077 マジックガード【設計・実装そして公開】
基本設計・詳細設計はちゃちゃっと終わらせ、すぐに実装だ。私の開発スタイルは前世のころからアジャイルで、設計よりも実装を重視している。
実験用の魔法陣がひな形としてあるので、それをベースにパラメータ固定したものを魔法陣に描いていくだけだ。
アルファ版が完成したのは2年生に進級してから約一か月後のことだった。お兄様と要件定義を行ってからは一週間もたっていないというスピード開発です。
お兄様に協力してもらって発動検証や強度検証を行いながら、細かい不具合を修正していく。
絶対に一発で完成しないよな。必ず何かしらの不具合があるのだ。
ベータ版、RC版と進み、ようやく完成したのがさらに二週間後だ。
テスト工程も時間がかかるよね。はぁ、ホント面倒くさい。
ちなみに、魔法名はマジックガードにした。また安直な名前をと思うだろうけど、ネーミングセンスが無いんだよ。悪かったな、ふん!
リリース版の魔法陣を友人たちの分も含めて6枚描いた。手書きだから大変だ。
お兄様と私は事前に魔法陣を暗記して、すぐに発動できるように練習しておく。友人たちへのデモンストレーションで魔法戦をやろうと思ってね。
お兄様と私が直接魔法を撃ちあったりするのを見たらきっと驚くぞー。命がけのサプライズです。実際、発動に成功すれば危険はないけど、失敗すると危険だよな。
でも大丈夫。タイムストップのように身体を動かしながらだと失敗するかもしれないけど、魔法戦は基本その場を動かないからね。
2年生に進級してから二か月後、私は友人たちを我が家に招いた。
アレン、ルーシーちゃん、ブレンダ、ペリーヌの4人だ。迎えるのはお兄様と私。いつものメンバーだな。
「皆さん本日はようこそおいでくださいました。ふふ、今日は重大なお話があります」
あたかもお兄様もしくは私の婚約発表のような雰囲気で微笑みながら話すと、アレンはぎょっとして、ルーシーちゃんとブレンダは目を輝かせ、ペリーヌは赤くなって下を向いた。
なに、その四者四様。
「えぇ、とりあえず魔法練習場へ移動しましょう」
魔法の話と分かってアレンはほっとした様子、ほかの3人はなんかがっかりしてる。みんな恋バナ好きだな。私もだけど。
いつもは的に向かって立つんだけど、お兄様と私は事前の打ち合わせ通り、的に対して水平になるように立って向かいあった。
まずは私が詠唱魔法のファイアアローをお兄様へ放つ。
みんなは息をのみ、特にペリーヌは小さく悲鳴を上げた。いや、大丈夫だから。
お兄様に直撃するかに見えた火の矢は、しかしお兄様の身体を傷つけることなく半透明の防御結界にはじかれて霧散した。
みんな驚いているな。よしよしサプライズ成功。
次はお兄様が詠唱魔法のウォーターカッターを私に放つ。
もちろん私は防御結界を展開してこれを防ぐ。
魔法陣でストーンライフルやファイアボールを撃ち合うのは怖いからやめた。詠唱魔法だったら全然怖くないね。楽勝ですよ。
「どうですか?皆さん」
私の問いかけにアレンが答えた。
「マリアさん、それは魔道具、携帯型防御結界なのかい?いや軍用の機材を手に入れられるはずがないか」
「そうですね。魔道具は使っていませんよ。これは魔法技術の一つです」
私の言葉にルーシーちゃんが気付いた。
「マリアちゃん、さっきのは魔法陣ですわね?魔法陣で防御結界を張ったのでしょう?」
「ルーシーちゃん、正解!」
「まあまあ、天使様がまた奇跡をこの下界にもたらしたのですね。なんて素晴らしい」
天使様って私のことじゃないよね?ルーシーちゃんの中で私の位置付けってどうなってるの?ちょっと心配です。
全員に魔法陣の紙を渡して、その仕様を説明していく。
「魔法陣で発動したストーンライフルやファイアボールまで防げるのかい?すごいな。物理的脅威にはタイムストップ、魔法的脅威にはマジックガードか。もはや無敵じゃないか」
アレンが呆れたように言ってるけど、ここは感心してほしいところですよ。
「皆さん、これは絶対に暗記して、いつでもすぐに発動できるように練習してください。どうかお願いします」
私は4人の友人たちに頭を下げた。心からのお願いだ。友達が傷つくところなんて見たくないからね。




