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009 家庭教師ナタリアの回想②

 マリア様が魔法陣や魔力量に興味を持ってるみたい。

 そのあたりを色々質問されました。

 でも、この(あたり)に興味を持つのは普通なら高等学院を卒業してからなのに、やはりマリア様は天才なのかしら。


 質問に対する私の答えを聞いた後、マリア様は腕組みをしてから目を閉じて何かを考えています。

 腕組みする5歳児。超可愛い!


「マリア様、大丈夫ですか?今日の授業はこれで終わりましょうね」

 そう言って初日の授業を終わりました。

 帰り際に魔法陣を見たいとリクエストをいただきましたので、今度博物館で転写してもらって持ってきましょう。


 翌日の魔法の授業でマリア様から詠唱の言葉を変えたいと言われました。

 一応【世界への語り掛け】が受け入れられれば良いので、一言一句同じでなければならないわけではありません。

 でも、あまり変えると魔法が発動しなくなります。

 そう言うと、マリア様は(うなず)いて、全く違う詠唱で魔法を発動させることに成功してしまいました。

「指先に小さな火を灯せ。スモールファイア」


 いや、ちょっと待って。そんな簡単な呪文で良いの?私が使ってた「精霊」とか「奇跡」とか不要なの?

 あの、めちゃくちゃ恥ずかしいんですけどー。もうやだぁ。


 その日の授業後に博物館に行きました。

「先輩、こんにちは」

「よぉ、ナタリアか。久しぶりだな。学院以来か?」

 学院時代の一つ上の先輩が博物館の学芸員(キュレーター)をやっているのです。


「そうですね。なかなか博物館には用がなくて…」

「おまえはどっかの貴族家で家庭教師をやってるって聞いたぞ。平民だからって理不尽な目にあってないか?」

「大丈夫ですよ。シュトレーゼン男爵家の皆さんはとても優しくて良い方たちですから」

 本当に旦那様も奥様も坊ちゃんもマリア様も使用人の皆さんも良い方たちばかりです。


「そうか。まぁなんかあったら俺に言え。助けになるかどうか分らんが。で、今日は何だ?」

「ありがとうございます。今日は魔導書の中からいくつかの魔法陣を転写してもらおうかと思って…」

「へぇー。おまえ魔法陣なんかに興味があったの?学院時代でも誰にも見向きもされない謎模様だったってのに」

「いえ、うちのお嬢様が興味があるらしくて。何枚か転写してもらおうかな?と」

「お嬢様って何歳だよ。おまえと同い年くらいか?」

「えっと5歳です(遠い目)」

「あー、単にきれいな模様が見たいってだけか。美術品として見ればなかなかのものだからな」

 本当にそうなのかしら。なんかマリア様だったら魔法陣を使って魔法を発動してしまいそうなんだけど。いや、まさか。


「転写するページはどうする?美術的な価値でいうとお勧めのページがあるけど、それにするか?」

「そうですね。効果や機能が分からない以上、美しい模様のものが良いでしょうね」

「あと、1枚の転写に10,000エントかかるぞ。大丈夫か?」

「ふぇ?そ、そ、そうですね。どうせ男爵家に請求しますので私がいったん立て替えるということで3枚にしておきましょう」

 そんなにお金がかかるの?手持ちのお金からして3枚しか転写できないけど、これってちゃんと支払われるのかな?

 勝手に持ってきたってことで、支払われないなんてことが…。いやいや、あの男爵家にかぎってそんなわけない。


 転写はすぐにはできず数日かかるということだったので、申込書を書いて料金を支払った後、博物館を出ました。

 マリア様、きっと喜んでくれるよね。


 数日後の授業のあと、博物館に寄って3枚の魔法陣を受領した私は、翌日の授業でそれを披露しました。

 受け取った魔法陣の1枚目をまじまじと見つめるマリア様。これって模様を眺めてるというよりは書類を読んでいるって雰囲気なんですけど…。


「先生、これはどのような魔法を発動する魔法陣なのですか?」

 そう聞かれることは予想していましたが、答えられません。無念です。

 でも、答えられないのは私が不勉強だからじゃなく、博物館の先輩のような専門家であっても答えられないのです。


「そうなんですね。残念です。でも魔法陣の模様がきれいで見てるだけでも幸せです」

 そうはいってもあまり残念そうには見えません。もしかして本当は解析できたとか?…ってそんなわけない!神様じゃあるまいし。


 2枚目と3枚目にもじっくりと目を通し、まるで文章を読んでいるかのようです。

 特に3枚目の魔法陣でマリア様の様子がおかしくなりました。必死に感情を押し殺しているかのような。でも悪い感情ではなく、多分喜びかな?

 理由は分かりませんが、喜んでもらえたなら私も嬉しいです。

 この魔法陣を宝物にするとまで言われて、私もものすごく嬉しい!もうね、経費として請求せず、私からのプレゼントってことにしようかな。


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