220 帝都に到着
シゲノリ中佐の話では帝国貴族の9割が悪人だそうだ。貴族になると悪人になるのか、悪人だから貴族になれたのかは分からないけど、悪人率高いなぁ。
アレンに聞くと王国貴族も4割くらいは悪人らしい。いや、そんなにいるんだ…。ショック。
「ヨシテル将軍や私のような平民の出の軍人は、貴族出身のぼんくら将校に日々悩まされていますよ。学生の頃の留学先が王国ではなく共和国だったら、そのまま亡命していたかもしれません」
ほへぇー、帝国も大変なんだな(棒)。
いや、それよりもうちの紋章を見たときのあの領主の反応は何なの?
「王国内でシュトレーゼン家が恐れられているのと同様、我が国でもシュトレーゼンの悪名は響き渡っていますよ。貴族であればシュトレーゼン家の紋章を記憶しておくのは当然です」
え?十数年前の帝国特務小隊殲滅事件なら古すぎるし、規模も小さいからそんなに有名になるほどでもないよね?
シュトレーゼンの悪名?身に覚えがない…。
「シュトレーゼンのというよりマリア嬢の悪名と言うべきかもしれませんが、2年前のブレーン会戦やつい最近のルクス公国防衛戦で果たしたあなたの役割は帝国内に知れ渡っていますよ」
あれ?ブレーン会戦には参戦していないことになっているはずだけど、なんでばれてんの?
「地雷などという架空の魔道具の存在に振り回された恨みはさておき、帝国の情報収集能力を侮ってもらっては困りますな。ふふ」
うむ、ばれてーら。テヘ。
そのあと、大きな街の宿屋に泊まるたび、極めて高確率で似たようなことが起こったのにはうんざりだよ。
ミカ様を狙ってきたロリコン領主には私自ら魔法で鉄槌を下したけどね。腕一本で済んでありがたく思えよ。ああ、でもこれでまたシュトレーゼンの悪名が広まるかも…。
こんなに街の領主を捕まえちゃって統治は大丈夫なのかなと心配になるほどだったけど、王都を出発して一か月後にはなんとか帝都ガルムンドに到着した。
我が国の王都と同じくらいの規模だね。建物の形状や高さも似たような感じで、言葉は違えど文化は似ていることを実感した。
大通りを進んでいくと、自動車が珍しいのか注目されることが多いね。でも、講和が成立してから自動車が帝国へ輸出されるようになったせいか、街中でも他の自動車を見かけることもある。自動車って他国への輸出を規制している製品ではないからね。規制しているのは武器や治癒魔道具、通信魔道具なんかだ。
まっすぐに帝都の中心部にあるお城に向かい、しばらく滞在することになる部屋に通された。三人全員が個室を割り当てられている。
なお、シゲノリ中佐は到着の報告を行うために途中からいなくなった。
部屋の中はめちゃくちゃ豪華で、貴賓扱いであることが分かるよ。ふむ、心理的優位に立とうとするための軽いジャブかな?外交戦はもう始まっているってことだね。