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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(6年目)
299/303

299 講和会議

 我が国で行われる講和会議に出席するため、駐グレンテイン王国帝国大使館に外交官がやってきた。さすがに、私が帝国大使として会議に出席するわけにはいかないからね。

 軽く目線を下げたまま大使室に入ってきた人物を見て驚いた。見覚えのある白髪、白髭のダンディな年配の男性だったのだ。ちなみに、私が大使館の大使室で勤務するのは一週間のうち一日だけだ。それ以外は工房のほうにいるよ。

『大使閣下、お初にお目にかかります。スケノリ・カバーヤ準男爵と申します。このたびはアメリーゴ共和国との講和会議に出席するために参りました。閣下のお下知(げち)に従うよう申し付かっておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます』

 ガルム語での挨拶に私もガルム語で答えた。

『お久しぶりですね、カバーヤ総督。いえ、今は外交官ですか。帝国大使のサクラ・ガルムです。本名はマリア・フォン・シュトレーゼンですけどね』

 私を見たカバーヤ氏が目を見開いて絶句しているよ。氏は以前ファインラント領を治めていた総督だったんだけど、なるほど今は外交官になったんだね。優秀な人がこき使われるのは、どこの世界でも同じようだ。

 私は時間をかけて状況を説明した。ややこしい話だけど、優秀なカバーヤ氏はすぐに理解してくれたよ。

『なるほど、閣下はグレンテイン王国とガルム帝国を結ぶ懸け橋というわけですね。それにしてもファインラント領では本当に失礼致しました。まさか大使閣下とは思わず…』

『いえ大丈夫ですよ。あ、それからこの講和会議において少しばかり面倒な作戦が同時並行的に進みますけど聞いていますか?』

『はい、シゲノリ将軍が立案したサクラ作戦ですね。支作戦であるベルンラント侵攻作戦と合わせて、帝都の参謀本部で聞いてまいりました』

 お、貴族対策の部分(サクラ作戦)まで打ち明けられているってことは、本当に信頼されてるんだな。

『カバーヤさんには臨時代理大使として講和会議に出席していただきます。難しい舵取りを迫られる立場となりますが、帝国の安寧のためによろしくお願い致します』

『はっ、自らの務めを果たす所存であります』

 これでカバーヤ代理大使に面倒なことを全て押し付けられるってことだね。うむ、優秀な人を派遣してくれた皇帝陛下に感謝だな。


 講和会議における共和国側の主張は次の通りだ。

A-1.現在の休戦ラインであるハルナ平原の中心を新たな国境線とする

A-2.帝国軍捕虜の返還においては帝国は身代金を支払うこと

A-3.共和国製航空魔道具の無償返還を要求する


 これに対して帝国側は以下のように主張している。

B-1.もともと帝国のものであった国境砦の無償返還を要求する

B-2.国境線は以前のラインのままで変更しない

B-3.帝国軍捕虜の無償返還を要求する

B-4.航空魔道具の返還においては共和国はその代金を支払うこと


 まぁ、交渉のスタートラインとしては、お互いに無理な要求を突きつけあっていることは自覚している(おそらく共和国の外交官も)。

 【A-1】と【B-1】【B-2】が競合するんだけど、これに関しては【A-1】が結論となることに帝国側(皇帝陛下)も納得している(まだ言えないけど)。

 【A-2】と【B-3】の競合と【A-3】と【B-4】の競合については、【A-3】と【B-3】のバーターで良いんじゃないかな?つまり、お互いに捕虜と航空魔道具を無償で交換し合う形だね。

 共和国側の思惑は分からないけど、帝国側の本当の要求は割とシンプルだ。捕虜さえ無償で返してくれれば今の休戦ラインで講和しても大丈夫ってことだね。ところが、帝国の馬鹿貴族たちが【A-1】に強硬に反対しているせいで、サクラ作戦などという面倒くさいことをしなけりゃいけなくなるんだよ。まったくもう。


 なお、ベルンラント王国方面には共和国の密偵が配置されていないのか、大兵力(2個師団2万人)の移動にもかかわらず秘密裏にベルンラント王国との国境まで兵力を展開できてしまった。

 もちろん、できるだけ発見されないように街道沿いの国境の街を避けて布陣している。

 この事実(ベルンラント侵攻作戦の準備)はまだ講和会議においては秘匿されているんだけど、ここで信じられないことが起こってしまった。

『サクラ、ベルンラント王国との国境にある帝国側の街がベルンラント王国軍に攻められている。ただ、装備はベルンラント王国軍に見えるが、しゃべっている言葉がアメリーゴ語らしい』

 通信魔道具でシゲノリ少将から緊急連絡が入ったのだ。

『まさかベルンラント王国軍に偽装した共和国軍の侵攻でしょうか?てことは、ベルンラント王国も共和国側に付いたってことかな?宣戦布告は?』

『無い。つまりは大規模なテロ集団と同じだ。ベルンラント侵攻作戦のためにすぐ近くに2個師団が布陣しているが、そのうち機動力のある部隊を向かわせるように手配したぞ。サクラ作戦を修正することになるが良いよな?』

『もちろんです。国境の街が蹂躙される前に救援してください。間に合えば良いのですが』

 街には塀や門があるはずなので、ある程度の時間は持ちこたえられるはずだ。でも、もしも門を突破された場合、街の人たちは悲惨な目にあうことだろう。この世界の戦争ってそういうもの(民間人への略奪や暴行は一般的)だからね。


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