089 リヴァスト領へ行こう
夏休みに入った。
かなり前から日程調整したため、友人たち全員問題なく王都を出発できたよ。
馬車はそれぞれで用意するよりも、大型のものを1台用意して全員でそれに乗ったほうが効率的だからって、アレンのほうで手配してくれた。
まぁ、たった一日で着くしな。
あと、貴族だけどお付きのメイドなどの従者は連れてきていない。本当の身一つってやつだ。あ、着替えなどのお泊りセットを入れたカバンは持ってるから身一つじゃなかったね。
魔法の発動実験ができる場所は、お屋敷のある領都からは少し離れた荒野だそうだ。馬車で1時間くらいらしい。
ちょうど良い距離だね。あと、爆発音なども大丈夫って言ってたので安心です。
「お帰りなさいませ、アレン様」
リヴァスト家の屋敷に到着して馬車を降りると使用人たちが並んで出迎えてくれた。
アレンに続いて私たちが全員降りたところで執事らしき格好の初老のイケオジが挨拶した。
「いらっしゃいませ、お客様方。お部屋のご用意はすでに整っております。メイドに案内させますので、まずはごゆるりとお寛ぎくださいませ」
私たちも全員、お招きありがとうだの何だの貴族らしく挨拶して部屋へと向かった。ブレンダだけは見様見真似だったけど、それは仕方ない。貴族のマナーなんか学んでないからね。
部屋が全員個室だったのには驚いた。てっきり二人か三人で相部屋だとばかり思ってたよ。てか、どんだけ部屋数があるんだよ、この屋敷。
全員手荷物を置いたあとは応接室に集合し、軽いティータイムとなった。
侯爵家の屋敷らしく調度品が超豪華な応接室だ。全員少なからず緊張している。
ペリーヌにはお兄様がいるから良いとしても、ブレンダは私がしっかり見ておいてやろう。今でも緊張で死にそうな顔になってるよ。
「うう、お茶の味が分からないよ」
「ブレンダ、そんなに緊張することないわ。あなた、うちのお屋敷で緊張したことないじゃない」
ブレンダが泣き言を言うので、私がリラックスするように言ったんだけど、なかなか緊張がほぐれないようだ。そりゃ侯爵家だからね。私も少し緊張する。
「さて、今日はもう遅いから夕食をとってお風呂に入って寝るだけだね。誰かの部屋に集まって女子会しても良いけど、夜更かしして明日は寝坊しないようにね」
明日は朝食後すぐに荒野の実験場へ馬車で向かう予定なのだ。
女子会は無しかな。
「マリアちゃん、夜にお部屋に行っても構わないかしら?」
「ルーシーメイお姉さまが行くなら、私もマリアお姉さまのお部屋に行きたいです」
「だったら私も行くよ。いいよね?マリア」
順にルーシーちゃん、ロザリーちゃん、ブレンダの発言だ。
「少しの時間なら良いよ。ペリーヌ、いえお義姉さまはどうします?」
「お、お義姉さまぁ?マリア、まだ義姉じゃないよ。僕、じゃなかった私は明日のためにも部屋でゆっくりするよ」
ちっ、いじってやろうと思ったのに逃げたな。
「だったらペリーヌは僕の部屋に来ないかい?少しだけ話でもしようよ」
お兄様、健全な交際をお願いしますね。ここ侯爵家のお屋敷ですからね。
結局、シャミュア家の姉妹とブレンダだけが私の泊まる部屋に来て、少しの間おしゃべりしたよ。やっぱり旅行にはこういうイベントが必要だよね。




