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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(4年目)
238/303

238 飛行機械の開発①

 とりあえず飛行機械のラフデザインを描いてみた。

 コックピットは単座ではなく縦列複座(タンデム)にして階段状にする。前が攻撃担当で、後ろが操縦担当だ。ただし操縦(かん)は前後どちらにも付けておく。遠距離移動の際に操縦を交代できるようにね。

 コックピットの下にあるのが着陸脚でとりあえず固定脚で設計しておく。将来的には引込脚(折り畳み式)に改良したいけどね。

 コックピットの上にはX字の形に支柱を出して、その先端から風を噴出させる。共和国のように十字にしなかったのは前方への攻撃時に邪魔になるから。

 武装は艦砲魔道具(シップガン)を一つ据え付けるだけだ。でもこれで十分だろう。

 コックピット下部から左右に張り出した支柱の先端に後ろ向きに推進器を取り付け、前方への移動時に用いる。戦車のように左右それぞれのスロットルを調整して進行方向を変えるわけだね。

 って、共和国製のものにめちゃ影響受けてるやん。パクリ疑惑が発生しそうなデザインだけど、成功例を参考にするのはよくあることです。


 問題は下向きに風を噴出する機構なんだけど、新たに一つの魔法陣を描いて、四か所から風を出すようにする。傾きをセンサーで検出したものを魔法陣にパラメータとして入力し、風の噴出量を自動調整する。

 傾きセンサーだけど、コの字型の鉄パイプを十字に組み合わせて水を入れておき、そこに浮きを浮かべる。浮きに細くて軽い棒を付けておくことでその棒の上下で傾きが検出できるはずだ。

 棒が鉄パイプからより長く出る場合、その方向へ傾いているってことになるので、そっちの噴出口の風の噴出量を増やせば良い。


 魔法陣のI/O部分とセンサーを連動させてとりあえず実験機が完成したのが一か月後だった。

 前後の座席に重りを搭載し、コックピットからケーブルを伸ばして操作を行う。人を乗せて実験するのは危険だからね。

 最初は2メートルくらい上昇した位置で安定していたんだけど、少しずつ傾きを修正するつどどんどん揺れが大きくなっていって、最後は暴れ馬のように跳ね回っていたよ。

 傾きを検出してから風の噴出量を増やすまでのタイムラグの問題かな?これなら手動で制御したほうがまだましだ。

 このあと、少しずつ出力を絞ってなんとか軟着陸させたけど、着陸脚が少し壊れてしまった。


 調整を続けること二週間、多少はましになったもののやはり難しい。この方法では実現不可能というのが最終的な結論か。

 うーん、ダメだ。共和国から飛行機械を輸入できれば分解して調べることもできるんだけどな。なお、共和国ではまだ全世界に向けての飛行機械の公表は行われていないし、帝国への逆侵攻もしていない。

 多分、共和国でも飛行機械は未完成なんだろう。絶対同じ個所で引っ掛かっているはずだね。


 いっそのこと、飛行姿勢の安定化はドローン方式ではなくヘリコプター方式にしてみるか。

 回転翼(メインローター)を回す方法はローターの先端に横向きに取り付けた推進器で行い、回転翼(メインローター)の回転によって下向きの風を起こすわけだね。この回転がジャイロ効果になって姿勢が安定するんじゃないかな?竹とんぼを飛ばしてもひっくり返ったりしないよね。

 でも回転翼(メインローター)の反作用でコックピットが逆方向に回転してしまうので、それを抑えるのに尾部に横向きの回転翼(テールローター)が必要になる。

 うーん、機構が複雑化するし、大型化するなぁ。

 そうだ!同軸上の回転翼(メインローター)を2基にして一つを時計回り、もう一つを反時計回りにすることで反トルクを打ち消しあうようにしよう。そう、二重反転式ローターだね。これならテールローターが不要になるし、推進器も回転翼(メインローター)用に4台、前方及び後方への移動用に2台となり、当初案と変わらない推進器の数になる。

 ちなみに旋回は二つの回転翼(メインローター)の回転数を変えることで行う。反トルクを利用するわけだ。

 前方及び後方への移動に用いる横向きの推進器の取り付け位置はコックピット下部ではなく、上部つまり回転翼(メインローター)のすぐ下に配置する。

 操縦系統については、操縦(かん)を横に倒すと回転翼(メインローター)の回転数をわずかに変更することで機首を左右に振るようにして、前に倒すと後方へ、後ろに倒すと前方へ風を噴出することで前進・後退を行う。機体が傾くことによって回転翼(メインローター)の角度も変わり、それが推進力にも繋がるのは前世のヘリコプターと同じだ。

 あと操縦(かん)以外に、回転翼(メインローター)2基の出力を同時に調整するスロットルレバーが一つ必要だね。


 この案に基づいて設計図を引き直し、試作機が完成したのがさらに一か月後だ。かなりのスピード開発だよ。なにしろ王命だからね。

 回転翼(メインローター)先端の推進器から風が噴出し、ゆっくりと回転翼(メインローター)2基がそれぞれ逆方向に回り始めた。すぐに回転翼(メインローター)が高速回転に達した試作機は、ゆっくりと上昇を開始した。もちろん人は乗っていないよ。

 地上2メートルでホバリングした試作機は飛行姿勢がブレることもなく、極めて安定している(ように見える)。

 ケーブル長の関係で前進・後退の実験はできないけど、旋回に関しては問題ないようだ。これならテストパイロットが乗った状態で実験できるかもしれない。

 この方式のメリットは信頼性の高い推進器を6台組み合わせただけなので、新たな魔法陣を描く必要がないということだ。あれ?でも他国にも真似されやすいということになるから、デメリットになるのかな?

 なお、前世のヘリコプターのように回転翼(メインローター)を取り付けている軸自体を傾けることで前進や旋回を行うのは、機構が複雑すぎて大変なので採用しない。将来的には考えてみても良いけど、とりあえずはできるだけシンプルに作ってみよう。


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