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004 魔法

 5歳からは読み書き・計算に加えて魔法の勉強もするらしい。

 読み書きについては【全言語理解】があるので問題ないし、計算も高校数学まではマスターしている。

 これら全てを教えてくれる家庭教師が平民のナタリアさんだ。このお姉さん、20歳前半なんだけど、高等学院を上位の成績で卒業した才媛らしい。

 普通の貴族家では家庭教師も貴族令息や令嬢だったりすることが多いみたいだけど、我が家は低位貴族の男爵家なのでそのへん気にしない。

 私としては親しみが持てて、とても嬉しい。2年前から兄の家庭教師としてほぼ毎日来ているので、顔なじみでもある優しいお姉さんなのだ。


「マリア様、今日からお勉強をみさせていただきます。よろしくお願いしますね」

「はい、ナタリア先生。こちらこそよろしくお願い致します」

 まず最初は当然ながら読み書きの勉強だ。

 文字を覚えることから始めるわけだが、面倒なので絵本で覚えたことにする。


「先生、この国で使われる文字は一応全部覚えました。お母様に絵本を読んでいただきましたので…」

 いや、これは本当。そういう記憶がある。


「そうですか。では簡単なテストをしてマリア様の現在のレベルを確認したほうがよろしいですね」

 ナタリア先生から出題される問題に次々と答えていくと、徐々に高度な問題になっていくのにうかつな私は気付かなかったようだ。


「なんだか、読み書きについては教えることがありませんね。信じられないことですが」

 あ、やべぇ。天才児認定されたかも…。


「まぁ良いでしょう。では計算のほうに入りましょう。数字は覚えているようですから、まずは足し算から学びましょうね」

 うへぇ、四則演算は省略して確率や因数分解、対数や微積分をやってほしいなぁ。割と忘れてるし…。

 でも、さすがに四則演算をすでにマスターしているというのは、あまりにも天才過ぎるので言えない。


 私にとって(退屈過ぎて)拷問のような時間を過ごし、一桁と二桁の足し算が終わった。

 まじかよ。四則演算の勉強が終わるまで何年もかかりそうで恐怖だ。

 てか、7歳の兄はどこまで進んでいるのだろうか?


「先生、シュミットお兄様は足し算のほかにどんな計算を学んでいるのですか?」

「引き算と掛け算というものを学んでいますよ。掛け算はとても難しいけどシュミット様はがんばって勉強しています。マリア様もゆっくり頑張りましょうね」

 うは、まじかよ。3年目で掛け算。こりゃ割り算にいくまでどんだけかかることやら。まじ拷問過ぎる。


「それでは最後に魔法について勉強しましょう」

 やたっ!待ってましたよ。ていうか、勉強はもう魔法だけで良いんだけど!…そういうわけにもいかないのがツラすぎるよ、ホント。


「まず魔法というものは何か?それは魔法に適性を持った人が呪文を詠唱して発動する奇跡です」

 へ?あれ?管理者から聞いた話と違うぞ。

 魔法は誰でも使えるって言ってたし、呪文の詠唱が必要とも言ってなかったよな。

 脳内の魔法陣に魔力を流して励起させるって言ってたっけ?


「私も簡単な魔法なら使えますので、ちょっとお見せしましょう」

 そう言ってナタリア先生は呪文を唱え始めた。


「火の精霊に対し(たてまつ)る、我が指先に蝋燭(ろうそく)の火を(とも)す奇跡を(たまわ)らんことを。スモールファイア」

 うっ、恥ずかしい。中二病だよ、まじで。

 でもナタリア先生の右手の人差し指の先に小さな火がともった。詠唱は恥ずかしいけど、奇跡を()の当たりにしてとても感動した。


「先生、すごいです!奇跡です!」

 大はしゃぎだ。5歳児だしな。


「先生、私にもできるでしょうか?」

「そうですね、魔力の流れを感じ取ることができないと難しいでしょうね。だからまずは魔力を感じ取る練習をしましょう」

「魔力って何ですか?」

「人間の身体の中にある特別なエネルギーですね。これを燃料として魔法を発動します」

 あれ?なんか違うくない?管理者は自然界の魔力を吸収して使うって言ってたような?

 どうやら管理者の認識つまりはこの宇宙の真理と、この世界の人達の認識に齟齬(そご)があるようだ。


「マリア様、おへその下あたりに意識を集中してください。なにか温かい感覚があったらそれが魔力です」

 ほう、いわゆる丹田(たんでん)だな。前世では気功術にはまったことがあり、気沈丹田(きちんたんでん)とか丹田呼吸法とかやったよな。

 前世を思い出しながら意識を丹田に集中すると確かに何か感じられる。これか?


「先生、なにか感じ取れました」

「はやっ。ごほん、いえ、さすがはマリア様。上達が早いですね。それではその魔力をぐるぐる回してから、続けて右手の指先に導きます」

 丹田で気を回転させるイメージは前世でやってたので、そのまま指先にまで移動させる。


「先生、できました」

「まじで?いえ失礼しました。それでは詠唱してみましょう。私に続いて詠唱してみてください」

「はい」


「火の精霊に対し奉る」

「ひのせいれいにたいしたてまつる」


「我が指先に蝋燭の火を灯す奇跡を賜らんことを」

「わがゆびさきにろうそくのひをともすきせきをたまわらんことを」


「スモールファイア」

「すもーるふぁいあ」

 ぼっと一瞬だけ火がともり、すぐに消えた。火がついたことにびっくりして集中力が途切れたからなのか、火はすぐに消えてしまった。残念。


「マリア様、素晴らしいです!成功ですよ」

「先生、ありがとうございます。先生のおかげです。嬉しい!」

 魔法を初めて発動して有頂天だ。

 魔法って簡単だな。


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