257 ハルナ平原会戦④
最初の戦闘から一週間、ようやく共和国軍に再び侵攻の兆しが見えた。ずっと陣地構築ばかりやってたんだよね。
なお、アンチエアクラフトガンの魔法陣は完成し、準備万端いつでも来いやぁって感じになっている。
対空射撃の担当については、ミカ様が精密射撃装置で狙うのは前回と同じだ。あと、アレンと私が高射砲(アンチエアクラフトガンの魔法)の担当となる。
敵陣地の後方から十字型の物体が上昇を開始した。航空魔道具の編隊だ。前回とあまり変わらない数がいそうだな。ざっと100機くらいか。損害分が補充されたのか、故障機を再び飛べるように修理したのかは不明だけど、いずれにしてもかなりの脅威だ。
陣地上空できちんと編隊を組んだあと、こちらへ進撃を開始してきたけど、なんだか前回よりも高度が高いように思える。
アレンやシゲノリ大佐との打ち合わせでは、アンチエアクラフトガンでの攻撃を1500メートルくらいの距離で開始することになっている。ミカ様の攻撃については距離500メートルくらいから始めてもらう予定だ。つまり遠距離攻撃はアレンと私で、近接戦はミカ様が担当ってことだね。
ただし、アンチエアクラフトガンによる高射砲弾を真上に撃ちあげることはできない。散弾が真下に雨のように降り注ぐことになるからね。近接した場合は前回と同様、アレンと私は自動連射装置で攻撃する。まぁこれも真上には撃てないってのは同じだけど。
数十秒後、敵航空部隊が所定の位置まで飛行してきたため、アレンと私は高射砲の射撃を開始した。
数秒後に敵の進撃路の手前で爆発が生じた。1機の航空魔道具がその爆発に突っ込んでふらついたかと思うと墜落した。今の戦果はアレンだな。
その一瞬後、敵のはるか上空で爆発が発生した。意味ねぇ、誰だよ今のは…って私だよ。なんでいつも私は運用が下手なのか、開発者なのに。いや、私が下手なんじゃない。アレンが天才過ぎるんだよ。
アレンは次々と射撃を繰り返し、1回の爆発で最低1機は落としている(一度に2機を落とすことも)。私はというと、何度か修正しながら射撃を繰り返し、ようやく1機を撃墜した。いやはや当たらねぇ。なぜ当てられるの?おかしいよ、変態っぽいよ、アレン。
魔法陣による魔法はいくら魔力消費量が少ないとはいえ、さすがに無限に撃つことはできない。敵の航空部隊が500メートルまで近付くまでにアレンと私で各20発を撃ち出し、アレンが22機、私が3機を撃墜した。うーん、3割撃破は無理だったか。てか、私が下手過ぎだ。
500メートルの距離から味方の前衛部隊の直前までは、ミカ様の出番だ。前回と同様に的確に撃墜している。多少高度が高くても関係ないね。結局、ミカ様単独で14機を撃墜したよ。すごい技量だ。
なお、自動連射装置は敵の高度が高すぎて使えなかった。
結局57機の陣地直上への侵入を許してしまい、投下用魔道具を同じ数だけ落とされてしまった。しかし、特に前回と異なる工夫はしていなかったようで、防御結界装置によって火炎を防ぐことができているようだ。しかも今回は不発弾、つまりファイアウォールの魔法が発動しなかったものも一定数存在した。おそらく想定高度よりも高い位置から投下したせいで、着弾時に壊れたみたい。間抜けだな。
あと、敵の帰路においても、ミカ様の攻撃でさらに5機が撃墜された。
あとで集計された航空戦の戦果は以下の通りだ。
・来襲した航空魔道具:96機
・撃墜した航空魔道具:44機(アレンが22機、ミカ様が19機、私が3機を撃墜)
・投下されたファイアウォールの魔道具(通称、投下用魔道具)の数:57個(このうち不発は22個)
・投下用魔道具による負傷者数:43名
敵からしてみたら戦果と損害が全くつりあってないね。コスパが悪いってやつだ。
しかも負傷者43名は治癒魔道具ですぐに復活するので、こちらの損害は実質ゼロだよ。