003 アレン・フォン・リヴァストの回想①
今日はシュトレーゼン男爵家の長女が5歳になったお披露目パーティだ。
噂ではなかなか可愛い子らしい。
我が家は侯爵家なので、小さい子がいる貴族家はその子たちをやたらと友達候補として推薦してくる。
先月の僕のお披露目パーティではたくさんの令息や令嬢に囲まれて大変だった。
でも男女ともに一緒に遊びたいなと思う子はいなかった。
親の命令で仕方なく話しかけてきた感じの男連中と目がハートになってやたらべたべたしてくる女連中にはうんざりだ。
父上と一緒に会場に入り、主催者の挨拶を待っているとシュトレーゼン男爵が壇上に上がった。
隣には清楚なピンク色のドレスに金色の髪の毛をアップにセットしたお人形のような女の子が立っている。
「お集まりの皆様、今宵は我が娘マリアの5歳の披露パーティにおいでいただき誠にありがとうございました」
「マリア・フォン・シュトレーゼンでございます。初めてお目にかかります。今後ともよろしくお願い申し上げます」
利発そうな女の子だ。
一目で気に入った。やばい、友達になりたい。
「マリアさん、僕はリヴァスト侯爵家の嫡男、アレン・フォン・リヴァストと申します。お見知りおきを」
「マリア・フォン・シュトレーゼンと申します。お声がけありがとうございます。こちらこそどうぞよろしく」
うむ。僕も5歳児っぽくないとよく言われるが、この子も5歳にしてはしっかりしている。
「僕も先月5歳のお披露目をしたばかりなので、歳も近いし仲良くしてほしい」
「身分差もあっておそれおおいことながら、こちらこそよろしくお願いします」
「爵位は気にしないでほしい。親の爵位を継ぐまでは無爵なんだから」
「分かりました。アレン様とお呼びしてもよろしいでしょうか」
「うん、僕もマリアさんと呼ばせてもらうよ」
よしっ!これでこの子とは友達だ。
「マリアさんの好きな食べ物って何?」
「いつも何して遊んでるの?」
「好きな本ってある?」
矢継ぎ早に質問攻めしてるけど、落ち着いて答えてくれる。そもそも目がハートじゃない。
逆に僕のほうがやばいかもしれない。
伯爵家や子爵家の子たちが僕やマリアに話しかけたそうにしているが、割り込みは許さないぞという空気を作ってマリアと会話する。
とても楽しい。よし、今度お茶会を開いてマリアを招待しよう。
今日はとても有意義な一日だった。