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Fourteenth Lift(第14話)

損害の埋め合わせは、必ずしも従前では無い

長崎造船所




『そうですか、よいまちづきはアイギスとしての復帰は出来ませんか』

造船技官の話に、永野は唸った。どっかの与太話のように、修理の度に魔改造なんてのは夢物語でしかないか

『水鏡機構を建造中の艦から引きはがす余裕がありませんでして。代わりにといってはなんですが、建艦予定でした次期汎用駆逐艦の装備一式を利用して修理を行います』

『月の名が泣くなぁ』

広域の対空戦闘は不可能になる。対空艦の名前として誉れ高い月の名がかわいそうだ

『それでもたちかぜ並には戦えますよ?』

『でなければ修理の意味が無い』

現在艦隊で運用している対空艦としての最低ラインにとどかなければ意味が無い。汎用駆逐艦であるはつゆき級の役割を、この艦がやるには高コスト過ぎる

『だが、アイギスを抜くとなると、艦のバランスが悪くならないかな?』

アイギス艦が巨大な艦橋を持つのは、大型のレーダーを組み込んでいるからだ。それが無くなるとバランスにも影響が出るかもしれないという疑問は正しい

『あぁ、そのことでしたら。修理にあたりヘリ搭載能力を撤去して水中戦闘機を搭載する予定ですから』

『そりゃあどういう事です?第六艦隊の管轄でしょう?海燕は』

つか、そんなもん載せたらDDGじゃなくてDDLになっちまうぜ

『そこまではちょっと・・・』

造船技官の知る範囲では無い

『ああいや、すまない』

これは、あれか?特殊任務でも与えるつもりであろうか

『だが、ヘリと同じく載せられるのは1機か2機だろう?』

部隊編成が小さすぎるし、ヘリのように行動範囲が広いわけでもない。利点がなさすぎる

『他の艦に改装予定は?』

『いえ、ありません』

そうだろう。こんな改装誰が得をするのか

『その件に関しては、わしから話そう』

ノックもせずに入って来た人物、それは

『寺津中将!?』

すぐに立ち上がって敬礼する。技官さんも一礼して部屋から退出する

『先ずは礼を言いたい。よくぞ生き残ってくれた』

深々と寺津中将は頭を下げるたかが中佐相手にだ、こっちが恐縮する

『いえ、今すぐにお茶を』

『構わん、座りたまえ』

寺津中将に促されて座ると、彼は話し始めた

『バダウ゛ィアでの一件、先のハルマヘラでの一件、艦長着任早々でありながら、過酷な任務ご苦労であった』

十死に一生をよくぞ、生き残ってくれた

『いえ、先任の乗員達が上手くしていただいただけです。特に、戦死なされた航海長には・・・』

沈黙が降りる

『・・・白根でも辛かったであろう』

寺津は瞑目した。この若者は死に直面しすぎておる。だが・・・

『ありがとう、ございます』

寺津は彼の瞳に光るものを見たが、言及しなかった

『して、今回の改装だが、君はこの戦争の終わりをどう考えるね』

戦争の終わり、終わりを考えるには始まりを振り返らなければならない。今回の戦争は確か・・・

『我々のSSTOが連合側の衛星を攻撃した事が原因、とされておりました。遠因がピナトゥボ火山の噴火にあると言うのもあるでしょうが』

寺津は頷く

『我々はそれに反論するでなく、戦争を行っている。これではまるで肯定しているようではないかね?』

マスコミや海軍発表は否定しているがね

『まさか!』

事実なのですか!?と言い募ろうとする永野を寺津は手で制する

『君はいまだ君の艦に乗っている彼女を見て、そんな事に加担したと思うかね。彼女はマニュピレーターだった。彼女がそれに気付かぬはずがない』

『い、いえ・・・ありえません』

そんな隠し事が出来る奴じゃない。それだけは信用できると思う・・・勝手な妄想でしかないかもしれないが

『では、貴官の艦がどういった役目を果たすべきか、自ずと知れてこよう』

寺津は微笑み、永野は沈思して解答を模索する。簡単な帰結だ

『本艦はSSTOの墜落地点に赴いた事のある艦であり、現場海域にどの艦よりも精通している。そしてDSRVである海燕で海中のSSTOからデータを回収する。それにはSSTOと海燕に精通している月海が必要になる。そういう事ですね!』

頷く寺津。そしてそれにどんな困難が伴うかも、それに気付けばすぐにたどり着く

『敵艦隊の排除と、データの信憑性が問題になりますが・・・』

敵は戦艦10隻以下多数を擁する東洋艦隊、それを超甲巡を含めてたった4隻の戦艦しかもたない第三艦隊が突破し、インド洋の該当海域に到達しなければならない

それから、データを得たとしても、誰がそれを信じるというのか。ゼロに近い確率だが、もし東洋艦隊に勝って該当海域に到達し、宇宙での工作が事実でないと訴えたとして、捏造というのは簡単であるし、負けたままで戦いを止められるわけがない。

あるいは、と我々が負けて故意でないことを主張したところで、受け入れるかも怪しい、なにせ相手は勝っているのだ。それに、負けて手を挙げるというのは、相手にフリーハンドを与えるに等しい

『今は、戦力が足りぬな』

そういって寺津は笑った

『だが、忘れてもらっては困るな。我が国にも同盟国が存在する事を』





舞台はヨーロッパ、地中海へと移ろいゆく

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