240 飛行機械の開発③
艦砲魔道具の発射テストが終了したので、そのまま降りてくるかと思いきや、飛行機械が上空でふらつき始めた。
え?何かあったの?
左右への旋回や前進に後退などフラフラと危なっかしい挙動が連続している。ただ、ピタッと安定したと思ったら、ゆっくりと下降してきてきれいに着地した。
私は飛行機械に駆け寄り、何があったのか聞いてみた。
「アレン、お兄様、上空で危ない感じになっていましたけど、不具合が生じたのでしょうか?」
「ごめんごめん、アレン君に操縦させてみたんだよ。いや、なかなか筋が良いね。すぐに一人で飛べるようになるんじゃないかな?」
はぁー、もう事前に言っておいてくださいよ。びっくりしたよ。
「マリア、面白いよ、これ。僕も本格的に操縦訓練をしてみたくなったよ」
複座にして両方に操縦桿を付けた効果だね。後席の教官と前席の訓練生って感じで操縦訓練できるわけだ。
うん、パイロットを増員するにはとても役立つね。考えてもみなかったけど。
「艦砲魔道具の弾道特性はどうだった?狙ったところに命中したのかな?」
「ああ、わずかに手前にそれたかな。やはり砲弾が少しだけ風の影響を受けたようだね」
なるほどね。まぁそこは射手のテクニックでカバーしてもらうしかないかな。
このあと、希望者には飛行訓練として飛行機械の前席に搭乗してもらい、お兄様という教官のもと上空で操縦させてもらったようだ。
てか、私以外の人が全員操縦を経験したんだけど、私だけは乗せてもらえなかった。なんでよ、開発者なのに!
「いや、君の自動車の運転を見てみると、さすがに飛行機械の操縦はさせられないかなぁ」
「ええ、おそらく墜落しますわね。シュミット様が後席にいたとしても」
アレンやルーシーちゃんがひどい。自動車の運転も下手じゃないよ。
開発の王命が下ってから約五か月、季節は夏の終わりでそろそろ秋の気配が漂っている。ようやく完成に近づいた。いや、もはや完成したと言っても過言ではない。
共和国からの飛行機械の発表は行われていないけど、もしかすると死傷者続出で開発が頓挫したのかもしれない。
我が国が世界初の飛行機械の発明という栄誉をつかめるかな?
なお、スペックは以下の通りだ。
・横幅1メートル、全長4メートル(ローター含まず)
・ローター直径5メートル
・高さ3.5メートル(ローター部を含む)
・重量200キログラム(軽くて丈夫な素材を多用したため、かなり軽量化できている)
・乗員2名(前席は射手、後席は操縦手)
・武装は艦砲魔道具1台
・推進器は6台使用
・二重反転式ローターを採用
・最高速度は時速80キロメートル
・航続距離は160キロメートル(連続飛行時間は2時間)
・上昇限度は不明(温熱器や酸素吸入器が無いので2000メートル程度だろう)
ジャイロが無くてもローター自体のジャイロ効果で安定しているし、なかなか素晴らしいものを開発できたんじゃないかな。自画自賛。