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046 アレンの訪問

 侯爵家のアレンから遊びに行きたいという内容の手紙が届いた。

 まぁ、今回の襲撃事件の慰問なんだろうけど、遊びという表現にしたアレンの気遣いを感じる。良い子なんだよ。

 私のほうに断る理由もないので、快諾の返事をしたためたわけだが、何となくファイアボールの件を聞かれそうな予感がする。

 アレンの父ちゃんは王宮で働いているらしいから、今回の件もその詳細を聞いているに違いない。

 王宮内の機密情報を息子にペラペラしゃべるような父ちゃんかどうかは知らんけど。


 お兄様に続いてアレンも魔法陣仲間にしちゃおうかな?

 アレンが私の許可なく情報を拡散するとも思えないしな。うむ、我が国の戦力は多いほど良い。

 だったらルーシーちゃんも巻き込むか?いやいや、魔法陣の使い方を知っているという時点で身に危険が及ぶかもしれない。

 やはりアレンくらいまでだな。基本的に聞かれたら教える、自分からは教えない…というスタンスでいこう。


 王都に戻ってから二か月後、我が家にアレンがやってきた。

「マリアさん、お元気そうでなによりです。ご活躍だったそうですね」

「いえいえ、それほどでも。おいでいただきありがとうございます、アレン様」

 友達、いやすでに親友なんだけど、いまだにこんな感じの会話になるのは貴族のしがらみってやつだろう。もっとフレンドリーに会話したいものだ。


 応接室に案内し、お茶とお菓子がテーブルに用意されたあと、アレンが切り出した。

「さっそくだけど、帝国の密偵を撃退した魔法が何だったのか、教えてもらうことはできるだろうか?もちろん秘伝の技術で門外不出というなら強制はしないけど」

 やはり来たか…。アレンも魔法に関しては貪欲だからなぁ。

 お兄様には最初に鑑定魔法の魔法陣を紹介したために、私が古代語を読めるってことがばれたんだよね。

 同じ間違いはしないぞ。私は学習する人間なのだ。


 まずは人払いだな。部屋の隅に控えていたメイドたちには退室してもらう。

「この魔法陣をご覧になっていただけますか?」

 私は自室から持ってきた開発中の探査魔法であるマジックサーチの魔法陣をアレンに手渡す。

 鑑定魔法もアイテムボックスも秘密にしておこう。どちらも古代語がからむからね。【全言語理解】だけは絶対に秘匿するよ。


「この魔法陣がどうしたの?まさか高威力の魔法は魔法陣によるものなのかい?」

 なかなか勘の鋭い10歳児だな。正解です。


「まずはこの魔法陣を細部まで記憶していただけますか?記憶することができたら脳内でこの記号の個所に魔力を流してください」

 ちなみに魔法陣の記憶がどれだけ大変なのかというと、例えばノートに自作の迷路とかを描いたことがあるだろうか。

 写真のプリントによく使うL版の紙(はがきよりも一回り小さいくらいの用紙)に1ミリメートルの通路の幅で迷路を描く。それを原紙を見ずに別の紙に描き写すことができるくらいの暗記力が求められるのが鑑定魔法やファイアボールやウォーターボール、そして探査魔法の魔法陣の難易度。

 2L版の用紙(L版の2倍の大きさ)に描かれた迷路の暗記が必要になるのが飛行魔法の難易度。

 A4用紙の大きさに描かれた迷路の暗記でようやくアイテムボックスが発動できるという感じだ。


 魔法陣の記憶の大変さと、最高難易度のアイテムボックスの難しさがお分かりいただけただろうか?

 魔法陣を使ってすぐに魔法を発動できたお兄様が異常に優秀なんだよね。


「む、難しいな。これができない限り次の段階には進めないんだよね?」

「そうですね。私の説明を理解していただくには、これがもっとも近道だと思います」

 1時間でも2時間でも待つよ。てか、普通それくらいかかるよ。


 30分後、アレンが驚愕の声をあげた。

「魔力を流したら円形の図が出てきて、そこに赤い点がいくつも星のように散らばってるのが見える」

 起動したようです。すげぇ優秀だな。


「これはマジックサーチという探査魔法の魔法陣で、自分を中心に半径70メートルの中にいる人間を赤い点で表示する魔法です」

「マリアさん、(きみ)は魔法陣の使い方が分かっているということなんだね?これはものすごいことだよ」

 めちゃ興奮してる。そりゃそうか。この様子だと私がこの魔法陣を開発したってことは黙っていたほうが良さそうだな。


 ここでファイアボールとウォータボールの魔法陣を見せてあげたいんだけど、お兄様に貸しっぱなしなので手元にない。

 簡単な魔法陣で、ある程度の攻撃力があるものは何かあったかな?

 博物館で魔導書の転写を結構やってもらったので、ほかにも色々な魔法陣を持っている。ただしアイテムボックスに入れてるけど。

 少し席をはずし、自室でアイテムボックスから魔法陣の紙を一枚だけ取り出す。


 応接室に戻ってからアレンにその紙を渡した。

「それでは次はこれを記憶してください。ただし発動は絶対にしないでください。攻撃魔法なので」

 土系統の攻撃魔法であるストーンライフルの魔法だ。硬化させた石の弾丸をライフルで撃ち出すように発射するもので、規模は小さいが威力は大きいコスパに優れた魔法だ。難易度はファイアボールよりも低いくらいなので覚えやすいと思う。

 でもその威力は鉄製の鎧くらいなら簡単に貫通するという、まさにライフル銃なんだよね。まぁ、うちの魔法練習場の防御結界は撃ち抜けない(以前こっそり検証済み)ので、このあと練習場で試してもらうには最適だよ。

 なお、詠唱魔法にもストーンバレットという似たような魔法があるけど、あっちは石を手で投げてるような魔法だから、当たれば痛いけど貫通はしない。

 ストーンライフルの貫通力を高めているのは、弾丸に回転を加えていること(ライフリング)と初速の速さだな。殺傷力高いです。


「一応、記憶できたと思うけど」

 やはり30分くらいで記憶できたようだ。優秀だ。

「それでは我が家の魔法練習場へ行きましょう。そこで魔法を発動してください」


 魔法練習場に移動してアレンが右手を構える。ストーンライフルを発動した瞬間、右手の先から何かが発射されたのか20メートル先にある的が粉砕された。

 何が撃ち出されたのか目で確認することができないくらいの速さだったため、的が壊れたという結果から何かが発射されたのだろうと推測するしかない。

 ファイアボールは目で追える速度で撃ち出される反面、広範囲を攻撃できるのに対し、ストーンライフルは対象をピンポイントで攻撃するものの、発射速度は超高速だ。発動したが最後、人の反射神経では避けることが不可能という必殺の魔法です。ちなみに、携帯型の防御結界で防げるかどうかは検証していない。


「これはすごい。すごすぎる」

 アレンの感動が伝わってくる。私も最初にこの魔法陣を実験したとき感動したもんね。

 あと、無詠唱なのも感動ポイントかもしれない。

 この魔法陣、私はまだ暗記していないけどアレンにあげても良いかな。きっと喜ぶだろう。私の分はまた博物館で転写してもらえば良いし。


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