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055 無詠唱技術②

「ほかの魔法はどうなのかな?例えばウォーターカッターとか」

「そうだね、マリアさん。結果のイメージをどれだけ正確に脳裏に描けるかということだから、割といけるんじゃないかな?」

 私の疑問にアレンが答える。

 とにかく練習してみよう。


 さっきのファイアアローが10分くらいの練習で無詠唱発動できるようになったので、今度は5分くらいでできるかな?と思ったら発動しない。

 ブレンダも一緒になってやってみるものの、ブレンダ本人が発動できていないのだ。いや試験のときアレンのを見てるよね?

「一度、詠唱で発動してみよう」

 そう言ってお兄様がウォーターカッターを詠唱して発動した。

 そのあとすぐに、お兄様やブレンダを含め、全員が無詠唱発動に成功した。


「これは無詠唱技術というよりは、複写発動の技術というべきかもしれないね」

 一人が一回だけ詠唱で発動すれば、それを見ていた人は無詠唱で発動できるということかな?つまりコピーか。


「じゃあ今度は最初のファイアアローを無詠唱で発動できるか試してみよう」

 結論から言うと誰もできなかった。ブレンダも。

 脳内イメージがウォーターカッターで上書きされて、ファイアアローのイメージが消えてしまったせいだろう。

 試験のとき、ブレンダは私のファイアアローを見たあと、自分が呼ばれるまで目をつぶって脳内イメージを固めることに専念していたらしい。ほかの人の魔法を見ていなかったので、イメージが上書きされなかったということか。


「次が最後の検証ポイントですね。無詠唱で連続発動できるかどうかやってみましょう」

 現在の脳内イメージはウォーターカッターなので、それを無詠唱で複数回発動してみる。うむ、問題なく発動した。魔力量の関係であまり何回も検証できないけどね。

 ほかのみんなも連続発動に成功している。


 やはり便利な技術であることについては間違いない。

 でもそこまでご都合主義的でもないな。制約が多いよ。


「この画期的な技術、ナタリア先生に伝えて論文を魔法学会に発表してもらおうか?」

 お兄様は学生だし学会発表用の論文は書けないだろうけど、私は前世の大学で卒業論文を書いているので多分書けると思う。言えないけど。


「そうですね、お兄様。でもこれはお父様を通じて王宮の意向を確認すべきかもしれませんよ」

「ああ、マリアさん。僕もそう思う。この技術は軍事的にかなりの重みを持つので、秘匿技術にされるかもしれない」

 アレンも侯爵家という王宮に近いところにいる立場だから、そう思うよね。だってずらっと並んだ魔法使いたちから同じ攻撃魔法が詠唱無しで連続発射されてくるんだよ。敵からしたらとんでもない攻撃だよ。

 ちなみに秘匿する場合、この場にいる5人にはかなりの口止め料が支払われるだろうな。特に発見者のブレンダには多額の補償金が出そう。本当なら叙爵に値する発見だものね。

 あと、ブレンダが試験会場で無詠唱を披露してしまったけど、そっちはなんとかごまかして有耶無耶(うやむや)にするしかないな。


 お兄様が結論付けた。

「そうだね。父上よりはアレン君のお父上であるリヴァスト侯爵様に伝えたほうが良いだろう。アレン君、頼めるかい?」

「はい、シュミット様。父に伝えて王宮の意向を確認します。公表しても構わないということになったらノイマン家のナタリア様のお力を借りましょう」


 これで方針は決まったな。ブレンダは終始、話の展開についていけなくて不安げな顔だったけど、大丈夫だよ。お金か名誉かその両方か、いずれにしても何かは貰えるさ。


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