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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(3年目)
227/303

227 王国籍の船③

 ミカ様が精密射撃装置(ライフル)を構えてスコープを覗いている。有効射程外なので届かないけどね。

 アレンと私は望遠鏡を使っているけど、ミカ様は(かたく)なにライフルスコープしか使わないのだ。プロ狙撃手(スナイパー)のこだわりか?いや、プロじゃないけど。

「マリア様、私も砲撃を試してみたいのですがよろしいでしょうか?」

「うん、この船の責任者はヒューラー船長だから、船長に聞いてみないとね」

 ヒューラーさんが驚きに目を見張っているけど、当然のことだよ。私も船長に従うよ。


「大使閣下、ありがとうございます。ハウハ子爵様、許可させていただきます。おい、皆様を艦砲のフロアにご案内せよ」

 ヒューラーさんが部下の一人に命じてくれた。うん、実は私も撃ってみたくて、うずうずしているよ。ちょっとゲームっぽいよね。


「船の中心に最も近い2番砲から4番砲が、船の動揺の影響を受けにくくて良いでしょう」

 外洋は波があって常に揺れている。幸いにも私たちの中に船酔いを起こす者はいなかったんだけど、砲撃時にはこの揺れは厳しいね。

 私が2番砲、ミカ様が3番砲、アレンが4番砲について射手から操作説明を受けた。まぁうちの工房製なので知ってるんだけどね。リヴァスト領の荒野で砲撃実験もしたし。

 リヒャルトさんはここにはおらず、機関室にいるらしい。って魔道具職人だろ、あんた…。相変わらず自由な人だ。


 船は最大船速で走っており若干面舵気味で、標的船の回りを一定の距離をたもって時計回りに回っているという状況だ。

「それではまずは私からいきますね」

 私はまず直接照準で発射してみたんだけど、かなり手前の海上に着弾して水柱を吹き上げた。標的船は動いていないので未来位置を予測して撃ち出す必要はない。考えなければならないのは仰角だけだ。

 二射目は標的船の頭上、空に向かって撃ってみた。着弾位置は標的船を飛び越してかなり遠方に着弾している。む、難しい。

 これ、ブレンダでも難しいんじゃないの?あのときは揺れない陸上からだったので命中させることができた…ってのもあるだろうし。

 本来の射手の人も微笑みながら見ている。そんな簡単に当てられてたまるかよって顔だ。


 二番手のアレンも数回試したものの当てられなかった。

 最後はミカ様だ。

 熱心に艦砲発射時の角度と着弾位置を見比べていたけど、ここで【弓術】の才能を発揮することができるだろうか?

 幼い子供が遊園地の遊具を操作するのを見るような微笑ましい光景だけど、最初の一発目はいきなり至近弾となった。

 ミカ様自身は命中させられなかったことに悔しそうだったけど、周りの私たちは全員驚愕ですよ。誰よりも近い位置に着弾したからね。

 そして二射目でさらに驚いた。標的船上で爆発が発生したのだ。水柱ではなく火柱を噴き上げた標的船は、しかし燃え上がることはなかった。可燃物をほとんど撤去しているらしい。

 さらに三射目はまたも至近弾だった。これでまぐれ当たりじゃないことが分かったよ。すごいよ、すごすぎる。


 伝声管からヒューラーさんの声が聞こえてきた。

「今の射手は誰か?見事な砲撃だ」

「はっ、ミカ・ハウハ子爵であります。三射中一射は直撃弾、二射が至近弾となっております」

 伝令役の人が答えていたけど、本当に見事な砲撃だったよ。距離3キロメートルは第二次世界大戦時の感覚だと至近距離だけど、測距儀や方位盤も無いという悪条件下でのこの成績は本当に大したものだ。

「マリア様やアレン様の砲撃の際、波による船の動揺や風速と風向をつかめたおかげですよ」

 謙遜するミカ様。

 いやいや、この船は標的船を中心とした円周上を動いてるんだから、風向きは刻々と変化してるはずだよ。天才砲術家かよ。ブレンダと勝負させてみたいよ。


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