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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(5年目)
289/303

289 亡命政府との会見①

 ユーリ氏はこの件を急いで伝えたいとのことで、夕食の誘いを断って帰っていった。

 私たちは1階の食堂で夕食をとることにしたんだけど、アレンの笑いが止まらない。笑いのツボにはまったようだ。

「くっくっく、マリアの悪名がこの国にまで届いているとは、さすがと言うべきだろうな。もしかすると、この大陸一の有名人かもしれないね」

「ほんと失礼だよね。人のことを悪魔だ何だと…。全然心当たりが無いんだけど」

「いや、最後に微笑んだときの顔がいかにも悪いことを考えてますって感じだったよ。ぶふっ」

 また噴き出したよ。アレンもかなり失礼じゃない?

「本当に失礼千万ですわ。マリアちゃんは悪魔ではなくて天使だというのに」

 いや、ルーシーちゃんもおかしいよ。私は天使じゃないから。

「私にとっては神様ですよ」

 ミカ様も怖いことを言わないでー。私は人間だから。平凡…ではないかもしれないけど、ただの人間です。


 それから三日後、ユーリ氏がホテルに再びやってきた。王子殿下と側近たちがミカ様との会見を望んでいるらしい。えらく時間がかかったけど、何かもめてたのかな?

「全くひどいものですよ。ミカ様を裏切り者と呼ぶ者、代官など認められないから領主にしろという者、実権さえ握ってしまえばこっちのものだという者、はっきり言って(ろく)な奴はいませんよ。私も含めて」

「ユーリさんはまともに見えますよ」

 私の言葉にユーリ氏が苦笑しながら返した。

「こうして内情をペラペラしゃべっている時点で、私も(ろく)な奴じゃないでしょう」

「王子殿下はどうお考えなのでしょう」

「殿下は側近の言いなりです。お優しいのは美点ですが、為政者としての苛烈さはありませんね」

 うーん、やはりそうか。ただのお飾りならいらないかな。欲しいのはミカ様に代わってファインラント領を治めるだけの才覚ある政治家だからね。

 まぁとりあえず会ってみてからの話だな。私たちは翌日、このホテルの会議室で会見することにした。王子を呼びつけるとは何様だって怒られそうだけど、元・王子だからね。勘違い野郎をあぶりだすためにもこちらに来てもらおう。


 そして翌日、約束の時間を30分ほど過ぎてからぞろぞろと団体様がやってきた。宮本武蔵かよ。

 中心にいるのが第二王子殿下だろうか?ぼんやりとした覇気のない顔をしている。

 周囲を6人の男性が囲んでいるんだけど、一番後ろにユーリ氏の姿が見えた。先頭に立っているのがリーダー格だろうな。てか、全員若い…ユーリ氏と同じ30代くらいに見える。

『ええい、お前たち()が高いぞ。こちらのお方はファインラント王国第二王子殿下であるリード・ファインラント様であるぞ。控えよ』

 ファインラント語でまくし立てている先頭の男性を冷ややかな目で見る私たち。当然、控える必要はありません。

 冷静に私がファインラント語で言った。

『皆さん、どうぞこちらへ。ホテルのロビーで騒ぎを起こされると迷惑ですよ』

『なっ!』

 先頭の男性を含む数人が顔を真っ赤にして何か言いたそうだったけど、私が軽く殺気を放つと真っ赤な顔が真っ青に変わった。信号機みたいだね。

 会議室に入ると窓側の席をお客さんに(すす)め、私たちは出入口の側に着席した。

『はじめまして。私はマリア、こちらはアレン、そしてルーシーメイです。この二人はファインラント語が分かりませんので、私のほうで紹介させていただきました』

『うむ、余がリード・ファインラントである。よろしく頼む』

『ミカ・ハウハでございます。殿下お久しぶりでございます。お元気そうで安心しました』

『そちもよくぞ生きていてくれた。嬉しく思うぞ。家族全員処刑されたと聞いておったのだが…』

『ありがとうございます。ですが真相は処刑ではなく、殺人事件だったのです。その犯人である帝国貴族のツージイ伯爵はすでに処刑されましたのでご安心を』

『その者は我が王家を滅ぼした帝国軍の司令官ではないか。そうか、そちが(かたき)を討ってくれたのか。礼を言う』

 ほほう。礼を言うくらいの常識はあるようだね。


 ここで側近の男たちがしゃしゃり出てきた。おいおい、(あるじ)が会話してるのに部下がそれを(さえぎ)るのかよ。

『ミカ・ハウハ様。ユーリ・ウコンネルより詳しい事情は聞いております。あなたは国家反逆罪を犯した犯罪者ですので、ファインラント領の統治権をリード殿下にお渡しいただきたい』

 ぷっ、国家反逆罪って、その国家はもはや存在していないんですけど。

『そう、殿下こそファインラント領主にふさわしい』

『ゆくゆくは再びファインラント王国として独立することも夢ではないでしょう』

 いや、夢だよ。

『裏切り者のあなたから帝国皇帝にお願いしてもらえば、リード殿下が領主となることを認めていただけるはずです』

 あ、切れそうだ。堪忍袋の()がほつれて、あとは糸一本を残すのみだよ。

 最後にようやくユーリ氏が発言した。

『私はリード殿下が代官を拝命して、ミカ様という領主のもとでファインラント領を治めるという形態に賛成です。あなたがたは失礼極まりないことを言っていると自覚してください』

 やはりユーリ氏だけはまともだな。側近はユーリ氏だけで良いよ、もう。

 てか、リード殿下から信頼されていないって言ってたけど、殿下の眼差(まなざ)しはユーリ氏を支持しているように見えるのは気のせいかな?


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