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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(5年目)
285/303

285 魔石計測器の開発

 魔石の残容量計測器(通称で魔石計測器(テスター)とでも呼ぼうか)を設計する前に必要なことがある。それは結果を表示するための出力装置の製作だ。

 魔力量の計測器のように色の変化で表しても良いんだけど、せっかくだから7セグメントLED(マッチ棒を7本使って日の形にしたものをイメージすると分かりやすいかもしれない…通称「(なな)セグ」)みたいな簡単な表示装置を作ってみよう。幸いこの国で使われている数字は『日』のそれぞれの線(7本)を使って表現できるような形になっているからね。

 0から9までの数値を指定できる回転スイッチから入力値を取得し、その値に応じて7つの線のどれを点灯させるかを魔法陣で制御する。これは簡単だったので、すぐに完成した。

 問題は2(けた)や3(けた)の数値を表示する仕組みだ。例えば最初の魔石の残容量を999として1ずつ減っていく際、990の次が989になったり900の次が899になったりしないといけない。(けた)上がりの場合も同じだ。


 検証用の魔道具として、3つの7セグを並べて、数値入力用回転スイッチを3つ、リセットボタンを1つ、カウントアップボタンを1つ、カウントダウンボタンを1つ接続したものを作った。もちろん、むき出しの魔法陣にミスリル線で繋いでいるだけの実験用器材だ。

 まず回転スイッチで初期値を設定して、リセットボタンを押す。7セグにその値が表示されることが確認できたので、カウントアップボタンやカウントダウンボタンを押すことで表示されている数値が増減することを確認した。

 1の(くらい)の7セグが変化していくんだけど、(けた)上がりや(けた)借りに関しても問題なく行われることが確認できたので、複数(けた)の数値表示もこれで完成だな。

 ちなみに、ここまで約一週間かかっている。


 さて、次は問題の魔石の容量を計測する方法だね。

 魔力量の計測器は昔から存在するんだけど、これは流れている魔力がどれだけなのかを累積で計測できるものであって、魔石の残容量を計測する用途には使えない。体内魔力が枯渇するまで魔力を放出すれば自分自身の魔力量が測れるんだけど、同じことを魔石でやると魔石が空っぽになっちゃうからね。

 仮説なんだけど、もしも残容量に応じて魔力圧が変わるのであれば、それを計測して残容量を推測することができるかもしれない。電気で言えば電圧計だね。

 電圧…じゃなかった、魔力圧って測れるのかな?てか、そもそもそんな概念は存在するのか?

 まぁ、あくまでも仮説だからね。

 で、色々と世界への語り掛け(API呼び出し)を試行してみたんだけど、結論としては失敗した。APIを見つけられなかっただけって可能性もあるけど、感触としては魔力圧なんてものは無いね。

 この検証にさらに約一週間。


 実験は魔法陣の魔法で行い、右手に持った魔石を計測対象として、結果を脳内に数値表示するように魔法陣を設計している。魔法陣を変更するつど再度記憶するのが大変だけど、ハードウェアをいじるよりはこちらのほうが私にとってはやりやすいのだ。

 もういっそのこと、魔石の残容量を測ると魔法陣に記述したらどうだろう?いや、そんな簡単なことで測れたら苦労は無いっつーの。

 八方(ふさ)がりなので、とりあえずやってみた。ところが予想に反し、脳内に数値が表示されているよ。おいおい、まさかの成功か?

 新品の魔石と使いかけの魔石、それにもうすぐ交換が必要な魔石など数種類の魔石で試してみると、全てそれっぽい数値(多かったり少なかったり)だった。はー、なんで今まで魔石の残容量計測器が製品化されていないのだろうか?もしかして魔法陣でなければ呼び出せないAPIなのかな?

 理由は分からないけど、なんとなく完成が見えてきたよ。ただ、(けた)数が大きい。3桁の7セグ出力装置では表示しきれないので、出力装置を6桁に作り変えた。

 あとは、これを魔道具用の魔法陣に描き換えて、出力結果を6桁の7セグ表示装置で出力できるようにするだけだ。

 開発方針は決まった。このあと、試作品の製作に約二週間を要したけど、これってそこそこ速いほうだと思うよ。


 結局、開発に着手してから試作品の完成までに約一か月を要したことになるね(開発工数は1人月(にんげつ)だ)。学生だったら夏休みであるはずの真夏の一か月を研究室にこもりっきりで生活したことになるよ。てか、そろそろ共和国へ向かう準備を始めないといけない時期だよ。

「アレン、魔石の残容量計測器ができたよ。名前は魔石計測器(テスター)ね」

「なんだか久しぶりにまともな会話をするね。あまり無理しないように」

 毎日、朝から晩まで研究室にいたため、アレンとは朝に少しだけ挨拶をかわすくらいだったのだ。

「うん、心配してくれてありがとう。でね、この魔道具を動かすための魔石とは別に、計測したい魔石をここに置いて計測ボタンを押すと…」

 6桁の7セグ表示装置(ディスプレイ)に数値が表示された。なお、この数値が信用できるのかに関しては、開発中に散々テストしているので間違いない。

「すごいな。この数値が正確なのかどうかは置いておいても、この表示装置は画期的だな。マジックカリキュレーターの魔法陣を魔道具化できるんじゃないか?」

 え?そっち?7セグ表示装置(ディスプレイ)のほうに感心されちゃったよ。確かにこの7セグ表示装置(ディスプレイ)があれば電卓の魔道具が作れそうだね。

「もう、感心してほしいのは魔石の残容量が表示されてるってことのほうだよ。すごいでしょ?」

 アレンが苦笑いしながら言った。

「ああ、もちろんすごいと思うよ。魔石の製造現場でも品質管理に使えるし、飛行機械(ヘリコプター)の整備士たちにとっても朗報だろうね」

 ふっふっふ、そうだろう、そうだろう。もっと褒めてくれても良いのよ。

 上機嫌な私を微笑ましいものでも見るかのように優しく見つめるアレン。その構図を「尊い」とかつぶやきながらうっとりと見つめるルーシーちゃん。その姉の姿を(あき)れたように見るロザリーちゃん。工房事務所の中はいつも通りの風景だった。


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