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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(3年目)
209/303

209 被害者のケア

 まずは保護した女性たちのケアだな。

 一人一人に毛布を渡しただけで全員を一つの部屋に収容しているそうなので、私とルーシーちゃんとブレンダの三人でその部屋に入った。

 部屋の中には48人の若い女性が毛布にくるまった状態で床に座り込んでいた。

 私たちを(おび)えた目で見ている者、(うつ)ろな目で何もない空間を見つめている者、敵意を持って(にら)みつけてくる者など様々だ。

 私はガルム語で話し始めた。

『皆さん、侵略者については帝国軍が駆逐しましたので安心してください。まずは順番にけがの治療を行いますので、私たち三人の前に並んでください。治療が終わった方は隣の部屋にお風呂と着替えを用意していますので移動してください』

 事前の準備として隣の部屋に帝国軍の工兵が急遽(きゅうきょ)製作した大きな浴槽を置いている。大量の水はウォーターボールで出して、そこにファイアボールを落として沸騰させ、さらにウォーターボールで適温にした。時間短縮だよ。

 あと、街中にあった服飾の店から下着や服をかき集めてきてもらった。

 隣の部屋の担当者はアザミさんだ。言葉の通じる女性が必要だから手伝ってもらったのだ。もちろん部屋の中に男の兵士は一人もいない。


 治癒の魔道具を発動する個所は顔と頭、それに下腹部だ。あとは申告された傷があればそこにも発動する。一人あたり1分程度で治療が終わるので、三人で分担すれば16分で完了する。

 精神(こころ)が壊れた人以外は治癒の魔道具の効果に驚いているね。列に並ぶこともできない人については、治療が終わった人が介助して私たちの前に連れてきてくれた。

 毎日数十人の相手をさせられたことで女性としての機能を壊されてしまい、絶望していた女性もすっかり治癒されたことに涙を流して喜んでいた。

 顔を殴られ過ぎて腫れあがってしまい、人相が変わってしまった女性もすっかり元通りのきれいな顔に戻った。

 ヒールの魔法と治癒の魔道具を開発して本当に良かったよ。


 20分程度で全員の治療を終えたので隣のお風呂の状況を見に行く。

 お湯が汚れているようなら替えてあげないとね。

 現在48人全員が浴槽内に入っているけど、かなり汚れているね。

『皆さん、すみませんが一度浴槽から出ていただけますか?お湯を新しいものに替えますので』

 全員が出たあと、お湯をアイテムボックスに収納した。一瞬でお湯が消えたことに全員(精神状態に問題がない人)が目を見張っている。

 あとはウォーターボール、ファイアボール、ウォーターボールのコンボで新しいお湯になったよ。一応、手を入れて温度を確認した私は全員に言った。

『お待たせしました。きれいなお湯になりましたので、あとはゆっくりお湯に()かって身体を休めてくださいね』

 お待たせとは言ってもそんなに待たせてないはずだ。なんだか全員、呆然と浴槽に張られたお湯を見ているけど、早く入らないと湯冷(ゆざ)めするよ。


 お風呂から上がって清潔な下着と服を着た女性たちを机と椅子のある会議室みたいな部屋に誘導し、着席してもらった。

 今後のことを説明するためだ。

 部屋の中には48人の女性以外には、ヨシテル将軍、シゲノリ中佐、私、ルーシーちゃん、ブレンダ、アザミさんだけが入っている。

 できるだけ男性がいないほうが良いという判断だ。

 ヨシテル将軍が話し始めた。

『ルクス公国の方々、吾輩はガルム帝国軍中将ヨシテルである。救援が遅くなったことを謝罪するとともに、帝国が君たちの今後の生活を保障することを約束する。詳細はこのシゲノリ中佐から聞いてくれたまえ』

 このあと、シゲノリ中佐が細かい事務連絡をして、女性たちからの質問にも対応していった。


 ある女性が私のほうを向いて質問した。

『そちらの方は軍医の方ですか?それとも魔導師の方ですか?私は奇跡を今日だけで何回も目撃したのですが』

 この質問にはヨシテル将軍が答えた。

『ああ、その女性はグレンテイン王国の特命全権大使であるマリア・フォン・シュトレーゼン男爵令嬢だ。この大使閣下には常識が通用しないと思ってくれ』

 おいおい、失礼な。そんなに非常識ではないはずだけどな。ルーシーちゃんとブレンダにガルム語が通じなくて良かったよ。

『大変失礼しました。そんな偉いお方とは知らず、無礼な態度をお許しください』

『いえいえ、全然大丈夫ですよ。それよりも侵略者の処遇ですが、全員漏れなく去勢しちゃいますので安心してください。捕虜になった者の中でどうしても死刑にしたいって者がいる場合は申し出てください。できるだけご希望に沿うようにしますので』

 被害者の心のケアが重要だからね。これで少しでも心が晴れれば幸いだよ。


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