033 ガルム帝国特務小隊長の回想②
貴族と思しき馬車への襲撃任務を与えた第2分隊から遠話の魔道具で連絡が入った。
襲撃は失敗。
第2分隊は全員離脱できたものの、応援の第4分隊と第5分隊は全滅したとのことだ。
軍において全滅とは戦力の3割減を指す言葉だが、言葉通りの全滅、つまり生存者無しらしい。
もしかしたら何人か生きていて捕まった可能性もあるとのことだが、とにかく第4分隊と第5分隊で離脱できたものは皆無らしい。
とても信じられない。
報告を聞いてしばし呆然としてしまった。
どう考えても戦力的に負けるはずのない戦いだったはずだ。
第2分隊からの情報によると、馬車からすごい魔法が撃ち出され、あっという間に20人が倒されたとのこと。
魔法攻撃に対処するため、防御結界装置を数人に装備させていたはずだ。もちろん戦力として貴重な魔導師にも。
何が起こったのか、調べなければなるまい。
将来の戦争において、相手が使った魔法は戦局を左右するものになるかもしれない。
いや、その魔法の詳細な内容と対処法の確立ができない限り、開戦すべきではない。
なすすべもなく魔法で蹂躙される我が軍を思い浮かべ、暗澹たる気持ちになった。
なお、小隊は5分の2の人員を失ったので軍事的には全滅だ(3割以上の戦力を失った)。
俺の指揮責任は明らかだ。帰国したら査問会に呼び出されるだろう。
相手の情報収集を怠り、戦力を無為にすりつぶしたのだから。いや、逆に2個分隊を失ったかわりに有益な情報を得られたと考えるべきか。
とにかく人員補充の要請はしなければならないだろう。首を覚悟で。




