246 シゲノリ中佐の謁見
陛下との謁見は三日後に設定された。
私とミカ様だけなら翌日でも良かったんだけど、さすがに外国の特使を迎えるのには準備が必要だったみたい。
謁見は陛下のお言葉から始まり、型通りの挨拶を終えたあとすぐに本題に入った。なお、シゲノリ中佐に加え、私とミカ様も一緒に参内している。
「ミカ・ハウハ子爵とマリア・フォン・シュトレーゼン伯爵令嬢を帝国にお招きし、対共和国戦にご助力いただきたく伏してお願い申し上げます」
シゲノリ中佐の発言に渋面になる陛下。
「うーむ、ミカ嬢は我が国の子爵家当主であり、たとえ義勇兵であっても参戦されると外交的に困ったことになるのだ。それにマリア嬢は『王国の至宝』とも呼ばれる優秀な人材であり、余人をもって代えがたいため、その身を危険にさらすわけにはいかぬ」
そうなるだろうなぁ。予想通りの展開です。てか、その二つ名は陛下にまで浸透しているのか…。
ここで私はずっと考えていた腹案を提示した。
「陛下、恐れながら申し上げます。ミカ様を一時的にですが王国貴族の身分から外してはいかがでしょうか。さらに私は髪色を変えて変装することで身元を隠し、アレン・フォン・リヴァストなどの信頼できる護衛を付けて危険が及ばないように致します。それで私たちの参戦をお認めいただきたく、お願い申し上げる所存でございます」
攻撃用魔道具の供与が不可能な状況下で共和国軍の勝ち過ぎを防ぐには、これが最適解だと私は思っている。もちろん、多少の危険は織り込み済みだ。
それに通信魔道具や治癒魔道具を秘密裏に輸送するのも、私のアイテムボックスがあれば簡単だしね。
結局、以下の条件付きで陛下の許可が得られた。
・ミカ・ハウハ子爵の子爵位を剥奪するが、これは一時的な措置である(王国への帰国後、すぐに子爵位に戻す)
・王国軍から護衛を付けることはできないので、帝国軍から優秀で信頼できる護衛を最低1個小隊は付けること
・アレン・フォン・リヴァストをミカ様と私の護衛とすること
・シゲノリ中佐は常に私たちと一緒に行動すること
・私は定期的に通信連絡を王宮に入れること
・もしも私たち(ミカ様、アレン、そして私)に帝国が危害を加えるようなことがあれば、その時点でグレンテイン王国はガルム帝国に対し宣戦布告する
・帝国側の条件に付いては、帝国皇帝の名のもとに確約すること
ずっと渋面だった陛下がここでふわっと微笑んだ。
「マリア嬢、また例の設定で帝国内を行動するのかな?今回はシュトレーゼン家の紋章をかざすことはできぬぞ。ふふふ」
陛下には帝国の悪徳領主を成敗しながら旅したことを以前に語っておいたんだよね、笑い話として。そうか、今回は身元を隠さないといけないから、シュトレーゼンの紋章は見せられないね。まぁ、1個小隊の護衛が付くんだから問題ないと思うけど。
「帝国の平民に偽装しますので、例の設定で行動し、あくまでも帝国民として参戦致す所存でございます。必ずや朗報をお届けします」
「うむ、期待しておる。いつもそなたばかりに負担をかけてすまぬな」
確かに私は忙しすぎるんじゃないか?アレンとの婚約は発表されたけど、これじゃ結婚の日取りも決まらないよ。もっとも、いつも自分から首を突っ込んでいるんだけどね。