027 魔力量の計測器③
もっと多くの魔力量を計測できる魔道具が必要だ。
ジョゼフ先生からお借りしたものは先生が8歳のときに買った子供用らしいので、最大計測量が少なかったみたい。
実はもっと多くの魔力量を測れる計測器も存在するらしいので、魔道具店の店員をうちの屋敷に呼ぶことにした。てかお父様に話して呼んでもらった。
「先日は調理器具の最新版をご購入いただきまして大変ありがとうございました。今日はどのようなご用でしょうか?」
魔道具店の店主自ら来てくれた。
ちなみに、調理器具とはコンロみたいなやつだ。火加減を細かく調整できるようになって料理長が喜んでいた。
「今日はうちのマリアが欲しいものがあるそうだ。マリア、お前からお話ししなさい」
「はい、お父様。こんにちは、マリアと申します。わざわざご足労いただきまして申し訳ございません。私が探しているのは魔力量の計測器で、できるだけ多くの魔力量を測れるものです」
「これはご丁寧に。痛み入ります。そうですね。今うちの店にある計測器では子供用、大人の女性用、大人の男性用の3種類がありまして、できるだけ多くということであれば大人の男性用ということになりましょうか」
これは予想だが、子供用が最大50、大人の女性用が最大70~80、大人の男性用が最大100ってところじゃないかな?体重を考えると。
うむ、少なすぎる。いや普通はこれで十分なんだよな。
「色変化の段階は10段階で良いのですが、大人の男性用の3倍いや5倍まで測れるようなものはないですか?」
「うーん、お時間さえいただければ特注品として作成することは可能です。しかし、それほどの魔力量をお持ちの方をお見掛けしたことはないので、いささかムダではないでしょうか」
まぁそう思うだろうな。魔法陣が存在しなければ意味のない計測器だ。
「まずは特注品として作成した場合のお見積りをいただけますでしょうか」
値段次第だよな。お父様が代金を出してくれるかどうか分からんし。
んで、結果的にはそんなに高くなかった。既存の商品の5割増しってところだ。
お父様の了解ももらってすぐに発注。納品は一か月後になった。
大人の男性用の5倍で作ってもらったので、多分500の魔力量までは計測できるはずだ。
計測器が届いた日の夜更け。
いつものこっそり実験タイムだ。
計測器の柄を握ってアイテムボックスを発動すると、白色から濃い赤に変化した。10段階が魔力量50ずつ変化するので、濃い赤は200ってことだ。おー、完璧です。
鑑定魔法も試してみたが、白色のまま全く変化しない。そりゃ鑑定魔法は10だからね。正しく動作しています。
さて、いよいよこれで飛行魔法の計測に入れるよ。
ちょこちょこバグ取りを続けていた飛行魔法の魔法陣(現在RC2…というか、もはやリリース版と言っても過言ではない)を使って、100グラムのぬいぐるみを浮かせる。
計測器が白色から濃いピンクになったので、発動維持に用いる魔力量は100ってことになる。予想よりも少ない。
ただ、飛行を続けていると徐々に計測器の色が変化しているので、魔力吸収は続いているようだ。5分飛ばした時点で薄い赤まで変わったので、1分あたり10を使用していることになる。
全くバッファリングに問題はない。
では次は1キログラムの枕だ。
重量が10倍になったわけだが魔力量はどうだろう?まさか1000にはならないよね?またブレーカーが落ちちゃうよ。
計測器の色は濃いピンクつまり100で、さきほどと変わらない。しかし、1分で濃い赤になったため、1分あたりの魔力吸収量は100だな。くそっ、10倍かよ。
でもバッファリング自体は問題ないようだ。
この結果から推測できるのは以下の通り。
・起動に必要な魔力量:2
・発動維持に必要な魔力量(初期化):100
・発動維持に必要な魔力量(飛行維持):対象物の重量(キログラム単位)×100/分
もしも体重30キログラムの人が飛行する場合、1分で3000の魔力量が動くことになるが、おそらくバッファリングが間に合わない。体重30キログラムの人の最大魔力量は30だから、さすがに100分の1のバッファメモリでは供給が途絶えるおそれがある。
飛行時間的には10分の1の時間、つまり6秒くらいが限界じゃないかな?これなら飛行維持に必要な魔力量が300になるからね。
…って、たったの6秒?短すぎっ!実用性ねぇなぁ。
人間を飛ばすのはあきらめたほうが良いかもしれん。落ちるの怖いし。
まてよ。考え方を変えて、敵兵一人を飛ばすってのはどうだろう?鎧付きで100キログラムくらいある人間を2~3秒上空に移動させれば、落下の衝撃で倒すことができるんじゃないか?
いや、効率が悪すぎて使えないだろ。燃費の良い攻撃魔法って、魔法陣の中にはたくさんあるんだから。