026 魔力量の計測器②
ジョゼフ先生からお借りした魔力量計測器を見ている。
まるで片手鍋にしか見えない。
右手で柄の部分を持って、魔力を右手から外へと出す。すると鍋本体のふたの部分が白色から別の色へと変わっていくのだ。
【白→薄いピンク→濃いピンク→薄い赤→濃い赤→薄い緑→濃い緑→薄い青→濃い青→薄い紫→濃い紫】と変わっていくということが取扱説明書に書いてあった。
途中経過が光の3原色であるRGBなのは覚えやすくてありがたい。
色の変化が10段階ってことは、一つの色の魔力量さえ分かれば測れる最大値も分かるかな?
さっそく試してみる。
計測器を右手に持ちゆっくりと魔力を放出していく。見ていると、色がグラデーション変化していって面白い。
私の最大魔力量を出した結果、色は薄い緑から濃い緑に変化するくらいで止まった。
ふむ、おそらく色一つは魔力量5ってところだろうか。
ならば、この計測器の計測可能最大値は50ってことになる。少なっ!
体重50キログラムの人の魔力量じゃん。
魔力が枯渇したため、翌日になってから次なる実験を行った。
次の実験はこの計測器を持ったままで魔法陣を使って魔法を発動することだ。
鑑定魔法を発動してみると、なんと色が濃いピンクに変わった。鑑定魔法の発動維持に使う魔力量は10だったはずなので合ってるよ。やたっ、これで体内からの出力だけでなく、吸収(つまり体内への入力)時にも計測できることが分かった。
ご都合主義的展開って感じだが、私的にはとてもありがたい。
んじゃ、ちょっと一服しようかね。アイテムボックスに常時ストックしているお菓子を出して食べちゃおう。時間経過無しだから非常食とかお菓子なんかを入れてるのだ。
うっかり計測器の柄を握ったまま、アイテムボックスを発動すると高速で色が変わっていき、あっというまに濃い紫になりそのままフリーズした。
あ、壊しちゃった?やっべぇな借り物だよ、これ。
50までしか測れないものに200の魔力が流れ込んだんだからそりゃ壊れるわな。うー、弁償するしかない、値段はいくらなんだろ。
その翌日の授業のとき、ジョゼフ先生に謝罪した。
「先生、お借りした魔道具なんですが、壊してしまいました。ごめんなさい。弁償させていただきますのでお値段を教えてください」
「ほう、この魔道具は仕組みがそれほど複雑ではないので、めったに壊れることは無いのですがね。ちょっと拝見」
そう言って魔道具を手に取って調べ始めたジョゼフ先生。
「あぁ、壊れたわけではないようです。許容量以上の魔力が流れて安全装置が働いたため止まってしまっただけですよ」
何?家電を使い過ぎて電気のブレーカーが落ちたようなもんか?
ジョゼフ先生がどこかのスイッチ的な部分を操作すると、魔道具は濃い紫でフリーズしていたのが初期値の白色に戻った。
はー、良かった。
「それにしても安全装置が働くほどの魔力量をマリア様はお持ちなんですね。驚きました」
いえいえ、そんなわけないじゃないですか。真実を言うことはできないので、笑ってごまかす私であった。