223 ファインラント領の統治
帝都滞在も一週間になり、その間に舞踏会やらお茶会やら貴族関連の行事が多くて疲れたよ。
さすがに王国の大使にちょっかいをかけてくるような度胸のある貴族はいなかったけど、ニタニタ笑いながら好色そうな目で見てくる中年のおやじたちには辟易した。
シゲノリ中佐と掛け合い漫才してるほうが、よほどマシってもんだよ。
なお、ファインラント領の件については、ミカ様やアレンとも話し合った結果、次の条件を提示することにした。もちろん通信魔道具で陛下(グレンテイン王)の了解も得ている。
・帝国貴族となってファインラント領の領主となることは受け入れる
・領地は第二王子殿下を代官に任命して統治してもらう(ただし、それを第二王子殿下が受け入れるかどうかは分からない)
・ミカ様自身はグレンテイン王国で暮らすが、もしものときは帝国からの招集に応じて軍事行動にも参戦する(なにしろ超優秀な狙撃手だからね)
ミカ様によると第二王子殿下の人柄は良いそうなので、懸念があるとすればともにファインラントを脱出した側近たちだね。奸臣なのか忠臣なのか…。
毒となる人物ならば排除しなければならないんだけど、その見極めを行うには共和国の首都ヨークに行って直接面接するしかないだろうね。ヨークは大都会って噂だから、一度観光したいと思っていたのだ。ふふ、旅に出る良い口実になりそう。
謁見の間ではなく応接室で皇帝陛下や宰相さんと上記の件を相談した。
『ふむ、なるほど。確かにまだ幼いミカ殿が治めるよりも、すでに成人している第二王子のほうが適任かもしれぬ。側近が問題だというのもよく分かった。それではこうしよう』
皇帝陛下の案は、ミカ様と私が共和国にあるファインラント亡命政府と接触し、代官の依頼と側近の見極めを行ったあと、問題が無ければこちらの提案通りにことを進めるというものだった。
帝国貴族への叙爵はまだ行わないほうが良いだろうとのこと。第二王子に裏切り者扱いされる可能性があるからね。
会談の締めくくりとして、私は皇帝陛下へ時期についての了解を取った。
『私はこのあと自国へは戻らず、ルクス公国を訪問する予定です。シンハ皇国の第二陣がそろそろやってくるはずなので、その対処です。その件が片付きましたらアメリーゴ共和国へ参ります。それでよろしいでしょうか?』
『うむ、貴殿には色々と面倒をかけるな。まさに八面六臂の活躍だ。本来なら我が帝国の官僚や軍人が行うべきことを代わりにやってくれるのだからな。おお、そうだ!貴殿にも帝国の爵位を進呈しよう。伯爵位でどうだ?』
『いえ、謹んでご辞退させていただきたく。あと、いささか不敬ながら発言させていただきます。ご冗談が過ぎますよ』
『うむ、冗談ではないのだが、まぁ仕方ないか。ただ、余が貴殿に感謝と信頼の念を抱いているのは本当だ。これからも貴殿とは良き関係でありたいものだな』
こっちも同感だよ。帝国の皇帝陛下は話してみると案外良い人だった。やはりコミュニケーションは重要だね。