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Eighteenth Lift(第18話)

不器用なのだ、どいつもこいつも

ムッソリーニCIC




『APSFDS!』

対砲レーダーが示すデータを見て、グランチェスカは合点がいった。確かに、確かにこれなら戦える。

『そんなバカな事が・・・戦艦の主砲を滑空砲にするなんて』

アルが驚きのあまり思考停止に陥っている

『そりゃ企むさ!英国人だものな!だが、これで敵の意図と弱点もはっきりした。そうだなアルベルト参謀長!』

『は、はっ!』

わざと出した大声に、艦内の雰囲気が落ち着く

『敵はろくに弾着観測ができてねぇ!たりめぇだ、装弾筒で中の爆薬なんて過少で水柱が小さい上に、狙って撃っても翼で散布界は最悪だからな!』

そのためにこちらに送る弾数を増やしてるのだろう。いい手だよまったく

『しかも命中したって、威力は大したことはねぇ代物だ』

装甲的にはまずいのだろうし、命中したらなんらかの損害は受ける。もしかしたら主砲の運用に支障が出るかもしれない、敵はその可能性にかけた。たいした相手だよまったく

『それで参謀、俺達はどうすれば良い』

アルは気を取り直してその頭脳を働かせている。うん、それでいい

『通常砲戦で結構です。敵は圧倒的な投射量での命中を狙っております。仮に一発が命中しましたとしても、修正が行われている訳でありませんので、次の命中には可能性の問題として時間がかかると思われます』

アルは自分の言葉を確認するように頷いて続ける

『修正されていずれ捉えられる砲撃と、確立の低い博打のような砲撃、どちらがよりプレスを与えられるかは明らかです!そして本艦は』

『18in砲艦』

アルの言葉尻を捉えて笑う。敵を強かに打ち据え、あるいは裁断する重鉄扇のようなその威力をあちらが受け続ける事は不可能だ。正々堂々と正面から打ち砕く戦こそ、セレナには相応しい

『女王は毅然と、そして気高くあらねば、な』

それでこそ地中海の女王に相応しい

『ともかく、まずは接近だ!面舵取れ!最大戦速!』

『了解!面舵、最大戦速!』

しばらくすると艦がググゥと傾くのが感じられた

『砲撃は少し早いが五万から始める、日頃の鍛練は可愛い子ちゃんとの夜の為だけでない事を証明してみせろ!』


『なに、上手く当てたら女の子に上陸して自慢できます。砲術の連中はやってくれるでしょう』

そうでなくてもイタリア海軍の腕っこきを集めている



ガキュンッ!




唐突に異音が響いた

『何事か!』

『被害報告!煙突に被弾!貫通されました!弾体は海へ!』

おいおい、いくら煙突とはいえ、貫通して突き抜けるなんてどれだけの貫通力だよ

『インペロと随伴艦艇は本艦より離脱、さらに接近させます!』

アルが進言する。なるほど、敵の三姉妹はこの艦に砲撃を集中させてこそ意味がある戦い方をしている。敵の随伴艦艇と戦うにあたって、戦艦を含むこちらが有利だ

『よし、やれ!』


あとは俺達が勝てば良い。なんと単純、実に世は事もなし

『長官、そろそろ五万メートルを切ります!』

『さぁ諸君、始めようか!』

CICの全員が頷いた。







1344、ヴェニト・ムッソリーニ発砲




デューク・オブ・ヨークCIC




『敵艦隊分離!本艦隊に向かってきます!』

『随伴艦艇に阻止を命じます』

ああ、敵も分かっている。こちらが攻撃目標を変える事が難しい事を

『紅提督、こちらの随伴艦艇では・・・砲撃目標を変えられては』

『それはならんぞ』


例え今、突入してきている部隊を砲撃し撃破したとして、それにかかる時間をあの艦に与えて我々が無事でいられるか・・・ありえない。そんな相手ではない

『このまま砲撃を続けよ!』

背水の陣だ。ここで<あの艦>に負けてしまったならば、一体なんの為の雌伏を地中海艦隊の将兵は強いられてきたというのか!

『巡洋艦戦隊より入電!お前の指揮はつまらん。これより我らは独自行動をとる!て、提督・・・』

『駆逐艦戦隊より入電!勝利こそ我がオーダー、巡洋艦戦隊に続行する。願わくば戦艦部隊が義務を果さん事を、以上です!』

紅は大きく目を見開き、そして瞑目した

『みんな、すまん・・・すまんな』

そう呟いたあと、紅は叫ぶように命令した

『射撃を続行せよ!発射速度を下げるな!』






海戦は加速度を増して展開していく。勝利という名の天秤は、果たしてどちらに傾くのか・・・

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