278 要塞攻略戦
向こうもこっちもお互いにダメージを与えられない膠着状態になっている。このまま包囲していれば、いつかは中の食糧が尽きて陥落するのは間違いない。でも、いったいどれだけの時間がかかるか分からないよね。
仕方ない。私たちも参戦するしかなさそうだ。
『クロー少佐、私たち四人も要塞攻略戦に参戦致します。まずは正門の両脇にある監視所をつぶし、そのあと正門を破りますので突入の準備を整えておいてください』
私はこう言って、艦砲魔道具4台、自動連射装置3台、精密射撃装置1台をアイテムボックスから取り出して各人へ配布した。
艦砲魔道具は全員に1台ずつ、それに加えてミカ様には精密射撃装置、残りは自動連射装置で武装する。
『君たちにそんなことができるわけないだろう。できもしないことを言わないでもらいたい』
ここでシゲノリ大佐が本来の身分を明かした。
『参謀本部のシゲノリ大佐だ。この方は帝国大使であるサクラ閣下、それに随員2名だ。ここからは俺がこの大隊の指揮をとる。異存は無いな?』
本来の身分証をクロー少佐に提示したシゲノリ大佐はなんだか嬉しそうだ。てか、サクラ閣下とか言われると気持ち悪いっつーの。
クロー少佐は絶句して、敬礼したまま硬直しちゃってるよ。
『サネユキが左側の監視所、アカネが右側の監視所を艦砲魔道具でつぶしてくれ。タイミングを合わせて俺とサクラ閣下が正門を艦砲魔道具でぶち破る。それでは状況開始!』
アレンとミカ様が監視所に狙いを付けたあと、お互いに目配せをして艦砲魔道具を発射した。監視所の床部分を狙って放たれた弾丸は監視所の土台部分(おそらく階段部分?)で爆発し、上の監視所を吹き飛ばした。流石だね。
ほぼ同時にシゲノリ大佐と私が鋼鉄製の正門に艦砲魔道具を発射。正門を吹き飛ばすつもりだったんだけど、意に反して貫通してしまい、塀の内部から爆発音が聞こえてきた。屋敷に当たって爆発したのかな?
『シゲノリ大佐、門の中央の閂があると思われる部分や蝶番のある個所を狙いましょう』
『了解です。サネユキとアカネも頼む』
『『はい』』
こうして四人全員で正門の弱点部分を狙って攻撃を続け、ついに正門が屋敷側に向かって、ドドーンという重々しい音とともに倒れ込んだ。即座にクロー少佐の指揮する3個中隊が門の中に突入する。
激しい戦闘が始まるのかと思いきや、ツージイ伯爵側はあっさりと白旗を上げて降伏したようだ。まぁ、これだけ圧倒的な火力を見せつけられれば、心が折れるのも仕方ないね。
正門の中に入ると、かなり遠方にある屋敷が半壊していた。あと、正門と屋敷の間にある広大な庭がクレーターだらけになっていた。そこに転がる領軍将兵の死傷者たち。うむ、やり過ぎた感があるね。いや、本当は艦砲魔道具で門を破壊するだけで、あとは大隊にまかせる予定だったんだよ。予想外に門がもろかったせいだから、うん。