203 国王陛下への通信連絡
私は通信魔道具に陛下直通のID番号『2102000001』をセットして接続ボタンを押した。なお、この番号を知っている人間はとても少ない。
呼び出し音のあとに陛下自らが出たみたいで、通信魔道具を通して陛下の声が聞こえた。。
「マリア嬢か?連絡を待っておったぞ」
「陛下、マリアでございます。現在ルクス公国にて調査任務に従事しておりますが、これまでに判明したことをご報告申し上げます」
シンハ皇国や侵略者の現兵力(兵数、能力など)に関する情報に加え、増援部隊の来襲など分かっていることを全て伝えたよ。
これでもしも私たちが王国に帰還できなくても、そのときはお兄様がなんとかしてくれるだろう。
通信を終えた私に恐る恐るといった風情でシゲノリ中佐が聞いてきた。
「大使閣下、今のはグレンテイン国王陛下ですか?」
「はい、そうですよ」
シゲノリ中佐が絶句してるよ。別に直接報告するくらい大したことじゃないよね?
帝国軍の1個師団が到着するのはいつ頃になるだろう?
できれば連携して侵略者の拠点を攻めたいところだ。私たち単独で対処できなくもないけど、1個小隊50人で2000人規模の部隊(しかも全員が魔法陣で魔法発動可)を相手取るのは少々厳しい。
戦略級魔法は見せられないしね。
「シゲノリ中佐、一つお聞きしても良いでしょうか?」
「はい、何でしょう」
「帝国軍がこちらに向かって進軍中なのですよね?到着日時は分かりますか?」
「それを聞いてどうするおつもりですか?」
「敵戦力の情報をお伝えするだけです。おそらく帝国製の携帯型防御結界装置は役に立たないので、その情報は最優先で伝えなければなりません。あと、もしも許可していただけるのでしたら、私たちの部隊も参戦したいと思っております」
「閣下の部隊はたったの1個小隊でしょう?焼け石に水ですよ」
「うちの小隊は特殊部隊ですよ。だいたい1個大隊ほどの実力と思っていただければよろしいかと」
シゲノリ中佐が疑いの目を向けてくるけど、そのくらいの実力は十分にあるよ。
「遠話の魔道具によれば、三日後に到着するとのことです。ただし1個師団とは言いましても魔導師の数は千人ほどですね」
遠話?ああ、通信魔道具の帝国風の呼び方ね。魔導師も帝国での呼び方で、魔法使いのことだね。
しかし千人かぁ。魔法戦においてはランチェスターの第二法則が適用され、以下のような結果になることが予想される。
敵戦力(兵数2千×魔法性能10)と帝国魔導師(兵数1千×魔法性能3)がぶつかると、戦力的には20000対3000になる。
2万の2乗から3千の2乗を引いて平方根をとると19800、つまり帝国魔導師1000人が全滅したときの敵の兵数は1980人くらい(20人減る)になるね。
シゲノリ中佐にこの計算結果を突き付けると顔が引きつっていたよ。
むー、困ったな。帝国軍があてにならないとは思ってもみなかったよ。
どうする?どうすれば良い?