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085 大規模魔法の可能性

「これが発動した理由は、僕とマリアの魔力量が合算されたものが魔力バッファとして機能したということかな?」

「多分ですが、そうだと思います。そして複数人では輪の形に手をつなげば良いのではないかと推測できますね」

「3人や4人でも同様のことができるとすれば、攻撃魔法なら恐ろしい規模の魔法が撃てるんじゃないかな?」

 そう、その通りなんですよ。まさに戦略級魔法が実現できるかどうかなんです。


「もしかしたら相性なんかがあるかもしれません。血のつながりのあるお兄様と私だからこそ実現できたとも考えられるので」

 まぁ、誰でも良いような気はするけどね。個人の魔力を合わせているわけじゃなく、自然界の魔力のバッファとして使っているだけだから。

 でもお兄様は嬉しそうにしているよ。実際はどうだろうね?兄弟姉妹でないと合算(がっさん)バッファ(と呼ぼう)が使えないってこともあり得るな。

 次はそのあたりの実験をしよう。


 数日後、我が家に招集したのはいつもの4人+1人。。

 アレン、ルーシーちゃん、ブレンダ、ペリーヌそして新たなメンバーのロザリーちゃんだ。

 ロザリーちゃんにはすでに魔法陣による魔法の発動を説明済みで、何枚かの魔法陣の紙をあげている。

 ただし、複写発動の技術については王宮から口止めされているので教えられないけどね。


 まずは全員に今日の目的を伝える。

「本日は重要な実験を皆さんの手を借りて行いたいと思っています。お手伝いいただけますでしょうか?」

「マリアさん、何でも手伝うよ。何でもね」

 アレン、何でもを強調するのはなんか怖いです。


「マリアちゃん、水臭いですわ。強盗団を退治したときのように命令してくださいませ」

 いやこれは『お願い』であって、『命令』なんてしないよ。


「うん、私も何でも手伝う。私でも手伝えることがあって嬉しいよ」

 ありがとう、ブレンダ。期待してるよ。


「私も手伝うから、命令してね」

 ペリーヌさんや、いやお義姉(ねえ)さま。お兄様がいるからって一人称に『私』なんて使わなくても良いのよ。この僕っ()め。あと『命令』なんてしませんってば。


「マリアお姉さま。私でもできることがあるのかな?」

 ロザリーちゃん、もちろんだよ。しっかり手伝ってもらうよ。


 お兄様と私を含む全員で魔法練習場へ移動する。

 7人が輪になるには部屋の中は少し狭いからね。


 使う魔法陣は安全なマジックガードにした。

 ただし完成版(リリース版)ではなく、お兄様との実験で使った起動後にパラメータを設定してから発動する魔法陣だ。

 マジックガードの維持魔力量の公式については全員に周知しているので、パラメータの設定によってどれだけの魔力量が必要なのかは全員が計算できる。

 そのうえで縦横2メートル、厚さ10センチ、持続時間4秒のマジックガードを発動してみせた。

 もちろんお兄様と私の合体技で…。ただし発動者は私だ。


 見ていた友人たちは頭の中で暗算したり、テーブルで紙に書いて計算したりとそれぞれだったけど、1600の魔力量であることが分かると驚いていた。

 一人ではまず発動できない魔力量だからだ。

 アレンとペリーヌの二人は私たちの発動時の体勢を見てショックを受けてるようにも思えたけど、気にしないことにする。


「お二人で一つの魔法を発動したということかしら?」

 ルーシーちゃんの問いかけに私が答える。

「いや、発動したのは私だよ。お兄様は実は何もしてないんだよね」

「うん、僕は単なる魔力バッファとして機能しただけだね」

 全員がその答えに息をのんだ。共同で発動する場合は技術が必要だけど、手をつないでいるだけで良いならものすごく楽だよね。


「魔力バッファが合算されたということでしたら、3人以上でも可能なのかしら?」

「うん、まさにそれを実験しようと集まってもらったんだ」

 全員が納得の表情を浮かべた。


「僕とマリアが兄妹(きょうだい)だからできたとも考えられるので、今日はそれも実験したいんだ。ペリーヌ、こっちへ来てくれるかな?」

 お兄様がペリーヌを呼び、ダンスの体勢になったあと、さっきと同じ規模のマジックガードを発動させた。

 ペリーヌは真っ赤になって恥ずかしそうにしてるけど、婚約者同士なんだから恥ずかしがらなくても良いんだよ。ふふ。

 結論を言えば、問題なく発動した。これで血のつながりは必要ないことが検証できたわけだ。


「じゃあここにマリアが入ってくれるかな?ペリーヌの左手とマリアの右手をつないで、マリアが僕の右手を左手でつかむ形で」

 お兄様、ペリーヌ、私の順で輪になっている。

 お兄様がマジックガードを発動させた。

 縦横2.5メートル、厚さ10センチ、持続時間4秒の魔力量2500のマジックガードだ。

 で、問題なく発動した。さっきよりも一回り大きな半透明の壁が4秒間出現したよ。


「3人は成功したね。一人ずつ増やしていくのも面倒だから、今度は7人全員で輪になろう」

 お兄様の言葉に私の左手を右手でつかんだのがアレンだった。素早いな。

 アレンの次にブレンダ、そしてルーシーちゃん、ロザリーちゃんと続き、ロザリーちゃんがお兄様の右手をつかんで輪が完成した。

「それじゃあいくよ」

 縦横4メートル、厚さ10センチ、持続時間4秒の魔力量6400のマジックガードが発動した。

 でかっ。4メートル四方ともなるとかなりの迫力だな。全員が目を見開いて驚いている。


「うーん、あっけなく成功したね。マリア、どうだい?新しい魔法陣開発の参考になったかな?」

「はい。素晴らしい実験結果でした。魔力量の制約が無くなればアイディアの幅も広がりますね」

 お兄様と私のやり取りにルーシーちゃんはいつものルーシー(ぶし)を炸裂させた。

「マリアちゃん、新しい魔法を期待してますわ。新たな天界の至宝を下々の者にお示しくださいませ」

 『天界』とか『下々』とか、もうね、何も言うまい。それがルーシーちゃんクオリティなのだ。


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