048 アレンと博物館
今日はアレンと二人で博物館に来ている。もうすぐ閉館時間だが、閉館後こそが重要であるとアレンには伝えてある。
博物館に入ってすぐにグレゴール氏に声をかけられた。
「よぉ、マリアの嬢ちゃん。今日も魔導書かい?」
「こんにちは、グレゴール様。いつも通り閉館後の魔導書閲覧よろしくお願い致します。こちらはリヴァスト侯爵家のアレン様です」
初めてなのでアレンを紹介する。
「ノイマン準男爵家のグレゴールと申します。お見知りおきを」
「ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。アレンと申します。若輩者ですがよろしくお願い申し上げます」
貴族同士の初対面なので堅苦しい挨拶も必要だ。面倒くせぇ。
「そうそう、嬢ちゃん。うちのナタリアが会いたがってたぞ。娘のマリアンヌもな」
「アポイントメントなんていらないので、マリアンヌちゃんを連れてお気軽にうちに遊びに来てくださいとナタリア先生にお伝えください」
男爵家と準男爵家なんだから平民っぽい付き合いで良いんだよ、まじで。
その後、アレンと館内を少し回ってみた。もうすぐ閉館時間だけどね。
ここの博物館にくるのは初めてらしく、物珍しそうに展示物を眺めていた。
そうこうしているうちに閉館5分前のアナウンスが流れたため、いつもの閲覧室に向かった。
魔導書を手にしたグレゴール氏がすでに部屋の前で待ってくれていた。
私は白のマイ手袋を2組取り出し、1組をアレンに渡す。博物館に子供用の手袋は置いてないから仕方ない。
「これが魔導書か。初めて見るよ」
そうだろうな。普通の人は全く興味をもたないものだからね。
手袋を付けた手で魔導書のページをめくっていくアレン。
ファイアボールに差し掛かった時点でアレンに小声で伝える。
「アレン様、これが例の件で使った魔法陣です」
「そうか。これも記憶するのが難しそうだね」
グレゴール氏も立会人として部屋の中にいるため、小声で内緒話するしかない。
でも、顔を近づけてこそこそ会話する私たちをグレゴール氏はにやにやしながら見ている。なんか勘違いされてない?
ストーンライフルに差し掛かった時にはアレンのほうが先に気付いたようだ。
「これ練習場で撃ったあれだよね」
「えぇ、その通りです。さすがアレン様。すばらしい記憶力ですね」
よく覚えてんなぁ。まぁこの魔法陣はあの後アレンにあげたから、侯爵家でも練習していたのかもしれない。
一通り見終わって、転写サービスを申し込んだ。
アレン用にファイアボールとウォーターボール、私のためのストーンライフルとほかにも2枚を追加で頼んだ。まとめて全部アレンが料金を支払ってくれた。太っ腹ぁ。
転写が完了するには数日かかることを伝えると、アレンは自分の分と私の分の両方を受け取ってから、私の分はお屋敷まで届けてくれると言ってくれた。
数日後にはまたアレンが来るわけね。
そう言えば、古代語が読めることはばれなかったよね?本人に直接聞けないけど。




