256 アンチエアクラフトガンの開発②
爆発ではなく破砕についてはストーンキャノンの開発のとき(高等学院3年生のとき)に実験済みだ。さらにシップガンの魔法陣を改造するだけということもあり、一日でアンチエアクラフトガンの魔法陣を描き上げたよ。これを紙に描き写したものをアレンに渡して、魔法陣を覚えるように頼んだのは言うまでもない。
魔法陣完成の翌日、司令部後方の敵陣地から見えない位置に自動車で移動し、そこで実験することになった。
同行者はミカ様、アレンそれにシゲノリ大佐だ。
ただし魔法陣による魔法発動方法を知っているのはアレンのみなので、ミカ様とシゲノリ大佐は単なるオブザーバということになる。この場所は陣地後方で安全ということもあり、護衛の特務小隊の同行については断った。できるだけ他人には見せたくないしね。
『シゲノリ大佐、アカネちゃん。今から見ることは秘密にしておいてね。私は新たな魔法を開発できるし、それを無詠唱で発動できるんだよ。あと、サネユキも同じように発動できるの。これから敵の航空部隊に対抗するための魔法を実験するから、よろしくね』
ミカ様は特に驚いていないけど、シゲノリ大佐は驚いているね。そりゃそうか。
『うーむ、サクラはやはり特別な存在だな。敵に回してはいけない人間だということがあらためて分かったよ。いや本当に人間なのかどうかも疑わしい』
失礼な!人間だよ。悪魔じゃないよ。
つい威圧を込めて睨みつけたくなったけど、そこはなんとか自重した。
『では撃ちます』
私は右手を上空に向けてかかげ、魔法陣を発動させた。時限信管は1秒にセットしている。
1秒後に上空で爆発が発生し、球状にうっすらと何かが拡散した様が見えた。
『あの拡散したものは何だい?』
シゲノリ大佐の問い掛けに答えてあげた。
『直径6ミリメートルの粒が100個ほど高速で散らばった結果です。装甲板を抜けるほどの硬さはありませんが、生身の人間ならば貫通するはずです』
『それでは僕も試してみるよ』
アレンが右手をかかげ高射砲弾を撃ち出した。
私のときよりも低い高度で、より早く爆発が生じた。秒数パラメータを小さくしたな。
『今のは0.5秒くらいかな?』
私の質問にアレンが答えた。
『うん、その通り。よく考えると、あまりに短いタイミングでは発射できないような設定、つまり安全装置を付けるべきじゃないかな?』
『あ、忘れてた。0.1秒なんかを設定したらかなり危険だね』
まじでやばかった。うっかり0.001秒なんかを設定して発射したら自爆になっちゃうよ。
何度か試していくつかの問題点を抽出し、最初の発射実験は終了した。まぁ成功と言っても良いだろう。帰り道、シゲノリ大佐がすっかり無口になってしまったよ。ショックが大きかったのかな?