087 ストーンキャノンの開発②
ストーンライフル改で作り出す弾丸の先端に信管を設け、着弾時に信管に刺激が与えられると爆発するような仕組みを考えてみよう。
現状は石の弾丸を構成し、それをタングステン並みの硬度にまで硬化しているだけだ。
撃ち出す弾丸に対する条件付けとして、着弾時に細かく割れて四方に高速で飛び散るようにすれば良いんじゃないかな?
それなら別に信管はいらないし、火魔法による爆発も不要だよね。砲弾の炸裂ってのはあくまでも破片の飛散効果による殺傷力を重視しているのだから。
まぁ爆風による破壊効果もあるんだけどね。
魔法陣を描くこと二週間、ようやく実験用魔法陣ができあがった。
うちの魔法練習場の中に横1メートル、縦2メートル、厚さ10ミリメートルの鉄板が立てられた。ちょうど目の高さくらいに10センチ角の小窓が開いている。
弾丸の着弾時に飛散する破片を防ぐためのバリケードだ。これの設置を頼んだとき、お父様はすごく心配そうだったけど、実は私も心配だ。大丈夫かな?
バリケードに開いた小窓から魔法を放つ。できるだけ遠くに着弾するように、立てられている的を越えたところを狙う。
的までは20メートルなんだけど、25メートル付近の地面が目標だ。って、それでもかなり近いよ。でもその向こうはすぐ壁なので、この距離が限界です。
着弾した瞬間、弾丸は見事に分裂してから周囲へ高速で飛び散った。
バリケードの下のほうにもガンガンぶつかる音がしている。怖いな、これ。
正面にある防御結界は良い仕事をしているようで、壁にめり込むような破片はない。
ふむ、飛び散った破片程度ならマジックガードでも防げそうだな。
まぁとにかく実験は成功だ。
実は実験用魔法陣はもう一枚用意している。
着弾時に爆発するという現象を記述した魔法陣だ。
一応描いてはみたものの成功するとは思っていない。ついでに実験するだけだ。
同じように放った弾丸は着弾しても土にめり込むだけで何も起こらない。やはり土魔法に火魔法を組み込むのは無理なのか。まぁ予想通りだな。
…と思った瞬間、地面が大爆発とともに噴きあがった。バリケードを越えて土がパラパラと降ってくる。
幸い石礫は飛んでこなかった。弾丸はその全てが爆発エネルギーに変換されたらしい。
心臓が止まるかと思ったよ。危ないからお付きのメイドたちは追い出して、練習場には私一人だったのが不幸中の幸いだったな。
「お、お嬢様!だ、大丈夫でございますか?」
練習場の扉の外から使用人たちの焦った声が聞こえる。私またやっちゃいましたか、テヘペロ。
頭の上から細かい土をかぶった私は現在ひどい有様になっている。
心配させると悪いので、扉越しに返答する。
「私は大丈夫。ちょっと大きな音がしたけど心配いらないわ」
まぁ『ちょっと』どころじゃなかったけどな。




