079 マジックガードと女子会
マジックガードをお披露目した日、お茶会よりも練習したいとの皆の意向でそのまま魔法練習場にとどまった。
4人が一生懸命魔法陣を暗記しようとする中、お兄様と私は優雅にティータイムです。ふふ、常に一歩先を歩く優越感。とか言ってたら追い抜かれたりもするけどね(タイムストップの技量…)。
一番最初に発動に成功したのはやはりアレンだ。次は間を置かずルーシーちゃん。ブレンダとペリーヌは少し苦戦している。お兄様がペリーヌに近づいて手取り足取りですよ。お熱いことで。
私はブレンダにコツを教えてあげよう。
で、全員が発動に成功した。
あとは目視指定したところに展開できるように練習したり、できるだけ高速に発動できるように練習したりと習熟度を上げていかないとね。
最後のほうは詠唱魔法の撃ち合いをゲーム感覚でやったりしたよ。って命がけの遊びだな。
まぁ、それができたのはお兄様と私以外では、アレンとルーシーちゃんの2人だけだったけど。
練習すればすぐに慣れるから、ブレンダとペリーヌも頑張ってね。
ただし、ペリーヌはお兄様が守ってくれるだろうけど。
とりあえず現時点でできるのは詠唱魔法を防ぐだけだ。
次の目標はブレンダの発見した複写発動の魔法を防ぐこと。無詠唱なので結界展開のタイミングが難しい。
最後に魔法陣の魔法を防ぐこと。こちらも無詠唱だし、ストーンライフルなんか超高速で飛来するので一番難しいんじゃないかな?てか、ストーンライフルは無理じゃね?
まぁ、魔法陣の魔法を防ぐのは当面考えなくても良いかな?私たちだけが知っている秘匿技術だからね。この6人の中から敵となる裏切り者が出るわけないし。あ、これはフラグじゃありません。
魔法の練習ばかりでは息が詰まるので、今日は女子会をやります。
ブレンダの家の宿屋が改装してすごくきれいになったらしい。ブレンダとその両親から私たち3人が招待されたのだ。
アレンやお兄様も呼ばれたんだけど今日は遠慮してもらったよ。女子会で、かつお泊り会だからね。
夕刻、馬車でエントランスに乗り付けると宿の従業員がずらっと並んで、何この高級ホテル感。ここは帝国ホテルですか?あ、帝国と言ってもガルム帝国じゃないよ。
いや前世でも帝国ホテルなんか泊まったことないから、よく知らないけど。
6階建ての建物は近隣でも一際高くて、ここよりも高い建物はないみたい。
金かかってんなぁ。改装というより建て替えじゃないの?
複写発動技術の対価でかなりの額をもらったんだろうな。玄関にはなんと王室御用達の紋章が掲げられていたよ。あとで聞いたら、本来なら叙爵すべき功績なのを秘密にした代わりに掲げることを許可されたとのこと。すげぇ。
「マリア様、ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ」
お姉さんと見まがう若さのブレンダの母ちゃんに案内されたのは、食事処の中の個室みたいなところだ。いやもう食事処なんて言えないよ。高級レストランです。
個室の中にはもうみんな揃っていた。
「マリア、来てくれて嬉しいよ。さ、入って入って」
ブレンダの言葉に従って部屋に入り、皆に挨拶する。
「ブレンダ、お招きありがとう。ルーシーちゃんもペリーヌも今日のお泊り会、楽しみだね」
「マリアちゃん、今日は寝かせませんわよ」
いや怖いよルーシーちゃん。何する気だよ。
「マリアさん、僕も楽しみだよ」
ペリーヌさんや。お兄様の前では『私』なのに、女子会だと僕っ娘に戻るのかい?
夕食として出てきた料理は貴族でもそう頻繁には食べられないような高級料理だった。気合入ってんなぁ。日本ならではの『おもてなし』の心を感じるよ。日本じゃないけど。
ルーシーちゃんの家は子爵家だけどそこそこ裕福だからそんなに珍しくないだろうけど、ペリーヌは貧乏な準男爵家らしくて高級料理に夢中です。お兄様には見せられないね。
コース最後のお茶とデザートをまったりと楽しんだ私たちは、ブレンダの発言に驚かされた。
「この部屋って防音されてるから、絶対に盗聴されることはないよ」
すごいな。高級料亭での密室会合ごっことかできそうだな。あ、てことは魔法に関する秘密の会話とか気兼ねなくできそうだね。
同じことをルーシーちゃんやペリーヌも感じたようだ。
「複写発動技術や魔法陣の話もできますわね」
「うん、そうだね。魔法陣と言えばマジックガードはどうだい?僕はタイムストップは得意だけど、マジックガードは難しいよ」
ペリーヌは今では魔法も操るけど、どちらかというと体育会系だもんね。もともと武術組だし。
「私も苦手だなー。模様が複雑で覚えられないよ」
泣き言は聞きませんよ、ブレンダさん。アイテムボックスなんかこれの100倍は大変なんだからね。
「私はなんとか身についていますわ。この魔法でマリアちゃんを守ってあげるんですの」
ルーシーちゃん、ありがとう。百合的な話じゃないよね?少し怖いよ。
楽しい会話とともに夜は更けていった。




