297 サクラ作戦
私は通信魔道具を使ってシゲノリ大佐、じゃなかったシゲノリ少将に連絡した。対空魔道具の製品化に目途がついたってことをだ。
例の作戦(秘匿名称:サクラ作戦)についても、参謀本部の優秀な人員を活用して作戦案がほぼ出来上がったらしい。いや、その作戦名は何だよ。
春先(今年4月)に帝国貴族が一堂に会する中、ベルンラント王国経由での共和国への侵攻作戦(作戦名:ベルンラント侵攻作戦)が発表される予定だ。そのタイミングに合わせて我が国で講和会議も開催される。二度目の講和会議だね。
実際にベルンラント王国との国境まで軍を移動させるかどうかは最後まで悩んだらしいけど、リアリティを出すために2個師団を動かすことになったそうだ。これは本当は秘密裏に行うべきなんだけど、実は共和国への交渉カードなので師団の移動が察知されても問題ない。ちなみに、すでに移動を開始している。
対空魔道具については取り急ぎ製造する20台をこっそりと帝国に貸与(供与や販売ではない)する予定なので、作戦開始までには間に合うだろう。てか、本当に戦闘するわけじゃないので本当は不要なんだけど、これまたリアリティを出すためだね。
あと、ベルンラント王国と密約を交わしているという嘘をもっともらしく見せるため、帝国の外交官がベルンラント王国に入国している(ただし、王国政府の要人と会うわけではない)。
なんだか本当に奪われた国境砦を取り返せるような気になってきたよ。錯覚だけど。
さぁ、あとは馬鹿貴族からリークされた情報によって共和国が適切に対応すれば、ベルンラント侵攻作戦は失敗する。よって、現在の国境線(ハルナ平原)が確定して終戦するって寸法だ。
この屈辱的な講和の元凶は情報をリークした愚かな貴族たちに帰するってことで、めでたしめでたしというわけだね。
というか、共和国が適切に対処してくれなかったら困っちゃうんだけど、まぁそんなことは起こるまい。
ややこしい作戦だから「策士策に溺れる」にならないと良いけどね。てか、原案を考えたのは私か。
まぁきっと大丈夫だろう。頼むよ、お兄ちゃん。