212 ルクス公国を出立
なんかあっという間に、ここまでやってきた目的が果たされてしまった。
監視に一週間、戦闘一日、後処理に一週間って感じで、二週間程度で終わったよ。
まさかこんなに早く終わるとは…。半年くらいの任務だと思っていたのに。
ヨシテル将軍の師団はここに駐屯するらしいけど、シゲノリ中佐は帝国と王国の国境まで私たちに同行する予定だ。
ルクス公国を出立する日、アザミさんとその他の被害者女性48人が全員見送りに来てくれた。
『大使閣下、私たちは身も心もあなた様に救われました。ご恩を返すことができる機会があるかは分かりませんが、もしも私たちでお役に立てることがございましたら何なりとお申し付けください。本当にありがとうございました』
助け出した直後に私の素性を質問した女性が代表してお礼を言ってくれたよ。あと、心を病んでいた女性もいたけど、少しずつ回復しているそうだ。あの処刑方法がショック療法になったのではとの派遣されてきた医師の見解だったけど、どうだろうね。まぁ回復傾向にあるなら良かったよ。
ヨシテル将軍が随員の一人一人に声をかけてくれた。
「アレン殿、大使閣下の護衛、ご苦労だった。時間があれば貴殿とは剣の勝負をしたかったのだがな」
「ルーシーメイ嬢、ロザリー嬢、被害者女性の世話、本当に感謝する」
「ブレンダ嬢、逃げようとした敵船を叩いてくれて助かったぞ」
「ミカ嬢、遠距離からの的確な攻撃、勲一等と言っても良いだろう」
「リオン殿、ミカ嬢の護衛をよくやってくれた」
「最後にマリア嬢、いや大使閣下。お主には大きな借りができてしまったな。この借りは必ず返すと約束しよう。次に会うときも敵ではなく味方であることを願うぞ」
やはりヨシテル将軍は人間ができてるな。将軍になら教えておいても構わないかな?
「ヨシテル将軍、こちらのミカ様なんですが、本名はミカ・ハウハ様です。この名前でお分かりになりますよね?」
ヨシテル将軍もシゲノリ中佐もギョッとした顔でまじまじとミカ様を見ている。どうやら分かったようだね。
「勲一等であると言うのであれば、何らかの配慮をお願い致します」
「うむ、分かった。立場上、吾輩から謝罪することはできぬが、このことは皇帝陛下にもお伝えしておこう」
「はい、それで結構です。よろしくお願い申し上げます」
よし、これでミカ様の件が帝国皇帝にも伝わることで、旧ファインラント王国の一件が良いほうに転がるかもしれない。ただし、暗殺者を送り込んできたりしたら容赦しないからね。