008 魔法陣③
ほかの2枚の魔法陣を見てみる。
一枚はウォーターボール、水属性の攻撃魔法だ。
これもやばいにおいがプンプンする。攻撃力高そうだな。
う、撃ちたい!
それでは最後の一枚。
手に取ってその効果を確認した私は心の中で狂喜乱舞ですよ。といっても、内心の喜びを態度に出さないように気を付けたけどね。
な、なんと鑑定魔法でした。
これはすぐにでも実験できそう。てか、転生特典3点セットの一つじゃん。
「せ、先生!これも何の魔法なのかは分からないのですよね?」
ナタリア先生にダメもとで聞いてみる。
「そうなの。効果も発動方法も何も分かっていませんよ。残念ながら」
気の毒そうに眉をひそめながらナタリア先生が答えてくれた。
いや、大丈夫。効果も発動方法も分かってます。
「この3枚の魔法陣、私にいただけるのでしょうか?」
おそるおそる聞いてみると、先生はにっこり微笑んでこう言った。
「もちろんですよ。そのために持ってきたのですから」
まじ、あなたは神か!今後はナタリア先生に足を向けて寝られないな、家がどこか知らんけど。
「ありがとうございます!私の宝物にします」
実際、超お宝だよ、これ。
…で、夕食が終わり、お風呂にも入り、あとは寝るだけという時間帯。
お付きのメイドも下がっているので、部屋の中には私一人だけ。
「ふっふっふっ、やっと一人になれました。待ってたよ、この時を」
美幼女の仮面に邪悪な笑みを浮かべた私は鑑定の魔法陣を取り出した。
管理者の言葉を信じるなら、発動方法は割と簡単なはず。
まず、魔法陣を穴が開くほど見つめて、その画像を頭の中に焼き付ける。
次に、丹田から魔力を移動させるが、移動先は指先ではなく頭(脳みそ)だ。
脳内の魔法陣が魔力によって起動すれば成功なんだが…。
あれ?うまくいかない。
魔法陣全体を魔力で震わせるイメージでやってみたんだが、どうやら違うようだ。
プログラムであればスタートアップルーチンが必要だが、魔法陣にもあるのかな?
もう一度しっかりと魔法陣を眺めてみると、魔法陣の中のある一か所が特殊な模様になっていて、どうやらそれがスタートアップっぽい。
ほかの2枚…ファイアボールとウォーターボール…の魔法陣にも同様の模様があるので、おそらく間違いない。
「スタートアップルーチンだけに魔力を流せば良いのかな?」
とりあえずやってみた。何の問題もなく起動した。やたっ!
…でもすぐにエラーで止まった。なんでやねん。脳内に流れたメッセージによれば入力パラメータが不足しているらしい。
「ユーザインタフェースの設計が不親切だろ、これ」
つまり、鑑定対象物をあらかじめ指定してから発動しなければならないらしい。
机の上にある羽ペンを見ながら、もう一度起動する。
脳内に以下のようなリストが出現した。
・鑑定対象物:羽ペン
・正式名称:羽付きのペン軸
・機能:インク壺からペン先にインクを付けることにより紙にインクで記述できる筆記用具
・価値:100,000エント
なお、エントはこの国の貨幣単位で、1エント=1円って感じ(換算しやすくて素晴らしい!)
って、羽ペン高ぇな。高級品やん。
部屋の中にある様々な物品を鑑定してみたが、なかなか魔力切れにならない。
スタートアップルーチンを起動(管理者は励起って言ってたな)するのに使う魔力は微々たるもののようだ。
実際にはもっと多くの魔力を使用するようだけど、自然界の魔力を使うことでまかなっているっぽい。
なんて便利なんだ。てか、色々なものを鑑定してたら、そろそろ鑑定の魔法陣を暗記してしまいそうになってます。
あと、私の部屋の中のものって全部値段がやばいんですけど。