Nineteenth Lift(第19話)
事象は波及する。当事者達が剣戈を交えているその時すらも・・・
アルゼンチン・大統領官邸
『大統領閣下!』
『始まったかね』
イタリアとイギリスが地中海で激突することが不可避となった情報は、主要国以外のどこよりも早く、アルゼンチンが把握していた
『・・・』
秘書がさがったあと、黙ったままの腹心に大統領は声をかけた
『案ずる必要はない、気付いた時にはブラジル以外の南米諸国は我々を頭に英国に宣戦布告する』
といっても石油利権的にベネズエラだけは中立であるが、ブラジルが潰れた後はそうもいってられなくなるだろう
『米国も東海岸の英国資本、そしてメキシコへの圧力をかけたがっている。結果的に黙認か、我々の側への加担すら考えられる』
終戦時の株価暴落などで内戦状態になったアメリカは、テキサスの自由貿易市場化(体の良いメキシコへの身売りである)東海岸の諸財産の英国資本へ売却などしてようやく形を保っていた
『未回収のアメリカ、ですか』
なんとか復興がなされてきたアメリカで、かつての権益を取り戻そうという運動である
『これまでのネイバルプレジデントと違って、新任の大統領はわかりやすい人物だしな』
ネイバルプレジデント、終戦後分離衰退状態のアメリカを復興させた海軍提督出身の大統領の事を言う、ブル・ハルゼー、JFK、ロナルド・レーガン、ジョニー・ガーランド、ジョージ・ブッシュ、等がそれだ
『かつての大統領がしなかった事をすると公約に掲げて勝った人物だ。ここを好機とせずになんとする』
いい加減第三世界としてアメリカ大陸が指導力を発揮しても良かろうという意見は私も同意見だ
『そして今、大西洋に英海軍の戦艦は存在しない』
インド洋に過集中をしてしまった。本来本土にあるべき獅子王姉妹を投入して戦線を優位に進めようと企図し、それに失敗した。その上、結果はどうなるかわからないが、地中海でも衝突が必至となった。ただでは済むまい
『ブラジルのミナス・ジュライス級二隻、我が国のリヴァダヴィア級二隻、そしてチリのアルミランテ・ラトーレは米国がかつて叩き売ったサウスダコタ級未成艦の集まりだ。ならば隻数が多いほうが勝つ。ましてや米海軍が牽制にだけでも加われば』
負けることはあり得ない。子供の算術のような事を言う大統領に、腹心は眉をひそめた
『獅子王姉妹が戻ってきたらどうするのです。この地域の戦艦はほとんど改装を行っておりません。手も無くひねられますが』
『東南アジアを失って、か?地中海も放っておいてよいのか?選択としてありえん手だ』
大統領は多少声を荒げて反論した。
『ブラジルも状況次第ではなびこう、そうならば獅子王姉妹とてやすやすとは手出し出来ん』
今が機なのだ、南米が世界の主役へと躍り出る機会は今しかない!
『そもそも君は良いのか!彼らが最初の決戦場として勝手に我々の海域を指定して核のパイ投げを行うことを知らぬわけではあるまい!』
ニュークリアガーデンなどとこじゃれたあだ名なんぞつけて、そりゃ奴らは良かろう!遠く離れた北半球の島国だ。だが、我々は違う!そこは俺達の庭で、俺達の家だ!誰がそんな所で核のパイ投げをやられて喜ぶものか!
『・・・はい』
それはこの国で物が見える人間であれば誰しもいくらかは持つ感情だ、否定は出来ない
『・・・少なくとも日本とは敵対せん。安心しろ』
通常戦力から見るかぎり、投入戦力の逐次投入のきらいはあるものの負けは考えられない。勝つほうに付く、何も間違えてなどいない
『全てはUSN(ユナイテッドステイツオブニューコンティネンタル・新大陸連合国)設立の為に』
賽は投げられ、戦争の様相は変わる。それが導く果てに静かな海はあるのだろうか・・・
チョコバーは出てこないので悪しからず。しかしあの世界の日本がOCUに居る理由がさっぱりわからない・・・