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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(4年目)
261/303

261 ハルナ平原会戦⑧

 共和国軍が撤退に移ったけど帝国軍も追撃する余裕はない。どうやら今回も引き分けかな。そして引き分けは帝国軍にとって勝ちと等しい。

 航空戦のみの戦闘結果は以下の通り。

・来襲した航空魔道具:52機

・撃墜した航空魔道具:9機(アレンが3機、ミカ様が6機…往路5機+復路1機)

・投下された石:220個(44機×5個)

・投下された石による死者数:21名

・投下された石による負傷者数:178名


 共和国軍の撤退する(さま)を眺めていた私に、シゲノリ大佐が小声でこっそりと話しかけてきた。ちなみに二人とも崖の上に腹ばいになっていて、私は艦砲魔道具(シップガン)を、シゲノリ大佐は望遠鏡を持っている状態だ。

『サクラ、その魔道具は3年前のブレーン会戦で使ったものと同じものなのかい?』

『いいえ、あのときの爆発威力の14分の1くらいの規模ですよ。かなりしょぼかったでしょう?』

『確かに威力はかなり抑えられていたようだが、それ以外は似ていたな。あ、まさかシンハ皇国の第二陣がやってきたとき、逃げようとした船を攻撃したのは…』

『はい、正解です。この魔道具は艦砲魔道具(シップガン)と言いまして、王国籍の練習船である「カトリ」と「カシマ」にそれぞれ10門ずつ搭載していますよ』

『練習船じゃなくて、もはや戦艦だろう、その二隻。その魔道具も帝国への供与は難しいんだろうな』

『もちろんです。国王陛下の許可をいただくことができれば、提供しても構いませんけどね』

 がっくりとうなだれて気落ちした感じになっているシゲノリ大佐。しばらくして、ぼそっとつぶやいた。

『うーん、もう思い切って貴国へ亡命しようかな…。シャルロッテ様もいることだし…。私ができる仕事を何か与えてもらえるだろうか?』

『帝国で積み上げたキャリアを捨てることはないですよ、もったいない。亡命ではなくて、帝国籍のまま王国に滞在するというのはどうです?』

『そんなことができるだろうか?』

『王国内に帝国の大使が常駐する(やかた)、いわゆる大使館を置くんですよ。その大使館の大使か駐在武官にでもなれば王国に住むことができますよ』

 この世界には大使という役職はあるんだけど、そのつど外国に出向いていく存在なんだよね。私がそうだったように。

 外国に常駐する大使館という新たな仕組みを作る。これを提唱できるのはおそらく私だけだろう。なにしろ、私は王国の国王陛下と帝国の皇帝陛下のお二人に奏上できる立場だからね。

 シャルロッテさんとシゲノリ大佐のために一肌脱いでやるか。もちろん、この戦争が終わってからになるけどね。

『将来の希望が生まれたな。その未来のために今を頑張るとするか』

 シゲノリ大佐のモチベーションも復活したようで良かったよ。


 この戦闘の翌日、再びニミット少佐が軍使としてやってきた。今度こそ休戦(一時的でなく永続的な)の申し出かな?

『現在のお互いの支配地域を暫定的な国境線とすることを認めていただけるのであれば、共和国としてはこれ以上の進軍は行わない』

 やはり休戦の申し出だったよ。艦砲魔道具(シップガン)の威力を見せたのが、その決定打になったのかもしれないね。

 それにしても新たな国境線って、軍司令官のノーギル侯爵の権限で判断できる問題なのかな?皇帝陛下の裁可が必要なんじゃないか?


 通信魔道具で皇帝陛下の判断を仰ぎ、攻め込まれた形での決着は納得いかないものの、この休戦を受け入れることになった。

 現在の両国の陣地が講和までの暫定的な国境線となり、その間の幅2キロメートルの領域(つまりハルナ平原)はDMZ(非武装地帯)として軍の侵入を禁止するエリアとなった。

 話し合いがまとまり、最後に雑談の調子で共和国のニミット少佐が発言した。

『最後の我が軍への攻撃は、グレンテイン王国が開発したという地雷なるものを真似(まね)たものだろうか?』

 これにはシゲノリ大佐が答えた。

『ああ、地雷を完全に複製することはできなかったので、威力は10分の1程度だがな』

『なるほど。なかなか脅威度の高い兵器をお持ちですな。しかもできるだけ使わずに温存していたとは余裕のあることで』

 この会話も物陰に隠れて、こっそりと聞いていた私だった。無理な体勢で盗み聞きをする私に対して、アレンが不審者を見るような目を向けてきたけどね。だって気になるじゃないか。あ、そうだ。今度通信魔道具を応用して「盗聴器」でも作ろうかな。


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