286 共和国行きの準備
魔石計測器の製品化については職人たちに丸投げし、私はアメリーゴ共和国訪問のための準備を始めることにした。
まぁ、準備と言っても持っていくものはそんなに多くない。非常食や替えの服や下着、簡易トイレなどは常時アイテムボックスに入っているからね。もちろん、通信魔道具や各種武器も常備しているよ。
同行者については、アレンとミカ様は言うまでもないんだけど、シゲノリ大佐は留守番だ。なお、大使館の建物が完成したので、シゲノリ大佐も同じ建物内に作られた職員宿舎のほうに移っている。今は大使館職員の募集中です。グレンテイン語はもちろん、ガルム語もしゃべれる人限定だからなかなかハードルは高いけどね。
そうそう、蒸気機関設置用の建物(蒸気機関研究棟)も屋敷の敷地内に突貫工事で建設中で、庭がさらに狭くなったことについてお母様からめっちゃ睨まれた。建物が完成したら蒸気機関を設置して稼働させることで、色々と研究が捗ることだろう。
「マリアちゃん、共和国へは私も一緒に行きますわよ」
ルーシーちゃんが私に宣言した。
「え?何で?大都会って噂の共和国の首都ヨークを観光したいの?」
「違いますわ。マリアちゃんの護衛です。このためにアメリーゴ語を特訓致しました」
ほほう、アレンはアメリーゴ語に関しては片言でしか話せず、ミカ様は全く分からないから、アメリーゴ語を話せる人が私以外にいるのは便利かもしれない。
「僕も4年前から比べるとかなり話せるようになったけどね」
おっと、アレンはすでに片言じゃなくなっているみたいだね。さすがは努力家だ。感心するよ。
結局、共和国行きの人員は全権大使(帝国の大使として)の私、随員(護衛も兼任)としてアレンとルーシーちゃん、ファインラント亡命政府との交渉役としてミカ様という四名編成となった。
出発は9月中旬で、年末までにはこちらへ帰ってきたいと思っている(ミカ様の高等学院受験準備のため)。
すぐに出発しないのは、帝都で手に入れた蒸気機関を設置してから出発したいので、蒸気機関研究棟の落成を待っているのだ。なお、研究棟なんてかっこいい名前だけど、実際はプレハブみたいな適当な建物だけどね。ただし、鉄の塊でくそ重い蒸気機関を設置するため、土台だけはしっかり作っているよ。あと、いくら上質な帝国産の無煙炭といえど煤煙の問題は無視できないので、高い煙突も建てている(これに最も時間がかかっている)。
めちゃくちゃ庭の景観を損ねているので、お母様の目が日に日に吊り上がっていくのが恐ろしい。はやく共和国へ逃げ、じゃなかった…はやく共和国を訪問しよう。