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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(3年目)
207/303

207 砲撃

 徐々に空が白み始める時間帯になり、敵船の輪郭もくっきりとしてきた。完全に明るくなってしまうと敵船は速度を上げて遁走(とんそう)を図るだろう。

 ただ、この船を逃がしてしまうと、シンハ皇国にこちらの状況が伝わってしまう。

 そうなると半年後の増援部隊10隻がさらに増強されることになるのは火を見るより明らかだ。

 悩んでいる時間はあまり無い。

「アレン、ルーシーちゃん、ブレンダ。ストーンキャノンを使うよ。あの船を逃がすわけにはいかないからね」

「了解だ。簡易トーチカを使うんだね」

「ええ、そう言えばブレンダは初めて見るかもしれないね」

 私はアイテムボックスから簡易トーチカを出して埠頭(ふとう)に設置した。周りにいた兵士たちがギョッとして見ているけど、いちいち説明していられない。

 ブレンダも驚いて壁を叩いたりしている。なんだか楽しそうなんだけど、こういうのが好きなのかな?


 トーチカの中に入った私たち四人はすぐに戦略級魔法ストーンキャノンの発動準備に入った(手を繋いで輪になった)。

「マリアちゃん、四人だと硬度5になりますが、あの船の装甲を抜けるかしら?」

 ルーシーちゃんが疑問を(てい)した。うん、私もそれは心配だ。できれば硬度7か8で撃ちたいんだけど、人が全然足りない。

「側面は鉄でも甲板上は木製だと思うんだよね。うまく甲板に当てることができれば貫通して船の内部で爆発させることができると思うんだよ」

 そう、平射(へいしゃ)ではなく曲射(きょくしゃ)の放物線軌道で当てるしかない。めちゃくちゃ難しいな、これ。とりあえずやってみよう。

 まずは直接照準で狙ってみる(平射だね)。

 50メートルは至近距離だ。砲術家の夢、初弾命中を成し遂げたよ。しかし鉄製の外板に当たった砲弾は貫通することなく海の中に落ちて、そこで爆発した。

 魚雷が命中したときのように船の側面に水柱がそそり立ったけど、あまりダメージを与えたようには見えない。いわゆる至近弾だな。爆圧で多少は船体にダメージを与えられるだろうけど、決定打には欠ける。


 次は曲射弾道を試してみよう。大仰角(ぎょうかく)で頭上に撃ち出した弾丸は放物線軌道を描いて、数秒後に海に落下した。そこで爆発し、水柱を噴き上げたものの全く見当違いの場所だった。

 かなり遠方に落下したな。いわゆる遠弾(えんだん)だ。

 さらに仰角を上げてほとんど真上に撃ってみた。風で流されて港のほう(私たちの上)に落ちないか心配だ。今の風向きは海から陸の方向になっているからね。

 数秒後、目の前30メートルくらいの海の上に着弾したよ。(こえ)ぇー。

 ダメだ。難しすぎる。

 やはり平射で少しずつでもダメージを与えるしかないかな?


「マリア、私に撃たせてもらえないかな?」

 ブレンダが撃ちたいと言ってきたので、交代する。

「こちら側に落とさないでね」

 念のため、釘を刺しておこう。このトーチカの天井を硬度5の砲弾が抜くことはないだろうけど、味方の兵士たちの上に落ちたら大惨事だからね。

 ブレンダは最初から曲射弾道での砲撃を試すようだ。

 撃ち出された砲弾は数秒後、船に吸い込まれたように見えた。一瞬の後、水柱ではなく火柱が噴き上がった。え、まじ?

 曲射で初弾命中?信じられない。普通何十回と撃ってようやく命中するものだよ。

「マリアの撃ち出すのを見ていたからね。だいたいこんな感じかなって思ったら当たっちゃったよ」

 嬉しそうに言うブレンダに天才砲術家の片鱗へんりんを見たよ。


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