051 入試のあと
実技試験も終わり、試験官から解散の宣言があった。二週間後に合格者の受験番号をこの会場の敷地内の掲示板に貼り出すとのこと。
てか、この試験会場は高等学院そのものなわけですが。
合格すれば、この場所に通うことになる。
ちなみに試験日つまり今日は全学休講なので、お兄様は家にいて自習している。まじめだな。
「マリアさん」「マリアちゃん」
アレンとルーシーちゃんが私のところに来た。
「アレン様、ルーシーちゃん、ごきげんよう」
「マリアさん、目立たないように自重してたね?」
「ええ、でもそれはここにいる全員同じでしょう?」
「ふふ、マリアちゃん。不満そうなお顔をしてましたよ」
「いや、だって詠唱文の美しさを評価するとか言うんだもん」
和やかに談笑してる私たち3人にある女の子が声をかけてきた。
「マリア。さっきはありがとう。おかげで助かっちゃった」
友達になったばかりのブレンダだ。助かった?
「ブレンダ、私の友達を紹介するね。こっちがアレン。こっちはルーシーちゃんだよ」
「アレンとルーシーか。ブレンダだよ。よろしくね」
「ああ、アレンだ。よろしく」
「ルーシーメイと申します。よろしくお願いしますね」
「二人とも貴族だから言葉遣いに気を付けてね」
一応、念のため釘を刺しておこう。アレンもルーシーちゃんも気にしないと思うけど。
「ええ?貴族のマリアの友達なんだから当然か。私のばか。も、申し訳ございませんでした」
「ブレンダさんは平民かい?」
「はい、実家は小さな宿屋を営んでおりまう、っと噛んじゃった」
「そう。僕もマリアさんと同じように敬語はいらないよ。気軽に話してほしいな」
「私も構いませんわ。この4人の間では敬語禁止にしましょう」
「いや、ルーシーちゃん、敬語になってるよ。ふふ」
良い感じの仲良し四人グループができたな。アレンを中心としたハーレムパーティみたいに見えちゃうけど。
それよりさっきの試験のときのブレンダの魔法だよ。そして私のおかげで助かったとはどういうこと?
「ブレンダ、聞きたいことがあるの」
「何?マリア」
「さっきの試験のときに使った魔法って詠唱しなかったよね?なんで?」
「なんでって私、詠唱の言葉を知らないもの」
はぁぁぁ?それでどうやって世界に語り掛けるの?魔法陣なの?
「ねえ、もしかして魔法陣を使った?」
「魔法陣?何それ?」
ふむ、魔法陣を知らないらしい。ということは魔法の発動方法には詠唱と魔法陣以外にもう一つあるということか。
しまった。ルーシーちゃんには魔法陣の件は秘密だったから、なんか不審そうな目になって私を見てるよ、ルーシーちゃん。
学院に入学したら説明するよ。
「あなたの魔法発動手順を教えてよ」
「うん、さっきの魔法で説明するよ。まず、マリアが魔法を使ったのを見て、その映像というか場面を頭の中に焼き付けたんだ」
「ふむふむ、それで?」
「魔力をお腹から頭に流して、さらに右手の先へと流せば発動したよ」
「誰から教わったの?そのやり方」
「自己流だよ。あ、でも、私がまだ小さかったときにうちの宿屋に泊まった魔法使いさんがいてね。その人が魔力の移動さえ練習しておけばなんとかなるって言ってたんだ」
つまりは脳内イメージを固めて、そこに魔力を流した後に手から放出すると無詠唱で魔法が発動するってわけか。
この発見を学会に発表したら、ナタリア先生みたいに叙爵されるんじゃないの?それくらい画期的な方法なんだけど。
アレンとルーシーちゃんも驚きすぎて固まってるよ。
「なるほど。だからさっき『マリアさんのおかげ』って言ってたのか」
アレンが再起動した。どうやら私と同じ結論に達したらしい。
この技術のポイントは、詠唱のように誰でも発動できるのかってところだな。
ブレンダ以外がこのやり方で発動できるのかを検証しないとね。




