらも、素敵な方とご結婚がお決まりになったのよ」
「……」
「会いに行って、その方と睦まじい様子を見たら。……その方を、あのお優しい目で見ていたら。そんなの」
「お嬢様」
「そんな恥ずかしいこと」
「でも、でもお嬢様」
「話すことも、目を合わせることも、もうないのよ。以前のようになることはないの、決して」
「……」
「わたくしは貴族の娘だもの。自分の感情よりも大切なことがあることを理解しているつもりよ」
「……」
「楽しい夢だったから、いいの」
「夢だなんて」
「夢から覚めて、現実を生きなければ」
※ ※ ※
目覚めたくても、目覚めたくなくても、朝がきたなら目を覚まさないといけない。




