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Eighth Lift(第八話)

キスシーンぐらいなら、Rー15はセフセフ?

2001年11月15日・東京千代田区





『我々は、400年来の交流方が消滅することを良しとはしておりません』

急に来訪したいといってこのポルトガル大使館に現れた日本の外務省官僚は、ある書類を差し出して、それだけ言い放つと席をたった

『無礼な!』

ポルトガル大使は外務官僚が立ち去った扉に灰皿を投げ付けた

『我々がアゾレス諸島を英国無しに維持できるとでもおもっているのか!』

アゾレス諸島、ポルトガルは第二次世界大戦でも連合国に対してかの諸島を貸借し、連合軍側寄りの政策を採っていた。そして今回も、英国に仕方なくという形で貸し出すようにしていたのだが、決して日本の心証に悪くないよう、マカオをそのようにする話が出ていた。それを!

『しかし大使、既にスペイン陸軍が国境線沿いに展開している現状では』

駐在武官の陸軍大佐が指摘する

『日本側に立てば、沿岸都市はすべからく英国からの艦砲射撃を喰らうぞ!』

大使と陸軍の駐在武官のどうにもならないやり合いをみながら、海軍の駐在武官の大佐はため息をついた

『先代のフランコであれば、多少は採る手があったのでしょうが』

現在のスペイン政権は、フランコ死去の後一代開いて新進気鋭といわれるフランコの親類、ファン・リグルが采配を取っているのであるが、ファーストレディは日本人、ユウカ・カザミとか言う女を娶っていて、完全に立場は日本側である。

先代であれば多少は慎重さが期待出来たのであるが、彼等は日本がやれといえば、喜んでやるだろう

『敵味方を区別せねば、戦えぬ訳でもなかろうに』

何を日本は焦っているのだ。例え参戦した所で、英国にかかれば我々の経済的な価値も戦力も、最短で一週間のうちに消し飛ぶものでしかない

『焦り、でしょうな。議論白熱中、失礼させてもらいますぞ』

『!?』

入って来たのは、第二種軍装に身を包んだ

『寺津中将!』

第三艦隊は必然的に諸外国の艦艇に関わることが多い、何度か寺津もポルトガル大使館に足を運んだことがあったのだ

『何度か係の者に呼び掛けていただいたのだが、返事がないのを、失礼を承知であがらせていただいた』

『それで、何の御用ですかな?』

大使は不機嫌さを隠さずに聞いた。聞かれていたなら今更どうにもならない

『貴国には中立を貫いていただきたい。アゾレス諸島の貸借に関しても、我々は干渉致しません』

『これは異な事を、先程の外務省の言葉は大日本帝國としての言葉であるはず、海軍の一将が関与出来る話ではありますまい?』

寺津は首を縦に振った

『政府、いや、外務省はそう考えているでしょう。しかし、今は戦時なのです』

外務省は自分達の仕事が無くなる前に、何らかの得点を得ようと考えた。どの国が敵で、どの国が味方かはっきりさせるのはその大きなチャンスだ

『答えを求めぬ曖昧さもまた、我が国の美徳と私は考えております・・・これを』

寺津が白手袋をつけ、持ってきなさいと外に声をかける

『まさか!』

大使は呻いた

『我が艦隊が大戦おおいくさもなく海峡を突破し、SSTOの乗員をあまさず救えた事が、陛下の大御心をよくあそばせ、畏れながら謁見の機会を賜わりました。その折りに』

菊の御紋のついた桐箱を差し出される

『戦を広げてはならぬ、関わり無き者に火の粉を被せてはならぬとのお言葉を賜りました』

『な、なんと!』

この国の最高権威からお墨付きを貰うというなら、これ以上の保証はない

『我が大日本帝國は、400年来の友邦を、無為に失うつもりはありませぬ。先程の外務省の無礼、心より詫び申し上げる』

寺津は頭を下げる。大使や陸軍の駐在武官は半ば泣きそうになっている

『こ、頭を上げてください、寺津中将!貴方は我がポルトガルへ福音をもたらしてくれました!』

『おい!早く茶とカステラをお持ちしろ!』

そんな二人を見つつ、海軍の駐在武官は考えていた。陛下からの言葉というのは本当だろう。それについての嘘はこの国では不可能だ。しかし、信じていいのか?あまりに虫が良すぎる




一時間後




『外務省にも困ったものだ』

次の作戦には、ポルトガルの中立が必要不可欠である。それを崩される訳にはどうしてもいかなかったのだ。それに、それはあまりにも国家として品格がなさすぎる。我が国は世界に冠たる覇権国家なのだ

『・・・海軍省へ頼む。多少待たせてしまったが、次は第四艦隊の説得だな』

境界の4艦、海上警察と着上陸を司る艦隊、彼等を動かす必要がある。勿論、連合艦隊司令部から命令が出ているので戦力は集まる。しかし、頼みにいくのといかないのでは状況がまったく違ってくる

『礼は尽くさねば。敵にも、味方にも、な』





同日・佐世保、よいまちづき艦長室




『何でまだ貴女が居るんです!』

永野は頭を抱えた。一週間ぶりに艦長室に戻って来たら(CICや艦橋の座イスで仮眠をとっていた)まだ彼女がいた

『し、仕方ないでしょ!他のみんなみたいに原隊に復帰したくても、潜水艦が出てったり帰ったりしてくるのは不定期なんだから!』

いわゆる遊兵というやつである

『別に宿舎に戻ったってよいでしょうに』

なんというか、ね。一週間以上女性が部屋に居たとなると、これだけ、その甘ったるい匂いというか

『・・・お礼を、まだ言ってなかったじゃない』


『はい?』

どういう事だ

『あ、あんたは!一応さ!私の命二回も助けてんのよ!?それを理解しなさいよね!』

フィリピンでも、インド洋でも

『あ、ああ。そう、なるのか・・・』

『・・・あ、ありがと』

顔が真っ赤だ。そして多分俺も

『あ、ああ・・・ありがとう』

何と言うか、そのあとの言葉をお互いに失う。しばらくそのまま見つめ合ったあと、先に動いたのは月海の方だった

『・・・め、目をつぶりなさい!』

そういわれて襟元を掴まれる

『お、おい!?んっ』

唇が触れ合う。やばい・・・

『んんっ!?』

腰を引き寄せ、後頭部を掴み、月海の口の中に舌をねじ込んで舌を絡ませる

『んっ、んくっ・・・』

口の中の唾液を流し込んで飲ませる

『ぷはっ!』

お互い息が詰まって口を離した

『な!なにすんのよ!』

『馬鹿、俺も聖人君子じゃない。欲情ぐらい、する』

というか、いくらなんでも今のは性欲を持て余す

『ひゃあっ』

頭を掴んでいた手で、胸を服の上から覆い、さする

『遊兵は、効率運用しなきゃな』

我ながら、なんという悪役の台詞。だが、自重しない

『ちょ、調子にのんなあぁぁぁっ!』





ガッキーン!(金的的な効果音)





英領スリランカ、コロンボ




『ま、マレーシアラインの守備には、獅子王姉妹を全部と、空母4隻でいいんじゃないか、と思うんだけど、どうかな?』

英国海軍の極東艦隊司令部に赴いた仏蘭の両司令官は、突然の人事変更で英国本土から派遣された新司令官の言葉に唖然となった

『ぼ、ボクはさ、ほら、こっちに始めて来た訳だからさ、慣れた人にしてもらうのが、当然だと思うんだけど、なぁ・・・ダメ?』

『いえ、ダメといいますか、ペンウッド大将、よろしいのですか?極東艦隊のほぼ全力ですよ?』

ペンウッドはもじもじと手を動かすと、上目使いで二人を見て言った

『正直手元のセインツも預けたいぐらいだよ。だって、日本海軍て物凄く強いでしょ?卑怯なくらい技量がたかくて、ぶっちゃけうちの艦より性能は良いし、緻密な戦略を基にして攻めてくるんだから』

うぅ〜っ、と脂汗を浮かべてペンウッドは唸り、二人を見た

『全力投入は当然だよ、僕にできるのはそれくらいで、指揮なんか二人に較べたらとてもとても』

・・・どうするよ、これ?と、二人は顔を見合わせる。ともかく、戦力が大幅に増えるのは喜ばしい事だ

『大丈夫かなぁ・・・』

それはこっちの台詞だ!との叫びを飲み込み、二人の提督は敬礼して席を立つ。何はともあれ、立ち向かって行くしかないのだ






戦機は両軍とも、再び熟しつつあった。しかし、思いもよらない陥穽は、その顎を拡げて大魚を飲み込もうと待ち構えていた・・・その陥穽の名は、《聖体》という名の焔

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