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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(5年目)
277/303

277 領主の館

 通信魔道具で皇帝陛下に連絡をとって、ツージイ伯爵領で起こっていることを詳しく伝えた。当然、陛下は激おこですよ。すぐに1個大隊を向かわせるとおっしゃっていたけど、到着は一週間後くらいになるらしい。

 それまでは大人しくしているように言われたんだけど、先方から仕掛けてきた場合は反撃して良いという言質(げんち)をとった。しかし一週間は長いな。いったん領都を出たほうが良いかもしれないね。


 ここに来るときには通り過ぎた隣の領の領境(りょうざかい)にあった街にでも行こうかな。

 なお、捕縛した1個分隊10名の処遇については全員を釈放した。ただし、私たちのことを厳重に口止めしたのは言うまでもない。あと、一週間以内に退職したほうが良いという忠告もしてあげたよ。

 まぁ、口止めしたとしても、街の人たちには見られてるんだけどね。


 その日の夜に(くだん)の街に到着して宿屋に入ることができた。もちろん風呂付きだよ。

 一週間ほど宿泊する予定であることを伝えたら、宿の人もほくほく顔になったよ。で、真面目な顔で忠告された。

『お客さん、この隣のツージイ領には行かないほうが良いですよ。特に領都には絶対に行ってはダメです。どうせ見るところもありませんしね』

『へぇそうなの?ご忠告ありがとう。気を付けるよ』

 ツージイ領って結構有名(悪名で)になってるのかな?てか、ツージイ伯爵って馬鹿なのかな?破滅への道を突き進んでるよね。


 一週間ほど暇になったので、この街の観光をしてまわった。なんだか久々の観光だ。旅は多いってのに、のんびり観光した覚えがあまりないという…。

 宿の人に聞いた名所旧跡や特産品情報をもとに街を巡ったんだけど、なかなか楽しかったよ。さすがに三日くらいで行くところが無くなっちゃったけど。

 あとは宿の部屋でアンチエアクラフトガンの魔道具化のための魔法陣を描いたり、通信魔道具の応用で盗聴器(魔法陣の大きさがネックで、小型化するのがとても難しい)を設計したりして時間をつぶした。


 この街に来てから一週間後、宿屋に一人の帝国軍人が訪ねてきた。

『帝国軍第312大隊所属のシゲハル中尉であります。大隊長の命によりお迎えにあがりました』

 第312大隊って、第3師団第1連隊第2大隊って意味らしい。どうでも良いけど。

 街のすぐ外まで到着していて、ここから私たちも一緒にツージイ領へ連れて行ってくれるとのこと。

 シゲハル中尉を私たちの自動車に乗せて、すぐに大隊本部へと(おもむ)いてから大隊長と面会した。

『俺がこの大隊を率いるタメモト・クロー少佐である。君たちがヨシフル氏、サネユキ氏、サクラ嬢、アカネ嬢だな。上からの命令で君たちを護衛し、同時にツージイ伯爵の捕縛を行うことになった。よろしく頼む』

 アレンや私と同じくらいの歳かな?まだ20代半ばって感じだ。若いのに少佐で大隊長ってことは優秀なのだろうか。いや、貴族出身だからって線も考えられるけど。

 シゲノリ大佐が代表して挨拶した。

『こちらこそ。民間人ですのでご迷惑をおかけしますが、なにとぞよろしくお願い申し上げます』

 ふむ、身元は明かさないと…。まぁ、大佐とか言っちゃうとクロー少佐が委縮(いしゅく)しちゃうかもしれないしね。


 この大隊、自動車装備ではないものの、600名の人員を大型馬車30台で輸送するというなかなかの高機動部隊だった。大隊規模だと通常は徒歩移動だから、こんなに早く(一週間程度では)ここに来られないからね。

 それでも馬の疲労などを考慮すると自動車のようには移動できない。ツージイ伯爵領の領都へは翌々日の到着になった。

 まずは通用門の門番を急襲して捕縛し、領軍へ連絡できないようにした。ただ、残念ながら大型馬車群の接近の一報については、すでに入れてしまったらしい。

 とにかく、こちらとしては伯爵家の屋敷へ向けて進軍するだけだ。さすがに大隊規模ともなると隠密行動は難しいので、機動性を生かして馬車で急襲をかけるという戦術判断を下したようだね。まぁ、良いんじゃないかな。

 大通りを爆走する30台もの大型馬車に街の人たちは驚いたことだろう。相変わらず外を歩いている人がほとんどいないので、本当に驚いているかどうかは分からんけど。


 捕縛した門番の案内で伯爵の屋敷に到着した。第一印象は刑務所だ。10メートルはあろうかという高い塀と四隅に配置された監視所。正門の門扉(もんぴ)は鋼鉄製で固く閉ざされている。まるで要塞だね。塀の中には領軍1個中隊が籠城(ろうじょう)していることだろう。

 第312大隊って、はたして攻城戦の準備はしてきたのだろうか?多分、野戦部隊なので攻城機材(はしごやロープ、丸太など)は持ってきてないだろうな。

 いや、まさか領主の屋敷が要塞になっているとは思わなかったし、これは偵察を(おこた)った私たちのミスだよ。失敗した。

 1個中隊で周囲を包囲して逃走を防ぐ措置をとったあと、クロー少佐が拡声の魔道具で投降を呼びかけた。返答は降り注ぐ矢の雨だったけどね。

 大隊の残りの3個中隊は盾を頭上に掲げて矢を防ぎつつ前進し、正門を突破しようとしている。しかし、破城槌(はじょうつい)などの攻城兵器が無い以上、強行突破は無理っぽい感じだ。

 うーん、どうしよう。


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