225 王国籍の船①
王国籍の船は他の8隻(ルクス公国籍3隻とガルム帝国籍5隻)とともに港に接岸されていた。港にはほかにも漁船や小舟などもあったけど、やはり3000トン級の船9隻が並んでいる姿は存在感がすごいな。
端っこにあるのがうちの船で、近付いていくとリヒャルトさんが甲板上にいるのが見えた。なにかの打ち合わせ中みたいで、誰か(技術派遣団の人か自動車化魔道小隊の人?)と話している。
私は岸壁から大声をあげた。
「おーい、リヒャルトさーん。お久しぶりー」
気付いたリヒャルトさんが顔を綻ばせて満面の笑みを浮かべた。
「お嬢様。お久しぶりです。すぐにそちらに降りていきます」
「いや、私たちが船に乗り込むよ。そこで待ってて」
私たちは急造のタラップを使って船に乗り込み、甲板上に上がっていった。船内は通路が迷路のようで迷いそうだったけど、とにかく階段を上がれば良いんじゃね?って感じでなんとか甲板上に出ることができたよ。
実はこの船に乗り込むのは今回が初めてだったりする。感慨深い。
ボイラーの火が焚かれているみたいで、煙突からはうっすらと煙が出ているのが見えた。
「お嬢様、この船はすごいですよ。石炭を燃やした熱でボイラーから蒸気を作り出し、そのエネルギーで外輪を回すんですよ。魔道具でも回転運動は発生させられますが、これだけ大規模なものは不可能ですからね。いやー、感動しました」
立ち昇る煙を見上げていたら、やってきたリヒャルトさんに声をかけられた。魔道具でも魔法陣を使えばかなりの運動エネルギーを発生させることはできると思うよ。実験してないけど。
「外輪ってのがちょっと不満だけどね。スクリュープロペラを回すほうが効率的なんだけどな」
言ってしまってから、はっと気付いた。あ、やばい。
「お、お嬢様!そのスクリューなんとかというのは何ですか?教えてください!」
あー、技術馬鹿の人に不用意な一言はダメだったよ。仕方なく絵を描いてスクリュープロペラを説明してあげた。ついでに現状は蒸気レシプロエンジンなんだけど、もっと効率的な蒸気タービンの仕組みも覚えている限り伝えたよ(あまり詳しくないけど)。
私はハードウェアが苦手だから自分で作り出すことはできないけど、アイディアだけ伝えておけばあとは技術者たちが発展させてくれるだろう(無責任な丸投げ)。
この説明に時間を取られたので、艦砲魔道具を見る時間が無くなったよ。本末転倒だ。
明日、日帰りの練習航海に出港する予定らしいので、そのときに便乗して実際に艦砲を撃つところを見せてもらうことになった。楽しみだ。
「マリア、君の知識の源泉はどこにあるんだい?」
呆れたようにアレンが私に言ったけど、それだけは答えられません。秘密厳守、これ重要。