235 陛下と密談
翌日の午後、私は王宮へ出向いて陛下と二人きりで会談した。王宮内に他国の密偵がいるかもしれないし、できるだけセキュリティレベルを高くしておきたいからね。
「陛下、マリア・フォン・シュトレーゼンでございます。本日はお忙しいところお時間をとっていただきまして、誠にありがとうございます」
「うむ、昨日の通信では共和国に不穏な気配とのことだったが、どういうことだね?」
私は帝国皇帝から聞いた話を陛下にも伝えた。
「可能性の話であり、確定的な情報ではございません。ただ、王国の情報網に何か引っ掛かっていないかと思いまして」
「実は上がってきた情報の中に一つ興味深いものがあったのだが、荒唐無稽な話ゆえガセネタだろうという判断になっているものがある」
「それはいったい何でしょう?私が聞いても大丈夫なものならば、ぜひお教えいただきたく」
「うむ、問題は無い。馬鹿馬鹿しい話だが、共和国では空を飛ぶための魔道具を開発したとのことだ」
え?まさか先を越された?
「それは不可能ではありません。実は私も四年前にうちの職人に対し、無期限での開発を指示したことがございます。色々と忙しいため、ほとんど進んでいないようではありますが」
「なんと、それでは共和国が開発したというのも嘘とは言えぬのか。なるほど、それは戦局を左右する魔道具になりそうだな。共和国内の主戦派が帝国に逆襲をしたくなるのも無理はない」
でも空から何をするつもりだろう?火薬があれば爆弾が作れるし、それを空から投下することで攻撃できるけど、爆弾も銃もまだ存在していないんだよね。
もしかして詠唱魔法で攻撃する?でも魔法が届く高度から攻撃する場合、弓矢も射程内なんだよ。
弓矢の届かない高度から何かを投下すれば一方的な攻撃が可能になるけどね。でも石くらいじゃ殺傷力はほとんど無いしな。
うーん、分からん。
できればもっと詳細な情報が欲しい。
・動力は何なのか?
・翼による揚力で飛行するのか、ドローンやヘリコプターのように風の推進のみで飛行するのか?
・積載量は?
・武装は?
陛下にそれらを伝えたところ、密偵の統括者に指示して調べてくれることになった。統括者?誰だろ。私の推測では逓信部長のシャミュア伯爵じゃないかと睨んでるけどね。そう、ルーシーちゃんやロザリーちゃんのパパさんだ。
あと、しばらく共和国行きを延期することになったけど仕方ないね。帝国ではなく王国に牙をむく可能性もあるし。いや、まさか。