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045 アレン・フォン・リヴァストの回想③

「父上、それは本当ですか?」

 僕は侯爵家当主である父からの話に耳を疑った。

 領地へ向かっていたシュトレーゼン男爵家の馬車が盗賊に襲われたらしい。

 マリアさんから一か月ほど領地へ視察に行くとの話を聞いていたので、その馬車に違いない。マリアさんは無事なのか?


「ああ、王宮へ緊急の連絡が入った際、私も偶然そこに居合わせたのだ。だが心配することはない。盗賊30人を一人の犠牲者も出さずに撃退したそうだ」

 それはすごいな。かなりの護衛を付けていたのかな?と思ったら、たったの4騎だそうだ。

 男爵家当主を含めても戦力は5人。戦力比は1対6にもなる。とても無傷で撃退できるとは思えない。


「報告に来た騎士2名の話では、馬車から撃たれた魔法が20人の盗賊を殲滅したらしい」

 おそらくシュミット様(将来の義兄なので、様を付けて呼んでいる)とマリアさんだろう。二人とも優れた魔法使いだからそのくらいはできそうだ。


「問題なのは、捕まえた盗賊の一人が自分はガルム帝国の軍人だと発言したことなのだ」

「まさか。その盗賊の世迷言でしょう。軍人と言えば捕虜としての待遇を得られると思ったのではないですか?」

「私も最初はそう考えた。しかし報告では、その盗賊団には魔法使いが所属していて、さらに防御結界装置も持っていたとのことだ」

 盗賊になるはずのない希少職の魔法使いに、軍用の携帯型防御結界…確かに普通の盗賊ではないな。


「もしも本当に帝国の密偵だったならば、捕虜奪還のために再度襲撃される可能性がある」

 ただの盗賊ならば男爵領で死罪に処せば良いのだけど、帝国兵なら捕虜として王都へ移送しなければならないだろう。

 僕なら必ず襲撃する。


「捕虜の移送のために馬車と増援の騎士を派遣するが、男爵一家も護衛に付いてもらうようにとの陛下の裁可がくだった」

 まさか!そんな危険な旅にマリアさん一家を巻き込むのか?何かあったらどう責任を取るのか?

 陛下の判断を批判するわけにもいかず、内心で思っていても口には出せない。


 捕虜移送完了の知らせ、というよりシュトレーゼン男爵家の王都帰還の知らせを一日千秋の思いで待ち続けていたが、ようやく知らせが届いた。

 王都の街門に人を常駐させ、通過する馬車を確認させていたのだ。

 シュトレーゼン男爵家の馬車が門を通過したとの知らせに胸をなでおろした。

 一日も早く男爵邸を訪問してマリアさんの無事を確認したいのだが、今回の事件が解決するまでは当事者である男爵邸への訪問が禁止されている。

 おそらく問題ないとは思うが、顔を見るまでは安心できない。


 男爵邸への訪問ができないまま、新たな情報が父上よりもたらされた。

「王都への捕虜移送中、帝国軍はザグレブ子爵領の森の中で待ち伏せを図ったそうだ。しかしそれを殲滅、いや虐殺と報告者は表現していたが、とにかく撃退したとのことだ」

 虐殺?いったいどういう戦闘が行われたのだろう?


「そんなに一方的な戦いだったのですか。増援人数が多かったのか、敵が少なかったのか」

「いや逆だったらしい。こちらの兵力は騎士10騎と少なく、敵はこちらの5倍の人数だった」

「それで虐殺とはどういう…?」

「うむ、高威力の魔法を連続で発動した二人の子供が、たった二人だけで敵を殲滅したらしい」

「!!!」

 シュミット様とマリアさんだ。たしかにシュミット様の放つ攻撃魔法は殺傷力が高いし、マリアさんもシュミット様ほどではないけど、かなりの攻撃力を持っている。

 しかし、高威力魔法の連続発動ができるような技量はなかったはず。

 いや、僕にも秘密にしていたシュトレーゼン男爵家秘伝の技術とかがあるのかもしれない。

 この事件が収まってから男爵邸に遊びに行った際、秘密を教えてくれるだろうか?いや、聞きだしてみせる、きっと。


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