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転生した女性SEの異世界魔法ライフ  作者: 双月 仁介
社会人編(3年目)
206/303

206 攻勢開始

 深夜0時、攻勢開始だ。

 まずは川の向こう岸にいる橋のたもとの見張りを制圧するために1個中隊が展開され、攻撃を開始した。

 防御結界装置を四重展開し、剣を振りかざした兵士が橋を渡って突撃する。

 敵がファイアボールを撃ってきたけど、なんとか耐えしのいだようだ。向こう岸に到達した兵士は剣で敵を斬りまくっている。

 見張りの部隊は本来ならもっと大人数だと思うんだけど、深夜ということもあり立ち向かってきたのは10人足らずだった。

 全員を斬り伏せたけど殺しはしない。情報を吐かせないとね。ただし、尋問できるのは私だけなので魔導書を取り上げた上で捕縛しておいてもらう。


 続いて残りの4個中隊と大隊本部が橋を渡り、あらかじめ定められた方角へ展開していく。

 建物を一つ一つクリアしていくのは骨が折れる作業だけど、地道に進軍していくしかない。使用中の建物については、おおよそのところを捕虜のチュール少尉から聞いている。でもあまり信用できないのと、チュール少尉自身が全て詳細に把握しているとは思えないからね。

 私が川のこちら側から見えていたのはここまでで、あとは王国軍のヒューラー小隊長やヨシテル将軍、シゲノリ中佐からの報告を待つしかない。


 2時間が経過し、大隊本部からの定期連絡が通信魔道具で入ってきたけど、各中隊は順調に進軍中らしい。港の5階建ての建物が見える位置まで来たらいったん小休止し、そのあと全軍で包囲し突入するとのこと。突入予定時刻は0300(まるさんまるまる)らしい。

 現時点で保護した民間人は20人以上になるという連絡が入ったけど、その詳細な状況については何も言ってこなかった。ひどい目にあっていたのは間違いない。痛ましいことだ。

 なお、制圧した拠点の確保、死体掃除、捕虜の収容、民間人の保護などを行うため、待機中の師団から大隊単位で随時橋を越えて進軍するようにヨシテル将軍から命令が入った。

 待機部隊が動き出したため(あわただ)しくなってきたけど、私たちは監視拠点で警戒任務を続けるだけだ。


 確保した橋の上は明々(あかあか)と光の魔道具で照らされているので、私たちのいる拠点から望遠鏡で監視することについては全く問題無い。ミカ様だけは望遠鏡ではなく精密射撃装置(ライフル)のスコープを(のぞ)いているけどね。

 現在橋の上はこちら側から対岸への人の流れしかないはずだけど、一人怪しげな動きをしている者がいる。剣を持たず左手に本らしき物体を持っている時点で怪しさ満点だ。

 何食わぬ顔で橋の上をこちら側へ歩いてくるけど、あまりにも堂々としているせいか(まわ)りの兵士は全く怪しんでいない。

 たださすがに気付いた兵士がいたようで誰何(すいか)の声をかけたようだ(さすがに声は聞こえないけど)。その男は左手の本を開いて右手を掲げた。

「ミカ様、お願い!」

 私のその声に即座に反応したミカ様が精密射撃装置(ライフル)の引き(がね)を引き絞った。すでに照準をつけていたようだ。さすがだね。

 男の太腿(ふともも)を弾丸が貫通し、そのまま倒れ込んだ。そこにいた兵士たちによって捕縛された男は何かを(わめ)いているようだけど遠くて声は聞こえない。でも兵士たちの反応を見ると敵で間違いないようだ。一人も逃がさないよ。


 3時になった。予定通りならば最後の大攻勢が始まった頃合いだ。

 あれからこちら側へ脱出を図る敵はいなかったけど、まだ安心はできないね。

 さらに1時間が経過し、攻撃の成否を心配していた私たちだったんだけど、ヨシテル将軍から通信連絡が入った。

 制圧完了の連絡かと思いきや、緊急事態の発生を告げるものだった。なんと船が一隻だけ動き出して港から外洋へ出ようとしているらしい。

 やばいな。海の上に出られると、こちらからの攻撃手段はミカ様の精密射撃装置(ライフル)だけになる。

 5階建ての建物は制圧できたらしいんだけど、もともと船で待機していた人間がいたらしい。くそっ、チュールの野郎。隠していたのか忘れていたのか分からないけど、あとでお仕置きだな。


「全員傾注。ミカ様はここで監視任務を続行。リオン君とロザリーちゃんはミカ様の護衛。その他は私とともに自動車で港へ向かいます」

 私とアレン、ルーシーちゃん、ブレンダの四人は自動車に乗り込み、橋を渡って、一路港方面へ爆走した。私が運転しようとしたら強引にアレンが横取りして、さらにそれを見たルーシーちゃんとブレンダがあからさまにほっとした表情になったのは納得いかないけどね。

 10分後には港に到着し、動き出した船が桟橋から50メートルほど離れた位置にあるのが暗闇の中、うっすらとシルエットだけで分かる。敵にしても暗いため、狭い港の中ではスピードを出せないようだ。動き出しが遅かったのはボイラーの火を落としていたためだろう(燃料がもったいないからね)。

 帝国軍が投光器(光の魔道具によるサーチライトだね)を運んできて船を照らした。これにより敵船の状態が分かったんだけど、かなり大きいな。全長は100メートルくらいありそうだ。排水量は3000トンくらいだろうか。中央より少し前寄りに船橋ブリッジのようなものがあり、中央に煙突のようなものがうっすらと見える(投光器の光量が弱くてよく見えないけど)。

 王国軍『自動車化魔道小隊』の兵士が自動射撃装置(サブマシンガン)を撃ち込んでいるけど船体に跳ね返されている。え?鉄製なの?

 あれを沈めるには大砲による砲撃しかないみたい。もちろん大砲なんて存在しないけど。

 船からは長射程のストーンライフルらしき魔法を撃っているみたいだけど、こちらの防御結界を抜けないのだけは朗報だな。まぁお互いに決定打となる攻撃手段がないという状況だ。


 さてどうしよう?このままでは逃げられてしまう…。


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